5億600万年前の3つ目の古生物の化石を発見、怪獣「モスラ」にちなんだ名がつけられる

2025年5月16日(金)8時0分 カラパイア


Photo by Jean-Bernard Caron © ROM


 カナダ西部、ブリティッシュコロンビア州のロッキー山脈地帯に広がるバージェス頁から、極めて特異な形状をしたカンブリア紀の古代生物の新種が発見された。


 三つの目を持ち、体の両側に広がるヒレなど、まるでSF映画のクリーチャーのような姿をしており、ラディオドンタ類という、アノマロカリスで知られるグループに属している。


 この新種には、その奇抜な姿と泳ぎ方から「海の蛾(シーモス)」の愛称で呼ばれていたが、最終的に歯、日本の怪獣映画に登場する「モスラ」にちなんで「モスラ・フェントニ(Mosura fentoni)」と命名された。


 この研究は『Royal Society Open Science[https://doi.org/10.1098/rsos.242122]』誌(2025年5月14日付)に掲載された。


カンブリア紀の海に生息した三つ目の捕食者


 今回発見されたモスラ・フェントニ(Mosura fentoni)の化石は、ヨーホー国立公園内にあるバージェス頁岩のレイモンド採石場から発掘されたものだ。


 約5億600万年前のカンブリア紀中期に、現在のカナダ・ブリティッシュコロンビア州にあたる海域で生息していたと考えられている


 全長は約15〜61mmほどで、人差し指ほどの小さなサイズだったが、三つの目、トゲのある前脚、歯を持つ円形の口、体の側面に並ぶ泳ぐためのヒレ、最大で26の体節を持ち、体の後方に呼吸器官(エラ)を備えている。


 この生物はラディオドンタ類[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%AA%E3%83%89%E3%83%B3%E3%82%BF%E9%A1%9E]に分類され、節足動物の進化の初期段階に属するグループである。


 ラディオドンタ類の中では、特にアノマロカリス[https://karapaia.com/archives/52323924.html]が日本でもよく知られており、モスラ・フェントニはその仲間にあたる。



モスラ・フェントニの復元予想図 image credit:Art by Danielle Dufault, © ROM


3つの目に独特の構造、収斂進化の一例


 この研究は、マニトバ博物館とロイヤル・オンタリオ博物館の共同研究チームによって行われた。


 チームを率いたマニトバ博物館のジョー・モイシュク氏によると、モスラ・フェントニには、他のラディオドンタ類には見られない特徴があるという。


 体の後部には、最大で26の体節が連なっており、そのうち少なくとも16の体節にはエラのような呼吸器官が備わっているのだ。


 この構造は、現生のカブトガニ、ワラジムシ、昆虫などの腹部と似たものであり、収斂進化の一例[https://karapaia.com/archives/52313447.html]とされている。


 このような構造が進化した背景には、当時の生息環境における呼吸効率の向上といった適応の必要性があったのではないかと、研究チームは推測している。



モスラ・フェントニの解剖図。紫は保存された神経系、緑は消化器系、オレンジは循環器系を示している image credit:Danielle Dufault © ROM


 レイモンド採石場では、1975年から2022年の間に合計61点が収集されているが、今回注目されるているのは、モスラ・フェントニの化石が神経系・消化器系・循環器系といった軟組織まで保存されていた点にある。


 とくに、眼の内部には視覚情報処理に関わる神経束の痕跡が見られ、現生の節足動物と共通する構造が確認された。


 また、血管系についても注目すべき所見があった。


 本種は動脈や静脈を持たず、代わりにラキュナ(lacunae)と呼ばれる体内の空洞を介して血液を循環させる開放循環系を備えていた。


 この循環器官の痕跡は、化石の中で光沢のある模様として確認されており、体内からヒレの先端にまで広がっていたという。


これは節足動物の循環器系の起源を考える上で重要な発見である。



レイモンド採石場で発見されたモスラ・フェントニの化石標本(ROMIP 66108)。異なる照明条件下で撮影されており、左の画像では体全体の形状が最もよくわかり、右の画像では消化器系、循環器系、眼、神経系の反射性の痕跡が確認できる。Photos by Jean-Bernard Caron © ROM


名前の由来は日本の怪獣「モスラ」


 研究チームは、この生物の姿が蛾のように見えたことから、「シーモス(海の蛾)」の愛称で呼んでいた。


 そして正式に名前を付ける段階となり、その姿が、日本の怪獣映画『ゴジラ』シリーズに登場する「モスラ」を連想させたため、学名に日本語発音をそのまま用いた「Mosura」が採用された。


 モスラはご存じの通り、東宝の特撮映画に登場する架空の怪獣だ。巨大な蛾の姿をしており、ゴジラとはしばしば敵対関係にあるが、時に共闘する場面もある。海外でも高い人気を誇る、日本独自の怪獣キャラクターである。


 学名の後半「fentoni」は、カナダの古生物学者マーク・フェントン(Mark Fenton)氏への献名である。


 研究の共著者でロイヤル・オンタリオ博物館の古生物学キュレーターであるジャン=ベルナール・カロン氏はこう述べる。


ラディオドンタ類は、節足動物の中で最初に進化系統樹の枝として分かれたグループです。そのため、節足動物全体の祖先的な特徴を知るための重要な手がかりになります


今回の新種は、これら初期の節足動物がすでに驚くほど多様で、現生の遠い親戚たちと似たような進化的適応をしていたことを示しています


References: Manitoba Museum and ROM palaeontologists discover 506-million-year-old predator[https://www.eurekalert.org/news-releases/1083161]

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