[カタクチイワシ]スプーン使った簡単三枚おろしで「シコ刺し」、10回洗えば「タイの味」

2025年5月18日(日)14時59分 読売新聞

カタクチイワシは下あごが短く、目が大きい

[魚 食べてますか 旬の魚]

 今月、紹介する「旬の魚」は食卓でも身近な「カタクチイワシ」。簡単な処理法をマスターすれば、料理が楽しくなる。(加藤亮)

 カタクチイワシは日本各地で水揚げされる。初夏から秋頃までが旬だ。下あごが短く、上あごが覆いかぶさるようになっている見た目からその名前が付いた。魚体が小さく、寿命は2、3年という。当欄の講師を務める魚食研究家の西潟正人さんは、「海の様々な生きものに食べられ、数も多いことから『海の米』とも称されます」と話す。

 漁師町の魚屋さんではバケツ一つなどまとめて安価で売られ、1キロ・グラムでも数百円程度。日本人にとっては身近な魚で、幼魚は生のシラスのほか、ゆでれば釜揚げシラス、干せば、ちりめんじゃこ、タタミイワシとなる。大きくなったら、生干しは田作り、煮て干したら煮干しと何とも出番が多く、食卓には欠かせない。「田作りは昔、肥料にしていたことが名前の由来といわれる。その意味でも海の米かも」と西潟さん。

 地魚料理店を営んだ経験のある西潟さんがすすめる料理の1品目は刺し身の「シコ刺し」。居酒屋などでたまに目にするが、一つかみ分くらいで結構な値段がする。西潟さんは「安い魚は手間がかかる。でも、自分で作るシコ刺しは格別ですよ」と話す。ちなみに名前の由来は、肥料にした干鰯ほしかがなまって関東ではシコイワシと呼ばれ、シコ刺しになったとか。

 処理の仕方は頭を落として手開きかと思ったら、「それよりも簡単」と紹介するのが、スプーンを使って身をそぐ方法だ。エラの後ろあたりにスプーンの横を当てて尾に向かってあまり力を入れずに身をそぐ。ひっくり返して裏側もそげば三枚におろせる。

 じっと見ていたら、「手伝ってよ」と言われ、恐る恐る挑戦してみた。思ったより簡単で、スプーンに当たる背骨を頼りにそぐと上手に身が取れた。およそ2キロ・グラム分を2人で20分ほどでさばいた。

 さばいた身はざるに入れて水がきれいになるまで何度も洗う。「広島・尾道の魚屋さんのおばあさんは『とれたてを10回洗えばタイの味』と言っていた。ここが大事で、しっかり血や汚れを取り除くと本当においしくなる」。ピカピカに輝く身を盛り付けてショウガじょうゆで食べるとたまらない味わいで、ご飯のおかずにもぴったりだ。

 カタクチイワシは全国でとれるだけに郷土料理が多様だ。もう一品は、「そろばん玉」という富山の漁師が好む料理に。身を洗い、頭と内臓をとって1センチほどのぶつ切りにするだけ。そのまま酢みそをかけて食べる。こちらは骨までかんで味わう豪快さがいい。

 山盛りのシコ刺しを前に「自分で作れば、手間はかかるが、おなかいっぱい食べられますよ」と西潟さん。ぜひ、挑戦してみてほしい。

23年の漁獲11万トン

 農林水産省の海面漁業生産統計調査でイワシに分類されるのはカタクチイワシ、マイワシ、ウルメイワシの3種。マイワシが多く、2023年の漁獲量は69万トン。

 カタクチイワシは、1950〜60年代に30万〜40万トンで推移したが、79年には13万トンに減少した。その後、回復し、2003年に53万トンに。価格の低迷などもあって再び減少に転じ、23年は11万トンだ。

 カタクチイワシの郷土料理として、神奈川の三浦半島や長崎では1匹丸ごと塩に漬ける塩辛がある。ゴマや赤唐辛子とともに酢などで漬けた千葉県九十九里町の「ごま漬け」も有名だ。

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