古代の巨人伝説を文献学的に追跡した結果… アダムの孫は身長18㎞で数百年生きたことが判明!

2023年6月11日(日)14時0分 tocana

 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の三宗教を「啓典の民」「アブラハムの宗教」と呼ぶ。啓典の民とは、これら三つの宗教が旧約聖書と伝承を共有していることを意味する。


 アブラハムの宗教と呼ばれる理由は、どの宗教も古代に生きた人物アブラハムを信仰の父祖と見なすからだ。しかし文献学的に詳しくみると旧約聖書そのものが、シュメール神話・古代バビロニアの伝承を継承したと考えられている。たとえばノアの洪水だ。


ノアとウトナピシュティム

 事実として世界中に古代の洪水譚、洪水神話が残っている。それゆえ19世紀末あたりまで、文字通り世界中がエベレストの頂きまで水に浸かったと信じる人々もいた。じつは今でも「創造科学」という疑似科学論者がいる。しかし彼らが主張するように、地球全体を覆う大洪水があった地質学的な痕跡はない。多くの学者は、世界中に残る洪水神話を氷河期後の雪解けによる鉄砲水の記憶だと考えている。


 では、旧約聖書・ノアの洪水物語は何なのか。それは古代バビロニア神話に由来すると考えられている。ノアの洪水物語は、アッカド語の「ウトナピシュティム」物語を引き継いでいることが確認されている。


 同じように、人類の始祖アダムの物語も、その原型はアダパの物語だと指摘されている。つまりヘブライ語の旧約聖書「創世記」の一部は、おそらくアッカド語やシュメール語に伝わる伝承を基礎に成立した。メソポタミア/バビロニアの神話を土壌にして、花開いたのがユダヤ・キリスト教の聖書、アダムやノアの物語なのだ。


アダムとアダパ

 ではアダパは、どんな人物なのか。興味深いことに、アダパは「神聖なる魚」として半身半魚の人物として描かれる。シュメール神話によれば、人間に工芸や文明をもたらすため、エリドゥの高位神エアにより、アプス神殿から七賢人アプカルルが派遣された。七賢人の筆頭がアダパである。


「エリドゥ」は洪水以前に建設された五つの都市国家の一つだ。一説では、ここに「バベルの塔」があった。また「アプカルル」は神殿の聖職者たちだ。つまり、これらの神話は事実そのままではないにせよ、考古学的・歴史的事実を何かしら反映している。


 アダパは、神と人をつなぐ半魚人であり漁師でもある。なぜ漁師が半魚人なのか。今となっては判らない。もしかすると収穫をもたらす知恵のある者、水の神と人の間に立つ存在という意味で、半魚人で漁師なのかもしれない。イエス・キリストの最初の弟子が漁師であることを思い出させるし、後代にキリスト教徒が魚を信仰の象徴としたことを連想させる。


巨人オグの伝説

 このようにノアとウトナピシュティム、アダムとアダパは、文献学的にシュメール神話・古代バビロニアと聖書をつなぐ存在である。


 一方、キリスト教とイスラム教をつなぐ伝承もある。それが巨人伝説だ。たとえば、聖書に出てくるダビデとゴリアテの話は有名だ。他にもオグという巨人が出てくる。ユダヤ・キリスト教の伝承では、オグの身長1.8mから最大4mとなっている。たしかに身長180cmは古代人としては、破格の背の高さだ。


 しかし、この伝承を継承したイスラム神話においてオグは、じつに身長18kmの巨人として現れる。日本でも神話学の碩学・松村武雄が、この話を1928年『神話伝説体系:ヘブライ・パレスチン神話と伝説』で紹介している。


 この巨人オグは、アダムの娘アナクの息子である。娘アナクも中々の見た目だったらしく、頭が二つあり、両手の指は20本を数え、指ごとに長い鉤爪が2本ずつ生えていたとされる。伝承では「悪」それ自体、その象徴として考えられており、神が殺した最初の人物とされる。


 そしてアナクの息子オグはさらに凄かった。高い山脈を沈めたノアの洪水でさえ、巨人オグにとっては踝を湿らせる程度だった。その巨大さは、サイが突進しても蚊に刺されたようにしか感じなかったという。では、そのオグはどんな最期を迎えたか。


 洪水の最中、ノアを方舟ごと沈めようと暴れるも失敗したオグは、後に数百年を生きて、最後はモーセによって倒される。山脈を引き抜いて、モーセ率いるイスラエル軍を陣営ごと圧殺しようとしたオグに対し、モーセが罠を張った。結果オグは自分の持っていた山脈を頭に落として絶命する。身長18㎞の巨人の最期だった。


人類の最大身長は2.7m

 身長180cmの男性器は15cmほどと思われるが、巨人オグの場合は、じつに1.5kmとなる。さすがに性器が1.5kmもある人類は存在しない。しかし古代にアダパ、ウトナピシュティム、オグと呼ばれた人物はいたのかもしれない。身長18kmは極端にしても、身長2.7mの人物(ロバート・ワドロー)は確認されている。はるか古代、さらなる巨人がいてもおかしくはないだろう。

tocana

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