「駅のホームでただ一人、バッグを抱えて座る私。『母との約束』を守って、その場で待ちつづけようとして...」(長野県・30代女性)
2022年6月5日(日)8時0分 Jタウンネット
シリーズ読者投稿〜あの時、あなたに出会えなければ〜 投稿者:Sさん(長野県・30代女性)
駅のホームに一人、取り残されてしまった——Sさんから寄せられたのはそんな幼い日の思い出だ。
彼女は何が起きたのか分からず、ただぽつんとベンチに座っていたという。
そんな彼女に駅員が声をかけるも、Sさんは「母との約束」を理由に拒み続け......。

<Sさんの体験談>
私の実家は長野県で、最寄りの駅は木曽福島という1時間に1〜2本しか電車が来ない場所でした。
私が3歳くらいの頃。まだ保育園にも通っていないような幼かった日のことです。
母と一緒に、旅行へ行く祖母を最寄り駅のホームまで送って行きました。
ベルが鳴り、扉が閉まり、母は...
祖母は大丈夫と言っていたのですが、母は心配だったらしく、祖母の荷物を電車の中まで運んであげることに。
その間、私は母から言われた通りに、母のバッグを抱えて、ホームのベンチに座り、その様子を見ていました。
その時、ベルが鳴ったのです。電車の扉は締まり、祖母はもちろん、母まで乗せて発車してしまいました。
母は今でもこの時の私の顔が忘れられない、と言います。

きっと、母も相当慌てたことでしょう。当時はまだ携帯電話なんてない時代なのですぐに連絡をとることもできません。
しかも、次に止まる駅は隣町で、かなり離れた場所にある上、折返しの電車もしばらくなかったのです。
「ここで待ってて」と言われていたから...
隣の駅で降りた母は、何とか近くのお家で電話を借り、私が取り残された駅に連絡を取ったそうです。
その時私は特に泣くわけでもなく、何が起こったのかよく分からずに、ぽつんと、ホームのベンチに座りつづけていました。
そこに母から連絡を受けた駅員さんが話しかけてくれたのですが、私は母から「知らない人にはついて行ってはダメ」と言われていたからか、「ここで待ってて」と言われていたからか、ベンチから動かず駅員さんを拒み続けました。
しばらくすると、抱えられて駅員室に強制連行されることに。そのときは、「知らない人にどこかに連れて行かれる!」とすら思っていました。

駅員室に行ってからも駅員さんはずっと優しく声をかけてくださり、イチゴチョコのお菓子とバナナオレをいただきました。しかし、私はそれにも手をつけることはありませんでした。
たぶん、怪しい人としか思ってなかったのでどんなに話しかけられても、微妙な反応しか返せていなかったと思います。
顔は思い出せないけど...
そうこうするうちに母がタクシーで駅に戻ってきて、私たちは無事合流することができました。
あの時の駅員さん、とっても小さい頃の話でお顔は思い出すことができませんが、今まで何度も思い出してきたから何があったかは覚えています。
幼いながらも頑固な私の相手はきっと大変でしたよね。今はもう地元の町からは離れてしまったけれど......あのときは、優しく私に付き添っていただいて、ありがとうございました。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
名前も知らない、どこにいるかもわからない......。そんな、あの時自分を助けてくれた・親切にしてくれた人に伝えたい「ありがとう」を心の中に秘めている、という人もいるだろう。
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