【追悼】“世界で一番貧しい大統領”ホセ・ムヒカ氏が日本人に残したメッセージとは?「富に執着して絶望に駆られるような生き方は…」

2025年5月17日(土)19時20分 文春オンライン


ウルグアイ元大統領のホセ・ムヒカ氏が、5月13日に89歳で死去した。在職時代のムヒカ氏は給与の大半を寄付しており、月1000ドルで暮らすなどの質素な暮らしぶりから「 世界で一番貧しい大統領 」と呼ばれた。2016年4月に初来日した際、ムヒカ氏は「文藝春秋」の独占取材で真意を語っている。(取材・構成・中村竜太郎)



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日本から学ぶべきことは多い


ムヒカ 私は日本の人にしてみたい質問がたくさんある。人類はどこへ向かおうとしているのか、世界の将来はどこへ向かっていくのか。日本で起こることは、その後、かならず世界で起こる。だからこそ、日本に問いたい。いま、どのような夢を見たいかを考えなければ、将来、私たち人類に明るい未来はやって来ないのではないかと。



ホセ・ムヒカ氏の個人資産は、1987製のワーゲン、古びた平屋、そしてトラクターだけだった ©文藝春秋


 私たちは非常に多くの矛盾をはらんだ時代に生きている。こういう時代にあって、自らに問わねばならないのは、「私たちは幸せに生きているのか」ということだ。経済の進歩は、一面では非常にすばらしい効果をもたらした。150年前に比べれば、寿命は40年延びた。その一方で、私たちは軍事費に毎分200万ドルを使っている。また、人類の富の半分を100人ほどの富裕層が持っている。私たちはこうした富の不均衡を生み出す社会をつくってしまった。


 私は日本の皆さんにいいたい。次の世代を担う若い人たちには、このような愚かな過ちを繰り返さないで欲しいと。人生にとって、命ほど大切なものはない。この星に生まれたすべての人の人生が大切なのだ。世界について考える時も、人生についても、仕事について考える時も、どうすれば幸せになるかから考えなくてはいけない。例えば、鳥の世界を考えてみて欲しい。鳥は、毎朝起きるたびにさえずっている。目が覚めたときに、喜びでさえずりだすような世界、喜びが湧きあがるような世界を若い人たちには目指して欲しい。


 誤解しないで欲しいのは、貧しく生きるべきだとか、修道士のような厳格な生活をしろと言っているわけではないということだ。私が言いたいのは、富に執着するあまりに絶望に駆られてしまうような生き方をして欲しくないということ。人生とは、些細なことでもそれが大切な意味をもつことがある。例えば、愛情を育むこと、子供を育てること、友人をもつこと。そういう本当に大切なことに、人生という限られた時間を使って欲しいと思う。生きていること自体が、奇蹟なのだ。この世界が天国になるのも地獄になるのも、私たち次第なのだ。



※本記事の全文(約9000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(ホセ・ムヒカ「 日本人への警告 世界一貧しい大統領 」)。全文では下記の内容をお読みいただけます。
・子供時代に出会った日本人の思い出
・日本から学ぶべきことは多い
・ノーネクタイに込められた信念
・「パナマ文書」とは真逆な人物
・ゲバラ、オバマと会った印象
・老人の孤独死は国家が解決すべきだ



(ホセ・ムヒカ/文藝春秋 2016年06月号)

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