数学教育のプロが教える「ジャングルジムで遊んだ子」の方が“有利なこと”とは?【言葉がけのコツ】

2021年6月10日(木)17時56分 マイナビ子育て

「数学の力」というと早くても小学生以降…というイメージかもしれません。しかし、もっと幼い2歳からの言葉のかけ方次第で子ども数学力は伸びるのです。書籍『子どもの「数学力」が自然に育つ2歳からの言葉がけ』(植野義明 著)より、幼児期の今しかできない、家庭での言葉がけのヒントをご紹介! 第四回は「ジャングルジム」です。

空間認知の感覚を養う|立体の中を動き回ろう

「どっちにいくとエレベーター?」

※写真はイメージです

子どもは、ウンテイやジャングルジムが大好きです。公園や幼稚園にあるこれらの遊具で遊びながら、運動能力を伸ばしていきます。このときに伸びる能力には、身体認識能力、空間認知能力、さらにバランス感覚も含まれます。「高いところから見ると、何が見える?」などの言葉がけをしてみてください。

とくに身体認識能力は、自分の身体の向きを自分で認識する能力で、正しい姿勢での生活、すべての運動とすべての空間認知の基礎になります。ジャングルジムという立体の中を、上下左右に動いたり、高いところからの景色を眺めたりすることで、遊びながら立体感覚、筋力、柔軟性が養われるのです。

市役所や歴史的な建物を訪れたり、客船に乗ったりするとき、玄関や乗船口にその建物や船全体のミニチュア模型が飾ってあることがありますね。そんなときは、ぜひ子どもといっしょに模型を見て、「ぼくたちが、いまいるところはここだね」とか、「これから行く展示室は、2階のここの角にあるね」などと、水平方向、垂直方向の両方を意識するような言葉がけをしてみてください。

ミニチュア模型を見ながら、その中にいる自分、その中を動いていく自分を想像することと、実際にその建物の中の廊下や階段を自分の足で移動する体験。この2つが脳の中でリンクするとき、立体感覚は大きく伸びます。

このような感覚が、論理や計算だけではなかなか把握できない立体の構造を理解する基礎となるのです。

イラスト:Mariko Minowa「子どもの「数学力」が自然に育つ2歳からの言葉がけ」より

ホテルなどに泊まったとき、建物全体のミニチュア模型が飾っていなくても、立体感覚や方向感覚を伸ばすような言葉がけはできます。エレベーターを降りてはじめて部屋に入ったときには、「部屋を出たら、どっちに行くとエレベーターに行けるんだっけ?」と聞いてみましょう。

部屋の壁には、避難経路の案内図が必ず貼ってあります。案内図にあるのはそのフロアーの平面図ですが、「あの窓があるのは、この案内図ではどこのカベかな?」などの言葉がけで、立体構造を意識させることができます。

このような経験は、数学で必要な発想力の基礎としても大切です。

A地点からB地点へ移動するという課題があるとき、例えば、ジャングルジムに登るという体験がある子のほうが、上空を移動して目的地に着くような発想をしやすくなります。それだけではなく、運動や移動の経験は、図形の問題に限らず、いろいろな課題に対して、異なる視点から考えて解決しようとする意欲の源泉になります。

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\言葉がけのコツ/

実際の建物の中で聞いてみる

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コラム|自分の体で長さを測ろう

※写真はイメージです

「ものさし」などのような、正確に長さを測る道具がなかった時代に、人々はどのようにして物の長さを測っていたのでしょうか。生活の中で長さを測るとき、いちばん身近な分の手足などを使っていました。

例えば、「1寸」というのは、もともと親指1本の幅です。その10倍が「1尺」で、手を広げたときの親指の先から中指の先までの長さです。この測り方は、日本語の「1あた」(ひとあた)の測り方もだいたい同じです。こうして、自分の手をものに当てることによって、そのものの長さを知ることができたのです。

もっと大きいものではどうでしょう。「1ひろ」(ひとひろ)というのは、両手をいっぱいに広げたときの指先から指先までの長さです。このような、身体を使う測り方は、ものさしがなくても測れて便利なのですが、自分の1ひろと友だちの1ひろでは違うかもしれません。また、大人と子どもでも違うでしょう。

単位を統一する必要から、1791年にフランスがメートルという単位を提唱しました。当時、派遣された科学観測隊が測った、地球の北極から赤道までの子午線の長さの1000万分の1を1メートルと決めたのです。

書籍『子どもの「数学力」が自然に育つ2歳からの言葉がけ』について

\「考える力・見つける力」の芽を育てよう/

いつでもできる簡単な言葉がけで子どもの数学力(算数力)は大きく伸びます。

■子どもの数学的な力を育む「言葉のかけ方」をお教えします子育てでは、子どもへの声がけや話しかけが、とても大切です。子どもを伸ばす、子どもが変わるなど、様々な話しかけ方の書籍があります。本書は、子どもの数学的な力が自然と育つ、言葉のかけ方、話しかけ方を紹介する初めての本です。

■考える力の「芽」を育てよう小さな子どもの能力は無限大。幼少時にちょっとした声がけをしながら一緒に遊んだり、ゲームをしたり、実験をしたりすることで、考える力の「芽」はどんどん育ちます。「こっちには何個入っているかな?」「点をつないだら、何に見える?」「これと同じ形はできるかな?」「どうしたらいいと思う?」……などなど、少しのきっかけを作ってあげるだけで、子どもの頭はフル回転しはじめます。

■2〜6歳のいまだから渡せる一生モノのギフト著者の植野氏は、数学を教えて35年の経験から、幼少時の習慣が数学(算数)の力を育てることを実感しています。日々、いつでもできる話しかけで、お子さんに生涯使える大きなギフトを贈ってあげてください。

著者|植野 義明(うえの・よしあき)先生について

東京大学非常勤講師、くにたち数学クラブ代表、日本数学会会員、数学教育学会代議員。東京大学理学部数学科卒、東京大学大学院で数学を専攻、理学博士。1986年より東京工芸大学講師、准教授。2021年4月、定年退任と同時に国立市で3歳から100歳までの人たちが数学の美しさに触れ、数学で遊び、数学が好きになれる場所として「くにたち数学クラブ」を設立、代表。著書に『考えたくなる数学』(総合法令出版)がある。

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