京都大学、幼児期の感情制御に腸内細菌叢が関係と発表

2023年9月11日(月)14時15分 リセマム

幼児期の感情制御は腸内細菌叢と関係する- 腸内細菌叢を活用した新たな発達支援を目指して-1

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京都大学の共同研究グループは2023年9月6日、幼児期の感情制御の困難さには、炎症との関連が指摘される菌叢が関連しているという研究結果を発表した。また、感情制御の発達リスクは、緑黄色野菜の摂取頻度の低さや偏食とも関連することが明らかとなった。

 京都大学の教育学研究科 明和政子教授、藤原秀朗博士、大阪大学 萩原圭祐特任教授らの共同研究グループは、3〜4歳の日本人幼児257人を対象に、感情制御を含むいくつかの種類の認知機能が、腸内細菌叢や食習慣とどのように関連するかを検討した。

 自己の感情や欲求などをコントロールするなど、感情抑制を司る前頭前野は、幼児期に著しく発達する。この時期の感情制御は、将来の成人期の社会経済力を予測することもわかっているという。しかし、幼児期の感情制御には大きな個人差がみられ、それに関連する要因については不明であった。

 最近では、「脳—腸—腸内細菌叢相関」という双方的な関連から中枢神経機能をとらえる研究が注目を集めている。成人を対象とした研究では、腸内細菌叢は身体の健康のみならず、不安やうつなど、こころの健康にも関連することが示されているが、乳幼児を対象とした研究はほとんど行われていなかった。

 研究では、母親に63の項目日常の問題行動についての質問項目に対し、該当する行動が最近6か月の間にどの程度子供にみられたか、「1. みられない」「2. 時々みられる」「3. よくみられる」の3段階で評定してもらい、先行研究の基準にあわせてリスク群と対象群を設定した。また、糞便採取により、「腸内細菌の多様性(種の豊富さや均等度)」と「各菌が全体の菌の中で占める割合(占有率)」を算出した。さらに、便の採取日から直近1週間で子供が食べた24項目の食品の摂取頻度と、食事の好みの偏りなど偏食の有無に関するアンケート調査を実施した。

 これらの研究の結果、この時期の感情制御の困難さには、炎症との関連が指摘される菌叢が関連していることが明らかとなった。また、感情制御の発達リスクは、緑黄色野菜の摂取頻度の低さや偏食(限定的な食事の好み)とも関連することがわかった。

 腸内細菌叢の組成は、食生活習慣に大きく依存する。特に、乳幼児期は腸内細菌叢が安定するまで、受ける影響が大きいと考えられる。この幼児期の腸内細菌叢と感情抑制や認知抑制などの実行機能、食生活習慣との発達的関連が明らかになれば、腸内細菌叢や食生活を基軸とした認知発達支援法を新たに開発することができる。

 研究者の藤原秀朗博士は、「本研究にご協力いただき、そしていつも応援してくださる多くのお母様とお子様に心より感謝申し上げます。私たちは、ひとりひとりの子どもたちが生涯を通じて健康な生活を送るための基礎研究の発展を目指して活動しています。その成果を、保育や家庭という子育ての現場で活用いただけるための社会実装も積極的に進めてまいります。」とコメントしている。

 研究結果は2023年9月6日に、国際学術誌「Microorganisms」にオンライン掲載された。

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