働きがいのある企業・ない企業の差って何?

2025年5月20日(火)11時4分 マイナビニュース


近年、従業員の"働きがい"が企業の成長や生産性に与える影響が注目されている。そもそも、働きがいのある企業とない企業の違いは、どこにあるのだろうか? 本稿では「働きがいのある企業ランキング」を作成しているオープンワークの担当者に話を聞いてきた。
■働きがいのある企業・ない企業は何が違う?
話を聞いたのは、オープンワーク 執行役員CSOの栗本廉氏。東京大学を卒業後、電通、ボストン コンサルティング グループなどを経て2023年9月にオープンワークに入社し、現在はデータを活用した企業分析・組織開発の最前線で活躍している。
オープンワークが発表している「働きがいのある企業ランキング(※)」は、社員クチコミサイト「OpenWork」に投稿された「社員・元社員による職場環境に関する評価点」を集計したもの。直近の1年間で高いスコアが出た企業を1位〜50位まで公表している。
※次の8つの評価項目点を元に算出した総合評価を集計してランキング化している。「待遇面の満足度」「社員の士気」「風通しの良さ」「社員の相互尊重」「20代成長環境」「人材の長期育成」「法令順守意識」「人事評価の適正感」
働きがいのある企業・ない企業の違いは、どんなところに出るのだろうか? そんな問いかけに栗本氏は、以下のワードクラウドをもとに説明する。
「これはランキングの上位50社の「組織体制・企業文化」の項目に投稿されたクチコミの中によく出てくる単語を集めたものです。風通し、フラット、自由、成長、社風といった単語が大きく表示されています」。
「これを分析してみると、自分のキャリアをどう成長させていくか、どんな働き方が実現できるか、に重点が置かれているのが分かります。主語が"自分"のものが多いです」と栗本氏。
では、ランキング下位の企業群のクチコミデータをもとにしたワードクラウドはどのようになっているのだろう?
トップダウン、昭和、体育会、一族、研修、残業、年功序列といった単語が並んだ。
「主語は"会社"で、企業が従業員をどう管理しているか、を表現するワードがたくさん出ています。トップダウン、年功序列、といった企業風土や仕組みが一概に悪いわけではありません。ただ下位企業群のクチコミでよく投稿されるということは、良い意味に捉えてもらえていない、という可能性があります」。
ちなみに「働きがいのある企業ランキング」下位群の企業には「会社に縛られている」と思いながら働いている人も少なくないという。そんな環境では、人材を集めるどころか、流出につながってしまうことも少なくないだろう。
■社員が"働き続けたい"と思う企業とは
では、どうしたら社員に「この会社で働き続けたい」と思ってもらえるのか? 特に未来の担い手である若手がそう思える会社とは? そこに働きがいはどう影響しているのだろう。
「これは逆説のようですが、若者を会社に縛り続けようとしない会社、というのがひとつのポイントになると思います。売り手市場で、転職が当たり前の時代になりました。昔は終身雇用だったので『40代まで勤め上げれば部長までいけるから下積みから頑張ろう』ということもあったと思います。でも現代の20代に『この仕事を定年まで続けるんだ』という気持ちがある人は少数派です。もっと良い成長環境があるなら、そちらの会社に移りたい、と常に思っているんです」。
「現代の若者は『ポータブルスキル』(職種や業界を問わず、どの会社に行っても活用できるビジネススキル)を身につけることができる会社に、結果的に長く居続ける、ということが言えそうです。そのため、雇う側には『よそでも役に立つ人材に育てますよ』と受け入れる懐の深さも必要になるでしょう。その会社でしか通用しないような特殊な仕事ばかり与えていると、働く側の『この仕事をやり続けることで自分のキャリアが狭まるのでは』という不安をあおる可能性があります」
栗本氏は、今の時代を生き抜く理想的な企業について「従業員のキャリアを一緒に考えながら伴走してくれる企業」と表現した。
■時代に追いつけない企業は選ばれない
ここで栗本氏は、働きがいを高めていく必要性についても言及。
「働きがいを高める一番の理由は、会社が選ばれるためです。人がいくらでも集まり、会社が選ぶ側の立場であれば、働きがいを高める必要はありません。しかし、少子化で人が減り、選ばれ続ける会社であるためには、働きがいと待遇面の満足度を上げていく必要があるのです」と解説。
「そもそも仕事の満足度は人それぞれです。報酬は高いか、人間関係は良いか、自身のスキルアップにつながるか、ワーク・ライフ・バランスは尊重してもらえるか、こだわるポイントは人によって違います」と前置きした上で「ただ、時代に追いつけていない企業は人気が出ません」と指摘する。
「相互選択型社会、なんてキーワードも言われています。会社が従業員を雇ってあげて、その代わり一生仕事に付き合わせる、一律に40年間のパスポートを渡していく、というような時代は終わりました。従業員が会社を選ぶ時代ですが、その切り替えができていない企業は人を集められません」。
では、働きがいのある企業になるにはどうすればいいのだろう。
■働きがいのある企業へと変わるには?
栗本氏は「組織改善がうまくいっている会社は、自分たちの組織を見つめ直す機会を持っています」と話す。
「例えば『企業の業績』の話になると、ライバル企業と比べて売り上げがどうなっているか、自社の強みはここです、と他社との比較で説明する人たちも、こと話が『組織改善』におよぶと、なぜか自社のことしか見えなくなります」と課題を指摘。
「人事部や組織改善をミッションとする部門や担当者は、社内のパルスサーベイを見て『自分たちの社員はこんなことを考えています』と分析する。でも、ここでも『他社の組織と比較したときの自分たちの組織』の把握が大事になります。他社のこともちゃんと見た上で、第3者の目線で『うちの組織はこんな状況なんだ。じゃあ、こう動こう』と決断できる会社は強いですね」。
組織を改善する過程においても、課題を多面的に捉えられているか、表面的な声を拾っていないか、という点に気をつけるべきだとアドバイスする。
「例えば退職者と面談したとき、そこで本音を言う人は少ないと思うんです。立つ鳥跡を濁さず、じゃないですけど辞める人って、いまさら恨みつらみを言う必要もなくて、シンプルに『次の環境に行きたいと思ったからです』なんて答えます。そこで人事部は『課題はなかったんだ』と安易に結論をださない方が良いですし、また従業員にヒアリングした数少ない情報を鵜呑(うの)みにして、組織をミスリードしないように気をつけたいです。できるだけ定量的な情報を複数のソースに取りにいく、ということは必要ですね」と語った。
近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら

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