南極の緑化が劇的に進む。過去40年間で植生が10倍以上に増加
2024年10月11日(金)20時0分 カラパイア
英エセクター大学をはじめとする研究者らは、人口衛星データを使用して、南極半島全域の緑化の進行を調査した。
その結果、過去40年間で「南極半島」の植物におおわれた面積が10倍以上に拡大していることが判明したそうだ。
そこの風景は相変わらず雪と氷と岩だらけだが、上空から観察すると、驚くほど緑化が進んでいるのが確認された。
今後も地球温暖化が進むと、いずれは南極の生態系が一変するような事態もあり得るだろうと、科学者らは懸念している。
南極での植物の面積は40年で10倍以上、ペースも加速
南極海へ向かって伸びる南極半島は、南極や北極のほかの地域と同じく、地球全体の平均よりも速いペースで温暖化が進んでいる。
英エクセター大学とヘレフォードシャー大学の研究チームは、英国南極調査局と協力し、人工衛星のデータを用いて地球温暖化が南極半島の地形にどのような変化をもたらしたかを調査した。
その結果、1986年には1km2にも満たなかった植物におおわれた面積(植生被覆面積)が、2021年までにほぼ12km2に拡大していることが判明した。
またここ数年(2016〜2021年)においては、調査期間全体(1986〜2021年)との比較で緑化ペースが3割以上加速。この期間だけで年間40万m2広がっていることがわかった。
南極半島の先端に浮かぶ島アムスラー島の風景/Credit Dan Charman
南極半島は、植物にとって世界でもっと過酷な土地だ。そこに繁殖する植物といえば、もっぱらコケである。
それらにおおわれた場所が広がったとは言え、地域全体で見てみれば、ごく一部だけであるという。
だが、エクセター大学のトーマス・ローランド博士は、この孤立した地域であっても人間による温暖化の影響から逃れられないことを示すサインであると、緑化の広まりに危機感を募らせている。
風景は相変わらずほとんどが雪と氷と岩だらけで、植物が生息する地域はごくわずかです
ですが、そのごくわずかな領域が劇的に広がっており、この広大で孤立した”荒野”でさえ人為的な気候変動の影響を受けていることを示しています(トーマス・ローランド博士)
(a〜d)は1986年から2021年までの南極半島の同じ場所の標高300m以下の植生地域の変化を表したもの。(e)は全体的な傾向分析。各六角形は5,000平方kmを表し、色分けによって時間の経過とともに植生が増加した地域を強調している。 image credit:TP Roland et al.、2024/Nature Geoscience
このまま緑化が進めば、南極の風景が一変する恐れも
しかもこうした緑化は、さらなる緑化を引き起こし、より加速するかもしれない。
南極の土壌はほとんどがきわめて痩せているか、そもそも存在しない。これまでは、それが植物の進出を阻んでいた。
しかしコケが広がれば、有機物が増えて土壌が豊かになるので、植物が成長しやすくなる。
そうした状況では、皮肉にも、エコツーリズムや研究調査のためにやってきた訪問者によって、外来種が持ち込まれるリスクも高まる。
緑が増えるのは嬉しいものだが、それが元々ない場所ではそう喜んでもいられない。
ローランド博士は、緑化のせいで、南極の風景がガラリと変わってしまうのではないかと危惧している。
不毛の地だったはずの南極半島で緑化が進んでいる image credit:Matt Amesbury
南極半島の植生が気候変動に敏感に反応することは明白です。今後の温暖化によって、南極半島という象徴的で脆弱な地域の生態系や風景に根本的な変化が現れるかもしれません(ローランド博士)
南極を保護するには、こうした変化を理解し、それを引き起こす原因を正確に特定することが大切であるとのことだ。
この研究は『Nature Geoscience[https://www.nature.com/articles/s41561-024-01564-5]』(2024年10月4日付)に掲載された。
References: Antarctic ‘greening’ at dramatic rate - News[https://news.exeter.ac.uk/faculty-of-environment-science-and-economy/antarctic-greening-at-dramatic-rate/]