キラキラなスターオーラを封印した石原さとみの狂気の演技に脱帽!映画『ミッシング』はぜひ映画館で見てほしい

2024年5月17日(金)14時55分 Pouch[ポーチ]

【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、石原さとみさん主演作『ミッシング』(2024年5月17日公開)です。とても重いけど、行き場のない思いを抱えた人間が光を見出すまでを描いた作品で、行方不明になった幼い娘を探し続ける母親を石原さとみさんが大熱演!

では、物語からいってみましょう。

【物語】
娘の美羽(有田麗未さん)が行方不明になって3カ月。母親の沙織里(石原さとみさん)は、世間の興味が薄れていることに焦りを隠せません。沙織里は、取材を続けてくれる地元テレビ局の砂田(中村倫也さん)を頼り、情報提供を求め続けます。

しかし、美羽が失踪したときに沙織里が推しのアイドルグループのコンサートに行っていたことが世間に知れるや、SNSに彼女への誹謗中傷が多数書き込まれます。沙織里は傷つきながらも、美羽を見つけたい一心で、ますます過剰な行動に出てしまい……。

【行方不明の娘を探し続ける母の狂気】
本作を手がける𠮷田恵輔監督は、事故死した娘の死に関係していたスーパーの店主を執拗に追い続ける父親を描いた前作『空白』(2021年)の姉妹編として本作を制作したそうです。

『空白』では、娘を失った父親がスーパーの店主を責めながら、喪失感と向き合い、再生する姿を描いていました。しかし、本作の娘は行方不明のまま。「生きている」と信じて探し続ける家族ですが、見つからなければ永遠に探し続けることになるわけで、これもまた家族にとっては辛いことです。

沙織里は「美羽を見つける」ことに必死になるあまり、周りが見えなくなっています。行方不明になる直前まで一緒にいた弟(森優作さん)のことを疑い、常に冷静な夫に苛立ち、世間の興味が薄れていくことに焦り、テレビの前で悲劇の母を演じ続けます。

その必死さがどんどん加速していく様は、まさに狂気スレスレ。そんな沙織里を石原さとみさんが大熱演しています。

【役に没頭し、最後まで暴走した石原さとみ】
本作で驚いたのは、キラキラ輝く美しくて可愛い石原さとみさんのスターオーラがどこにもなかったこと。スクリーンでは沙織里として、なりふり構わず必死に生きていました。

「𠮷田監督の作品に出演したい!」と監督に直談判したほど求めていた役だけに、没頭ぶりは凄まじかったです! 芝居の緩急がなく、常に “急” という感じで、爆走していました。

後半、沙織里自身に少し変化が見られます。ゴールが見えない中、全力で走り続けていた沙織里でしたが、ある出来事がきっかけで少し歩を緩めるのです。娘のことで頭がいっぱいだった彼女が初めて他者に目を向け、助けようとするのです。

その思いが彼女の切羽詰まった気持ちを少しだけ楽にしているような……。出口のないトンネルの向こうから、ひとすじの光を見た気がしました。

【予定調和に終わらない𠮷田監督作】
美羽は事件に巻き込まれたのではないかと思わせるシーンなど、ミステリー要素もある本作ですが、『ミッシング』にはわかりやすい伏線回収などありません。この映画の芯は、娘を探し続ける沙織里と夫の豊がこれからどう生きていくのかということ。

またSNSでの誹謗中傷、美羽ちゃん失踪事件を取材するテレビ局の対応、沙織里とテレビ局上層部の板挟みにあう記者(中村倫也さんが素晴らしいです!)の葛藤など、ひとつの行方不明事件を通して見えてくる社会の歪みも見応えがあります。

ぜひ、映画館で観ていただきたい作品です!

※𠮷田恵輔監督の「𠮷」はが正式表記です。

執筆:斎藤 香(c)Pouch
Photo:©2024「missing」Film Partners

『ミッシング』
(2024年5月17日より、全国ロードショー)
監督・脚本:𠮷田恵輔
音楽:世武裕子
出演:石原さとみ
青木崇高 森優作 有田麗未
小野花梨 小松和重 細川岳 カトウシンスケ 山本直寛
柳憂怜 美保純 / 中村倫也

画像をもっと見る

Pouch[ポーチ]

「狂気」をもっと詳しく

タグ

「狂気」のニュース

「狂気」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ