女性入学者増えた海上保安大学校、寮やトイレなど生活環境に配慮中…校歌の「ますらを」も変更

2025年5月29日(木)16時0分 読売新聞

入学式で校歌を元気よく歌う永井さん(前列右端)ら新入生(呉市で)

 幹部海上保安官を養成する全国唯一の教育機関「海上保安大学校」(広島県呉市)で大学卒業者らを対象とした2021年創設の「初任科」に今春、過去最多となる10人の女性が入学した。危険を伴う公安職で、長い船艇での勤務もあるが、女性に配慮した生活環境や職場作りが評価され、希望者が増えているという。(清水裕)

2〜3割が女性

 高校卒業者らに受験資格がある「本科」が4年間の学生生活を送るのに対し、初任科は2年間で卒業する。少子化が進む中、高卒者を対象とした採用のみでは、優秀な幹部を確保できないという判断で新設された。

 今年は初任科に女性10人を含む31人が入学。本科でも入学者60人のうち14人が女性で、二つの科を合わせると、およそ4人に1人が女性だった。

 大学校は1951年の設置以来、約2900人が卒業した。初めて女性が入学したのが80年。学校側は女子学生の暮らしやすさを考慮し、トイレの増設や改修、寮の新設などに取り組んでおり、最近は入学者の2〜3割程度を女性が占める。

 筒井直樹校長は「男女分け隔てなく、女性にも入学してもらいやすい環境を目指した成果と考えている」と強調する。

入学式で宣誓

 入学試験での成績優秀者も多い。今年4月に行われた入学式では、本科の永井志乃さん(18)(滋賀県出身)が宣誓を任され、「勉学に励み、心身を鍛え、かつ人格の陶冶とうやに努め、立派な海上保安官となることを固く誓います」と力強く述べた。

 高校時代から海上保安官に憧れていたという秋元美知瑠さん(24)(千葉県出身)は、他の仕事を経て、初任科に合格した。「面接を通じて女性の意見もしっかりと吸い上げてくれる組織だとわかり、安心につながった。入学後も男女の差別や区別を感じることはない」と笑顔を見せた。

意見を参考に

 海上保安庁全体でも女性職員は年々増えており、4月現在で全体の9・9%にあたる1467人が勤務する。妊婦が働きやすいようにと、2018年からは裾が膝まである上着「マタニティー服」を導入し、福岡海上保安部では書庫を女性職員の休憩室に改修した。新たに巡視船を建造する際には、女性職員の意見を参考にし、風呂や便所、洗濯室の家具、手すりなどを配置している。

「海の警察」担う海上保安庁

 海上保安庁は1948年、運輸省(現国土交通省)の外局として発足した。「海の警察」ともいわれ、海上や沿岸での犯罪の取り締まり、海難救助、環境保全、災害対応、海洋調査、船舶の航行安全などの役割を担う。

 管轄海域は領海と排他的経済水域を合わせた約447万平方キロ・メートルで、11管区に分割。広島市南区の第6管区海上保安本部は、瀬戸内海の大部分などを担う。

 幹部を養成する海保大のほか、京都府舞鶴市には一般の海上保安官を育成する海上保安学校がある。ともに入学金、授業料は不要で、国家公務員として給与が支給される。海上保安学校長には今春、松浦あずさ氏が女性として初めて着任した。

 2000年代には海上保安庁の仕事に注目が集まったことがある。海難救助にあたる海上保安官の活躍を取り上げた漫画「海猿」がテレビドラマや映画になった。厳しい訓練に励み、過酷な状況下で危険を顧みずに職務にあたるストーリーが人気を博した。

校歌の歌詞変更

 海上保安大学校の校歌は開校5周年を記念して1956年に作成されたが、時代の変化に合わせ、2024年に一部を変更した。

 「立派な男」「強く勇ましい男子」という意味で使われていた2番の「ますらを」は、多くの女性が在籍していることから「若人わこうど」に変えた。3番の「励む四年よとせに」も、初任科の教育期間が2年のため「励む月日つきひに」とした。

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