これから社会を牽引する若い世代にも、インターネットの未来作りに参加してほしい【JAIPA会長 久保真インタビュー】

2022年8月24日(水)9時0分 BIGLOBE Style

こんにちは。BIGLOBE Style編集部です。

今回取り上げるのは、ビッグローブ株式会社 執行役員であり、日本インターネットプロバイダー協会(以下、JAIPA) 会長の久保 真(くぼ まこと)のインタビューです。

日本のインターネット利用者の割合は、13〜59歳の各年齢階層で9割を超え(総務省の令和3年通信利用動向調査)、固定系ブロードバンドインターネットサービス契約者の総ダウンロードトラヒックも10年前の約10倍、特にここ数年のコロナ禍の影響で非常に伸びています。

そのような背景からもインターネット利用環境の整備や、インターネットビジネスのルール作りなど、JAIPAが率先して役割を担う領域も広がっています。さらには、同協会が毎年主催している「JAIPA Cloud Conference」は会員企業の若手社員もイベント企画・運営を通じて、会社や業界を越えたネットワークを構築しています。今回は同協会の活動や役割に加え、このようなイベントの事例などもご紹介します。



全国約140の事業者が会員として参画

—— まずは、JAIPAの役割について教えてください。


JAIPAはお客さまへのインターネットサービスの提供を通じて、インターネットに関わる諸問題や、総務省の各種政策の検討に参画している一般社団法人です。

具体的には、インターネット接続を担うサービスプロバイダー(以下、ISP)やクラウド関連企業など全国約140の事業者が会員として参画し、個々の事業者だけでは解決や対応が難しい共通の課題に取り組んでいます。

久保 真(くぼ まこと)

経歴
1989年 日本電気株式会社(NEC)入社
1995年 アンパサンド・ブロードバンド株式会社 コンテンツ部長
2006年 NECビッグローブ株式会社 経営戦略本部長
2014年 ビッグローブ株式会社 執行役員
2015年 同 執行役員 兼 BIGLOBEキャピタル株式会社 代表取締役社長
2018年 同 執行役員 法人事業本部副本部長
2021年 同 執行役員
       日本インターネットプロバイダー協会 会長
       インターネット接続サービス安全・安心マーク推進協議会 会長

※撮影時のみマスクを外しています。

—— 主にどのようなテーマを扱っているのでしょうか?


その時々の業界課題や内外の社会・経済の環境などに応じてさまざまですが、以下に挙げるようなテーマに参画しています。

・電気通信事業者間の競争環境の確保
・全国各地で公平なブロードバンドの品質の確保
・消費者保護への取り組み
・サイバーセキュリティの確保
・世界的なインターネットガバナンスの活動 など

国内の通信に重要な設備や大きな市場シェアを持つ通信キャリアと、それを利用する事業者が、公平な利用条件でお客さまに対し多様なサービスを提供して行けるよう、また全国地域の事業者が同等な品質の通信サービスを提供して行けるよう、総務省が進める公正な競争ルールや品質確保に向けた各種取り組みを行なっています。

消費者保護の取り組みにおいては、総務省の消費者保護ルールの見直しに関する電気通信事業法施行規則及びガイドラインの改正などに対応して、電話勧誘における課題やwithコロナ時代における利用者対応の在り方として、ISPの販売現場での状況を踏まえて現実的なルール作りに参画しています。

また、インターネットは全ての人が自由な表現を行なえる生活基盤ではあるものの、誹謗中傷、ヘイトスピーチなど一部の行き過ぎた表現行為も顕在化しています。そこで、表現の自由を確保しつつ被害者の人権を守る活動とのバランスをとるべく、総務省の対策検討に参画し取り組んでいます。

多様な企業が力を合わせインターネット業界の健全な発展に取り組む

—— 全国約140の事業者が会員として参画しているということで、ビジネスにおいては競合企業であったり、利害関係もあると思いますが、その点はどのように連携しているのでしょうか?


各社が置かれている共通の社会課題や、世の中に貢献するための手段、基本的なビジネスフレームなどは皆で議論して知恵を絞りながら活動しています。

イメージで例えて言うなら、各社自動車を売るとしたら、まずは安心・安全に走れる高速道路などのインフラがしっかりできた方が良いので、共に協力して作ってからそれぞれ活動する……それをインターネット業界に置き換えてみるとわかりやすいかもしれません。


—— なるほど。まずは道を整備した方が、業界全体が健全に発展するイメージですね。


インターネットのサービスには多数の種類があり、その数は年々増えています。接続サービスを提供するのがBIGLOBEを含めたISPですが、この分野にも以下のようにさまざまな種類があります。

・接続サービスを提供するインターネット接続サービスプロバイダー
・クラウド、ホスティングサービスを提供するプロバイダー
・検索サービスを提供するプロバイダー
・Eコマースのプラットフォームサービスを提供するプロバイダー など

それぞれの企業が担当する分野で自社の役割を担うことで、利用者に便利で安心して使えるインターネットサービスを提供しています。

しかし、インターネットが日常に深く浸透したことで、ISPの存在意義が利用者の方々から見えにくくなっている状況になっているとも感じています。今後、JAIPAではISPがどういった部分で役に立っているのか、皆さまに知っていただけるような活動も行なっていきたいと考えています。

JAIPAの活動に関わる一番の魅力は人

—— 久保さんのお話を聞いていて、普段は会員各社それぞれが事業やサービスを担いながらも、JAIPAの活動にも協力することで業界の発展に寄与しているイメージを受けました。


そうですね。協会の会員企業には“絆”みたいなものがあると言っても良いと思います。

個々のテーマでの議論では会員間で利害や意見が異なったり、ビジネス上では競合企業という側面もありますが、皆それぞれが業界をリードしていく高いプロフェッショナル意識とスキルを持ち、相互の信頼関係を前提とした有益な繋がりができています。


—— 絆ですか。企業の垣根を越えて精力的に活動されている雰囲気が伝わってきます。

協会のメンバーの皆さんは大変精力的に活動しており、会長の私自身もとても助けられています。JAIPAの会員は大きな規模の事業者から中小の事業者まで、サービス提供地域も全国や各地域など幅広く、平等な立場で議論しています。各テーマには緊張感を持ち取り組んでいますが、雰囲気はとてもフランクな団体だと思います。


—— 私たち一般の人がJAIPAの活動に関わることはあるのでしょうか?


JAIPAクラウド部会が毎年主催している「JAIPA Cloud Conference*1」というイベントには1,000名を超える方々にご参加いただいています。会員に限定せず誰もが参加できるので、ご興味があれば活動をぜひ覗いてみて欲しいですね。

イベントの実行委員会にはJAIPA会員各社の若手社員が参画し、皆で積極的にアイデアを出し合い自由闊達に企画・運営を行なっています。若手メンバーにとっては他社メンバー、会員企業の幹部やスポンサー企業さまと関係を築きながら、自身のスキルを高めていける貴重な機会になっています。
*1 今年(2022年)は、9月8日に開催予定です。

その他にも「JAIPAの集い」「沖縄ICTフォーラム*2」などさまざまなイベント・交流活動が行われています。こちらも有志のメンバーで活発に協議しながら開催地の選定、イベント工程を設計した上で、地元の行政や企業への参加の働きかけや、プログラムの企画、懇親会の開催などの企画・運営を行なっています。
*2 会員限定の場合あり。


—— 運営に携わる経験を得ることはもちろん、自分たちが所属する会社以外のメンバーとも繋がりができる素敵な機会になっているのですね。


JAIPAの活動に関わる一番の魅力は人です。自分の会社以外にもネットワークが広がると、学びも楽しくなるし、直接ビジネスでつながることも出てくるかもしれません。

BIGLOBEでも若手社員や新入社員がイベントの運営に参加していますが、とても貴重な経験を積んでいる印象があります。私は会長の立場で、いろいろな会社がJAIPAの取り組みに興味を持ち仲間に加わっていただけるとありがたいと思っています。


日本のインターネット提供者及び利用者全体の利益のために

—— 久保さんご自身は、会長として意識されていることがあれば教えてください。


団体としての意見については会員相互の自由闊達な議論を通じ、特定の事業者の利害に偏ることなく、長期的展望に立って日本のインターネット提供者及び利用者全体の利益のために活動することを心掛けています。

また、JAIPAの活動は会員各社の参加メンバーが、それぞれ自身の会社の経営や担当する業務を行いながら参画することで成り立っているので、皆でこのコミュニティを高めていこうという意識を強く感じます。私自身もその期待に応えていきたいという気持ちを常に持っています。


—— 今後JAIPAで行なっていく取り組みについて聞かせてください。


より幅広い分野の事業者に会員として参画いただき、業界横断の問題などについて解決を図る場として取り組んでいきたいと考えています。

インターネットはすでに社会そのものになりつつあり、コロナ禍でのリモートワークや教育、EC、地方創生など新たなビジネスチャンスの創出、またDXで各業種・業界を再活性化する取り組みも進んでいます。今後はさらにWeb3やメタバースなどインターネット活用による新たな広がりも見込まれますが、インターネット活用が広がるほど環境や利用者への配慮が求められます。

JAIPAもこうした変化を踏まえ、今後はハードウェアベンダーやCDN(Content Delivery Network)事業者、ゲームや教育などのサービス事業者など、幅広いプレーヤーの方々とインターネットの更なる利用環境の向上に向け取り組んでいきたいです。


—— 最後に、この記事を読んでいただいた方へのメッセージがあればお願いします。


インターネットが引き続き健全な公共のインフラとしてあり続けるためには、お客さまが安全・安心に利用でき、事業者がオープンで透明、公平な機会のもとで活動できる必要があります。そして、インターネットの環境の格差で利用者が取り残される社会にならないよう、JAIPAも社会の一層の発展を担う存在でありたいと考えています。

そのためには、これからのビジネスを牽引する世代や、新しく社会人の世界に入る若い方々にも、ぜひJAIPAの活動に関心を持って参加いただきたいと思います。JAIPAに参画することで仕事においても活動の幅が広がり、人脈や友人が増え、新しい発見があり、知識が増え、意識も高まり、人生が充実し楽しくなる……そのような関係が構築できると嬉しいですね。


—— 本日は貴重なお話をありがとうございました。

※ 記載している団体、製品名、サービス名称は各社またはその関連会社の商標または登録商標です。

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