「第12回 NTT GROUP サステナビリティカンファレンス表彰式」開催、MVPは誰の手に?
2025年5月23日(金)15時58分 マイナビニュース
NTTは5月21日、NTTグループ各社が取り組む持続可能な社会に貢献する施策を披露・共有する場として「第12回 NTT GROUP サステナビリティカンファレンス表彰式」を開催した。
本稿では、エントリー施策の中から厳正な審査を通過した5つの最優秀賞施策の担当者が集合し、施策のプレゼンテーションと表彰が行われた表彰式当日の様子を紹介する。
○5つの最優秀賞施策
同表彰式は2013年に始まったもので、「新たな価値創造とグローバルサステナブル社会を支えるNTTへ」の取り組みを推進するために実施されている。
12回目となる今回は、世界各国に広がるグループ各社より、18カ国・地域からの過去最多169施策のエントリーがあり、優良施策の共有、事例の水平展開を通じて、サステナビリティに対する意識、関心がますます高まりを見せた回となった。
今回、発表された最優秀賞施策は以下の5つ。
○施策1「森かち〜カーボンクレジットで森林の価値を創造 〜カーボンクレジットの認証・取引プラットフォーム〜」
「森かち〜カーボンクレジットで森林の価値を創造 〜カーボンクレジットの認証・取引プラットフォーム〜」で説明されたのは、森林由来のJ-クレジットの創出・審査・取引を包括的に支援するプラットフォーム「森かち」を住友林業と協業で開発した取り組みについて。
同施策は、NTT コミュニケーションズが、日本で初めて森林クレジット(単位はトンCO2)の創出者・審査機関・購入者それぞれに対してGIS(地理情報システム)機能を提供することで、発行プロセスの効率化とクレジットの信頼性向上を実現したもの。
森林クレジットの創出・流通活性化により、森林の適切な保護と、それに関わる人の環境意識醸成、企業と地域の交流を促し、サステナブルな社会の実現と、地域創生を目指しているという。
○施策2「水生生物モニタリングにおけるAI搭載のコンピュータービジョン 〜AIを活用したダム内魚道の環境調査精度の改善〜」
「水生生物モニタリングにおけるAI搭載のコンピュータービジョン 〜AIを活用したダム内魚道の環境調査精度の改善〜」は、水力発電事業者が義務付けられているダム建設後の生態系影響を測るため、ダムの魚道を利用する魚の種類・個体数を、AI技術を用いて測定するNTT DATA Portgal(ポルトガル)の取り組み。
同システムを活用することで、濁った水中でも9種類の魚類とゴミを検出・分類することが可能。
映像のうち40%は魚が映っていないのに対して、同システムの活用によって95%以上の精度で魚を検出。これまで人力でおこなわれてきたモニタリングの労力が自動化・大幅に削減され、ダムで働くメンバーが本来業務である生態系保全活動に注力することが可能となった。
さらに79%以上の精度で正確な種を特定することにも成功しているという。
○施策3「エネルギーの地産地消による循環型社会の形成 〜バイオマス発電の排熱を活用した特産品開発〜」
「エネルギーの地産地消による循環型社会の形成 〜バイオマス発電の排熱を活用した特産品開発〜」でNTT東日本が発表したのは、フォレストエナジーと共同で森の手入れにより発生する未利用材を木質チップにし、地域の廃校に木質バイオマス発電施設を設置する取り組み。
森林と熱エネルギーを食農分野に活用し、親和性が高い菌床きのこ栽培とドライフード製造を展開し6次産業化によるフードロス対策にも寄与している。
地域の未利用資源を活用し、エネルギーの地産地消による循環型社会の形成に取り組んでおり、今後は山形県(渋川市の20倍程度の規模)への水平展開も予定しているという。
○施策4「MeetZero ウォーター・クレジット 〜スペインにおける水クレジットの認証・発行プラットフォーム〜」
「MeetZero ウォーター・クレジット 〜スペインにおける水クレジットの認証・発行プラットフォーム〜」は、NTT DATA EUROPE & LATAM(スペイン)が、ブロックチェーン技術を活用し、水管理サービスにおける世界的リーダーであるヴェオリア社と共同で実証したもの。
同取り組みでは、水資源の保全活動に金銭的な定量価値をもたらす「ウォータークレジット」市場において、水クレジットの認証・発行・モニタリングの取引プラットフォームの「MeetZero」を開発・提供している。
水資源の改善活動に基づいて発行されるクレジットを、水のオフセットを希望する企業などに販売するもので、実際に取引されたクレジットは3種類あり、水資源に課題を抱えるスペインにおいて、アンダルシア地方の湿地復元など、ヴェオリア社のプロジェクトに参画し、削減量合計13,065,000㎥に相当する13,065のCAPs(1Capsあたり100ユーロで取引)を創出しているという。
○施策5「バッテリートレーサビリティ基盤の実現 〜電気自動車のバッテリーリサイクル情報を可視化〜」
「バッテリートレーサビリティ基盤の実現 〜電気自動車のバッテリーリサイクル情報を可視化〜」で発表されたのは、経済産業省が提唱する「ウラノス・エコシステム」の最初のユースケースとして「バッテリートレーサビリティプラットフォーム」の商用サービスプラットフォームを開始し、製造・利用・廃棄まで、サプライチェーン横断での見える化を実現したもの。
同取り組みは、NTTデータグループが取り組むもので、電気自動車向けのカーボンフットプリント情報集計やリサイクル・リユース情報などを可視化し、自動車業界のビジネス革新を支援している。
ウラノス・エコシステムとは、Society5.0「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(物理空間)を高度に融合することで経済発展と社会的課題の解決と産業発展を両立する人間中心の社会」の実現というビジョンに共感した人々とともに、取り組みを通じて、その実現を目指す、一連のイニシアティブのこと。
さまざまな社会課題に対し企業や業界、国境をまたぐ横断的なデータ共有やシステム連携を実現させる社会づくりを目指すイニシアティブとなることを目指していきたい構えだという。
○3社がMVPを獲得
表彰式の最後にはMVPが発表された。
MVPには、NTTデータの「バッテリートレーサビリティ基盤の実現 〜電気自動車のバッテリーリサイクル情報を可視化〜」、NTT DATA EUROPE & LATAM(スペイン)の「MeetZero ウォーター・クレジット 〜スペインにおける水クレジットの認証・発行プラットフォーム〜」、NTT東日本の「エネルギーの地産地消による循環型社会の形成 〜バイオマス発電の排熱を活用した特産品開発〜」の3社が選ばれた。
閉会挨拶に登壇した代表取締役社長 社長執行役員の島田明氏は、5社のプレゼンについて、クライメイトチェンジ(気候変動)とネイチャーポジティブ(自然再興)への取り組み、AI活用、パートナー企業との協業などを高く評価し、来年の開催への期待の言葉で締めくくった。