関東インカレの男子ハーフ、2部は駒大の副将が制し創価大が2位3位、1部は大会記録保持者に「山の名探偵」が挑戦
2025年5月17日(土)6時0分 JBpress
(スポーツライター:酒井 政人)
2部ハーフは駅伝強豪校が大激戦を展開
関東インカレの最終日は朝に男子のハーフマラソンが1周1.58kmの周回コース(12周)で行われた。8時にスタートした2部は1部の倍以上となる62名が出場。山川拓馬(駒大4)が引っ張るかたちになり、徐々に集団が削られていく。15km付近での先頭集団は7人。残り1周で前回3位の高山豪起(國學院大4)がペースアップすると、帰山侑大(駒大4)と抜け出すかたちになった。
学生駅伝で優勝を争う2校のマッチアップ。勝ったのは駒大の副将だった。
「山川が引っ張る展開で何度かきつい場面があったんですけど、終盤まで耐えて、『最後に出よう』と考えていました。高山君とふたりになったときは余裕があったんです。相手がきつそうだと思ったので、予定より少し早めに仕掛けました」
帰山は高山を突き放すと、後続を30mほど引き離してゴールに飛び込んだ。優勝タイムは1時間01分43秒だが、トラックを約4周するところを約3周で周回コースに出てしまったために参考記録となった(※トラック約1周分を加えると1時間03分00秒ほどのタイムになる)。
「なんか短いなと思ったんですけど、(トラック1周少なかったのは)知らなかったです。でも優勝は本当にうれしいです。僕は山川みたいにポテンシャルがあるわけじゃないので、頭を使って作戦を立てました。これまでタイトルを獲得したことがなかったので、最初で最後の関東インカレで勝てたのは良い思い出になりますね。両親が応援に来てくれて、その声援が支えになりました」
帰山は今年の箱根駅伝1区を区間2位と好走した選手。2月の日本学生ハーフマラソン(4位)は2秒差でワールドユニバーシティゲームズの日本代表を逃したが、今季は副将として、主将の山川とともにチームを引っ張っている。
「今季は最終学年ですし、副将という立場なので責任感もあります。故障者が多くてチームはまとまっていない感じがあるので、僕ら4年生が頑張る姿を見せて、後輩たちに少しでも刺激を与えたいと思っていました。個人だけでなく、チームも強くしていき、駅伝で勝負していきたいです」
創価大勢が2位と3位に入る
帰山に引き離された高山は転落。2位(1時間01分49秒)は野沢悠真(4年)、3位(1時間01分51秒)は山口翔輝(2年)が入り、創価大コンビが表彰台にのぼった。
創価大は昨季の学生駅伝で出雲と全日本で過去最高の4位に躍進して、箱根(7位)は6年連続のシード権を獲得した。野沢は全日本8区を区間2位、箱根4区を区間6位と好走。山口は1年生ながら三大駅伝すべてに出場して、箱根は5区(10位)を担っている。
2位に食い込んだ野沢は、「前半は力をためて、15km以降の勝負所を見極めて走りました。ラスト1周で高山と帰山が一気に上げたときは、スピードがないので対応できませんでしたが、焦らずに1人ずつ拾っていこう、と冷静に切り替えました。2位まで上がったんですけど、優勝を狙っていたので、悔しい気持ちの方が強いです」とレースを振り返った。
一方、先輩に続いた山口は、「スピード面で課題はあるんですけど、あきらめずに粘りきれた。入賞(8位以内)を目標にしていので3位は期待以上の結果です」と自身の走りを評価した。
創価大は箱根駅伝2区で日本人最高記録を叩き出した吉田響(現・サンベルクス)という大エースが卒業。戦力ダウンがささやかれていたが、野沢と山口が青学大、國學院大の選手を抑えたことで、今季も不気味な存在になりそうだ。
「大エースはいないんですけど、個々が底上げして、総合力で勝負していきたい。三大駅伝の『3位以内』を目指して、個人としては周りから『エース』と認められる存在になりたいと思っています」(野沢)
創価大勢の後は山川が4位(1時間01分56秒)、高山が5位(1時間01分57秒)、塩出翔太(青学大4)が6位(1時間02分05秒)。7位(1時間02分13秒)と8位(1時間02分46秒)は浅川侑大と谷口颯太で、帝京大の3年生コンビが“狭き門”となる入賞を勝ち取った。
1部はキピエゴに工藤が挑戦
男子1部ハーフマラソンは9時15分にスタート。大会記録(1時間01分38秒)を持つブライアン・キピエゴ(山梨学大3)がぶっ飛ばすと、箱根駅伝5区の活躍で「山の名探偵」と呼ばれた工藤慎作(早大3)が食らいついた。
キピエゴは5kmを14分27秒で通過して、少し離された工藤は14分34秒。後続の大集団は工藤と30秒ほどの差がついた。
強い日差しが降り注ぐなか、キピエゴが独走。自身が保持する大会記録を塗り替える1時間01分14秒で3連覇を達成した。
5km手前から単独走となった工藤は暑さに苦しみ、徐々にペースを落とした。それでも最後まで2位を死守して、1時間04分16秒でフィニッシュ。2月の日本学生ハーフマラソンを1時間00分06で優勝した工藤だが、今回は思いのほか“難問”だったようだ。
「キピエゴ選手とのマッチレース、タイマンを制したいと思っていたので、非常に悔しい結果になりました。前半少し離されても後半で巻き返せるかなと思ったんですけど、自分自身が動かずペースダウンしてしまいました。暑さに対応できなかった部分もあったので、ユニバではしっかり対策していきたいです」
7月下旬に開催されるワールドユニバーシティゲームズのハーフマラソン代表に選出されている工藤。ドイツ・ラインルールでは“金メダル”を目指していく。
3位は10kmを過ぎて森本喜道(順大4)と岩田真之(城西大4)を軸に争うかたちになったが、森本が転倒。しかし、「ここで離れたらズルズルと落ちてしまう。前に追いつこう」と底力を発揮する。森本が15km手前で単独3位を奪うと、そのまま逃げ切り、1時間04分47秒で銅メダルを獲得した。
古川達也(3年)が体調不良で欠場となり、「古川の分まで、最低でも5点を取ろう」と森本は後輩の山本悠(2年)と気合を入れて出場。「暑さのなかでコケるアクシデントもあったんですけど、集中力を切らさずに最後まで走りきれたことが3位という結果につながりました。山本も6位(1時間04分59秒)に入り、ふたりで9点を取れて、チームに勢いがつけられたかなと思います」と笑顔を見せた。
4位は終盤に順位を上げた久保田琉月(東洋大3)で 1時間04分53秒。5位は三宅駿(城西大2)で1時間04分55秒、岩田は終盤失速したが8位(1時間05分13秒)に踏みとどまり、城西大もダブル入賞を果たした。7位は永見進之介(日体大2)で1時間05分05秒だった。
筆者:酒井 政人