三浦佳生「フィギュアスケートというものをもっとしたい」昨季で得た強みと弱み、今季の課題

2024年9月19日(木)8時0分 JBpress

文=松原孝臣 撮影=積紫乃


自分の弱みや欠点をみつけられたシーズン

 フィギュアスケート界でこれからを嘱望される選手がいる。三浦佳生だ。

 今春、明治大学に入学、今年6月に19歳の誕生日を迎えた。

 三浦は小学生の頃から全国大会で活躍、小学6年生のとき全日本ノービス選手権のAクラス(フィギュアスケートの区分で11歳以上12歳以下の選手が参加)で優勝している。

 中学1年生で4回転トウループに成功し、2年生でジュニアグランプリシリーズに出場。3年生のときにはフリーで2種類計3本の4回転ジャンプを成功させるなど早くから将来を嘱望された。

 その後も、おおづかみに眺めれば順調に階段を上ってきた。2022−2023シーズンはシニアの大会である四大陸選手権で優勝し、世界ジュニア選手権でも優勝。昨シーズンはグランプリシリーズのフィンランド大会で同シリーズ初優勝を遂げ、2シーズン続けてグランプリファイナルに進出。また世界選手権にも初めて出場し8位の成績を残している。

 新たなシーズンの本格的な開幕を前に、飛躍の1年となった2023−2024シーズンをこう振り返る。

「徐々にシニアでの戦い方を学んだり、自分の存在感をみせたり、自分なりには大きなシーズンになりました」

 ただ、大きなシーズンとなった理由はそればかりではない。

「自分の弱みだったり欠点をみつけられたよいシーズンだったと思います」

 自分で弱みとして捉えた点をこのように説明する。

「自分は世界選手権に初めて出させてもらいました。過去いちばんよい状態で臨んだんですけど、シーズンの中でもよくない方の演技をしてしまったというところです。やっぱり試合の運び方だったり、気持ちのあり方というところに弱さがあったなと思います」

 世界選手権に向けて、練習量を通常以上に増やし、しかも調子が上がっていた。それを発揮できなかった。だから悔いを残した。

「いつもと同じ試合の気持ちで臨んではいたんですけど、ただどこかで世界選手権という大きな大会で『やってやりたい』という気持ちがありました。そこで気持ちが前に出過ぎて体がついてきてなかったという印象があります。ほんとうに状態はかなりよくて、あとは試合で練習してきたことを出すだけというところでした。だから技術ではなく、気持ちに問題があったなと思います」


「フィギュアスケートをしていないな」

 三浦の特徴と言えば、スピード感あふれる滑りと、試合でも時折のぞかせる気迫だ。それがときにマイナスに働くことがあると言う。

「空回りするのが自分で。昔、ジュニア時代とかは特にコントロールできずに成績も出なかったことが多くて、ようやく最近になってコントロールされてきているかな、という印象があります。だからこそもっともっと安定するような心持ちというか、そういったものをみつけていけたらいいなと思います」

 だから今シーズンの課題の1つとして考えている。

「やっぱりグランプリシリーズとか全日本選手権、ああいう試合になって緊張しない人はいないと思うんですよ。少なからず緊張感はみんな持っている。その中でいかに平常心というか、練習通りの気持ちでいけるかどうか。本番だからもっと力を出そうとか考える、本番ということに頼る、アドレナリンなどに頼ってしまうと空回りしてしまうので、練習通りを出そうという気持ちであることが大事になると思っています。特別に何かするわけじゃないですけど、そういう気持ちで頑張りたいです」

 昨シーズンを振り返る中で感じたのは、試合においての気持ちの持ち方だけではなかった。

 今年6月、「ドリームオンアイス」に出演したとき、昨シーズンについて触れる中でこう語っていた。

「自分の演技を見返して、フィギュアスケートをしていないなと感じました」

 その言葉に込めた思いをあらためて説明する。

「昨シーズンを通して、特にフリーは初めてアニメの曲(『進撃の巨人』)を使ったりして、自分の演技を知ってもらうという点ではすごくよいアプローチの仕方だったと思います。ただ一方で、がつがつ行っている感じがして、やっぱりフィギュアスケートというものをもっとしたいなと思いました。やっぱりもっとターン1つや滑り1つでみせるようなスケートをしたい、曲を意識した演技をやって、曲と同化して自分の滑りもできるシーズンにしたいなと思っています」

 その課題意識には、フィギュアスケーターとしてスタートを切って早々から抱いていた思いもつながっているかもしれない。(つづく)

筆者:松原 孝臣

JBpress

「フィギュアスケート」をもっと詳しく

「フィギュアスケート」のニュース

「フィギュアスケート」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ