日本選手権での学生ランナー、3000m障害で中大の柴田が学生歴代2位、5000mでは青学大の鶴川が日本人学生歴代2位に

2024年7月9日(火)8時0分 JBpress

文=酒井政人


3000m障害で柴田が大幅ベスト

「日本一」を決める舞台である日本陸上選手権。今年はパリ五輪の〝最終トライアル〟となった。例年以上に熱いレースが繰り広げられたなかで、学生ランナーも活躍した。

 まずは男子3000m障害。大会3連覇中の三浦龍司(SUBARU)が不在でもレベルは高かった。そのなかでサプライズを演出したのが柴田大地(中大2)だ。

 レースは2000mを8分42秒で通過すると、優勝争いは新家裕太郎(愛三工業)、柴田、青木涼真(Honda)の3人に絞られた。そして徐々にペースが上がっていく。最後は青木が残り半周でスパート。ブダペスト世界選手権14位の実力を見せつけて、8分24秒21で優勝した。

 柴田は最終障害で脚が合わずに遅れるも、新家を抜き去り、最後は青木に迫る。日本歴代8位の8分24秒68でゴールに駆け込んだ。このタイムは洛南高の先輩・三浦に次ぐ学生歴代2位で、自己ベストを一気に約18秒も塗り替えたことになる。

「関東インカレ(1部2位/8分42秒90)でサンショーは一区切りしようと思ったんですけど、来年の東京世界選手権を目指すうえでも日本選手権で勝負しました」と柴田。出場した選手17名のなかで持ちタイムは一番下だったが、準優勝まで一気に駆け上がった。

 しかも、「ラスト1周まで結構余力があった」ようで、最終障害をうまくクリアできていれば、違う結果になっていたかもしれない。

「詰めの甘さというか、最後の水濠と障害で勝負させてもらえなかった。青木さんは世界大会を何回も経験していますし、レベルの差がまだまだあったかなと感じています」

 それでも今回の快走は柴田だけでなく、チームにとっても〝勢い〟になっただろう。今年の箱根駅伝は10区で区間9位。総合13位で悔しいゴールを迎えただけに、駅伝への思は強い。

「今後は5000mと10000mで記録を狙って、10月の箱根駅伝予選会は日本人トップを狙うような走りをしないといけないと思います」

 箱根駅伝は予選会からの出発となる名門・中大。3000m障害で世界を目指す柴田の走りに注目したい。

 日本選手権と同時開催されたU20日本選手権は男子5000mでルーキーたちが好走した。優勝は濱口大和(佐久長聖高)に譲ったが、2位の松井海斗(東洋大)が13分46秒34、3位の桑田駿介(駒大)が13分46秒75と自己ベストを更新。岡田開成(中大)が13分47秒41で4位に入った。3人とも関東インカレに続いて結果を残しており、今後のトラックレースでタイムを大幅に短縮する可能性を秘めている。


5000mは青学大勢が存在感

 強烈スパートを見せた伊藤達彦(Honda)が制した男子5000mでも学生勢が活躍した。トップは1000mを2分35秒で入ると、3000mを7分56秒で通過した。この高速レースに青学大勢が食らいつく。前半は黒田朝日(3年)が上位でレースを進めると、後半は鶴川正也(4年)が浮上。最後は壮絶なラスト勝負を繰り広げた。

 優勝した伊藤が大会新&日本歴代7位の13分13秒56、2位の森凪也(Honda)も日本歴代10位の13分16秒76。上位9人中8人が自己ベストとなったレースで、鶴川は4位に食い込み、日本人学生歴代2位の13分18秒51を叩き出した。

 他の学生勢は花岡寿哉(東海大3)が15位(13分37秒40)、伊藤大志(早大4)が17位(13分38秒20)、黒田が19位(13分40秒18)、吉居駿恭(中大3)が22位(13分50秒01)、折田壮太(青学大1)が28位(14分15秒00)だった。

 関東インカレでマークした自己ベスト(13分24秒90)をさらに更新した鶴川。レース後は喘息の症状が出て、立っていられないほどに苦しんだ。それぐらい自分を追い込んでいた。

「1000mの通過タイムが2分35秒で『ヤバい』と思いました。2000mからずっときつかったんですけど、前に(黒田)朝日がいたので、何回も何回も粘ったら、いつの間にかラスト1周で前にいました。後輩が頑張ってくれたので、僕も絞り出して、最後まで行けたと思います」

 鶴川は2週間前にアキレスを痛めて、ポイント練習を1回飛ばしたという。週に1度は距離走を入れるなど、5000mにしっかり合わせてきたわけではなかった。それでも初めての日本選手権で大健闘ともいる結果を残したが、本人はまったく満足していない。

「プランは全然なくて、ただ最後に勝つ。それが僕の目標でした。結果は悔しいですけど、全力は出せましたし、めちゃめちゃ追い込めたのでいいトレーニングになりました。また強くなったと思います。青学はスピード練習をさほどやっていないので、実業団で5000mに特化した練習をやれば絶対にいけると思います。今回はラストのキレがなくて負けましたが、次(来年)は勝てるんじゃないでしょうか。世界を目指す気持ちが出てきましたね」と鶴川は来年の東京世界陸上を狙っていくつもりだ。

 日本選手権に参戦した学生ランナーは少なかったが、7月は北海道のトラックレースが待っている。ホクレン・ディスタンスチャレンジ(6日の北見大会、10日の網走大会、13日の士別大会、17日の深川大会、20日の千歳大会)と14日の関東学生網走夏季記録挑戦競技会だ。次はどんな好タイムが誕生するのか、楽しみにしたい。

筆者:酒井 政人

JBpress

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