《1回3万円~》現役医師がオススメできない〈アレルギー検査〉を徹底解説「学会も否定的。200種以上の反応を調べられるが…」

2025年5月21日(水)7時0分 文春オンライン


追加料金を支払い、自分の体をより詳しく知ることができる健康診断の「オプション検査」。その中には、医師の視点で見るとオススメできないものもあるという。総合診療医の 伊藤大介氏 が解説する。



◆◆◆


アレルギー検査と言っても、いろいろあるが……


 アレルギー検査と言っても、いろいろな種類がありますが、代表的なものとしては、血液検査で「特異的IgE抗体」を測るような保険診療でも認められた検査や、自費のみで行われる「遅発型食物アレルギー検査(IgG抗体検査)」などがあります。


 遅発型食物アレルギー検査とは、血液中の食物に対するIgG抗体量を調べ、さまざまな食品に対して免疫反応があるかどうかを調べるものです。120種類あるいは219種類の食物アレルギーを調べることができます。



総合診療医の伊藤大介氏。文藝春秋PLUSで「健康診断は宝の地図だ」を連載中 ©文藝春秋


 牛肉、白米、小麦、果物、野菜、魚などのメジャーな食べ物はもちろんのこと、シナモンやバジルなどのハーブ系、緑茶や製パン用の酵母であるイーストといったものに至るまで対象範囲も幅広い。


 例えば、みなさんの中で「ある食べ物を口にしたら気持ち悪くなったり、下痢をしたりする」「特定の食事をした時に口の中がピリピリしてかゆくなる」という経験をした方もいるでしょう。当院でもよく患者さんからこのようなアレルギーと思える症状を相談されます。


 さらに、それらの患者さんの多くが「他にどんな食事でアレルギー反応が出るのか知りたい」と言います。原因を特定したい気持ちもよく分かりますし、それにこたえる検査こそが「遅発型食物アレルギー検査」です。


多くのクリニックで3万円〜5万円もの料金が……


 しかし、驚かれるかもしれませんが、実は遅発型食物アレルギー検査は、臨床試験で有効性が証明されたものではないのです。


 IgG抗体とは、体内に入った異物に対して、体を守るための免疫として作られるタンパク質のこと。健康な人でも普通に体内で作られているものです。そのため、検査の結果、ある食品に対するIgG抗体が「陽性(免疫反応が出ること)」だったからといって、すぐさまその食品にアレルギーを持っていることを意味するわけではなく、その食品が体に悪い影響を及ぼすと決まったわけでもありません。


 むしろ陽性反応が出るということは、体内に存在するIgG抗体が正常に機能していることを示している場合が多い。体がその食品を「異物ではない」と認識し、受け入れ、過剰な免疫反応を起こさないよう調節している証拠だとも考えられるのです。


 そのため、陽性だからといって、すぐさま特別な対処や食事制限が必要になるわけではないのです。


 国際的なアレルギー学会も、以下のように診断におけるIgG抗体検査の有効性を否定しています。


ヨーロッパアレルギー臨床免疫学会(EAACI)
「食品特異的IgG4抗体の測定は食品アレルギーや不耐症を示すものではなく、生理的反応にすぎないため、診断ツールとして推奨されない」


カナダアレルギー臨床免疫学会(CSACI)
「正常な成人・小児でも食品特異的IgG抗体が陽性になることは珍しくなく、この検査を不適切に用いることで誤った診断が増え、不必要な食事制限や生活の質低下を招く」


「不必要な食事制限や生活の質低下を招く」と警告までしているのです。もちろん日本アレルギー学会や日本小児アレルギー学会でも否定的な声明を出しています。


 そうはいっても「ものは試しに受けてみよう」と思う方もいるかもしれません。しかし、多くのクリニックで3万円〜5万円もの料金がかかります。ものは試し……に受けられるような値段ではないのです。



※本記事の全文(約1万字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(伊藤大介「 むやみに受けても効果を得にくい…オススメできない『4つのオプション検査』 」)。



(伊藤 大介/文藝春秋 電子版オリジナル)

文春オンライン

「アレルギー」をもっと詳しく

「アレルギー」のニュース

「アレルギー」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ