「まさか3番まで…」伊勢路で優勝に届かなかった青学大、駒大、創価大…全日本大学駅伝の敗因と箱根への手応え
2024年11月11日(月)6時0分 JBpress
(スポーツライター:酒井 政人)
青学大は中盤独走するも3位に沈む
國學院大が狙い通りの初優勝を飾った全日本大学駅伝。他に「優勝」を意識していたのが青学大、駒大、創価大だ。3校はそれぞれ“見せ場”を作りながら、栄冠には届かなかった。敗因はどこにあったのだろうか。
6年ぶりの優勝を目指した青学大は絶好の展開に持ち込んだ。創価大・吉田響(4年)を“ペースメーカー”に利用した2区の鶴川正也(4年)でトップを奪取。國學院大に54秒差をつける。
3区の折田壮太(1年)が創価大を引き離すと、4区の黒田朝日(3年)が区間賞・区間新。4区終了時で國學院大に1分27秒差をつけて独走態勢に入った。
しかし、5区と6区で國學院大の猛攻を受けて、6区終了時で4秒差まで詰め寄られる。それでも7区の太田蒼生(4年)がマラソン学生記録保持者・平林清澄(4年)とのデッドヒートに先着して、最初に最終8区にタスキをつなげた。
ただアンカーの塩出翔太(3年)が区間15位と大苦戦。9km過ぎで國學院大に引き離されると、駒大にも逆転を許して3位でレースを終えた。
「まさか塩出が3番まで落ちるとか思わなかった……」と原晋監督は絶句した。塩出のブレーキは想定外だったかもしれないが、例年と比べて、つなぎ区間の力強さも物足りない印象だった。
それでも収穫はあったようで、「出雲駅伝は勝ったと思った場面が一箇所もありませんでした。でも今回は2区鶴川と4区黒田のタイミングで勝てるチャンスがあるかなと思いました。ホップ、ステップ、ジャンプではないですけど、明るい兆しがありますよ。負けた悔しさを肯定的にとらえてチャレンジしていきたい」と、得意とする箱根駅伝に向けて力を込めた。
前回の箱根駅伝は2区黒田、3区太田が連続区間賞。5区若林宏樹(4年)も区間2位(区間新)と快走した。さらに今季は鶴川が出雲1区、全日本2区で区間賞を獲得。鶴川が1区に入ることになれば、往路は大本命になるだろう。
駒大は2区終了時17位からの準優勝
駒大は出雲駅伝に続いての2位。アンカー決戦で敗れた出雲と異なり、全日本のゴール後は“充実感”がみなぎっていた。
1区の島子公佑(2年)が國學院大と5秒差につけるも、2区の桑田駿介(1年)が苦戦する。区間17位に沈み、関東勢最下位の16位に転落。トップ青学大と2分23秒、國學院大には1分29秒差をつけられた。
しかし、この劣勢から盛り返す。まずは3区の伊藤蒼唯(3年)で8位に浮上。4区谷中晴(1年)も区間3位と好走して、國學院大との差を10秒縮めた。5区と6区は國學院大が上回るも、終盤のロング区間が衝撃的だった。
7区の篠原倖太朗(4年)は区間歴代3位、アンカーの山川拓馬(3年)は日本人歴代2位。追い風が吹いていたとはいえ、ハイレベルの連続区間賞で、最後は優勝した國學院大に28秒差まで急接近した。
怒涛の追い上げで伊勢路を沸かせた駒大。“敗因”を挙げるとすれば、2区の失速になるだろう。桑田は1年生ながら出雲1区を6位と好走した実力者だが、今回は粘ることができなかった。
「桑田は夏合宿でも篠原と同じ練習をやれたんですけど、篠原ほどの地力がないので、余裕度がなかった。そのダメージが出てしまったのかな」と藤田監督。結果的には前回2区で区間新を打ち立てた佐藤圭汰(3年)の不在が痛かった。
それでも佐藤を欠いて、2区終了時16位からの準優勝。藤田監督の言葉には力がみなぎっていた。
「3区の伊藤でゲームチェンジできて、初めて走る1・2年生がつないで、7、8区でドカンといく。そのつながりがまさに駅伝です。篠原は単独であれだけ走れたのはこれまでなかったですし、山川はとんでもない走りでした。箱根駅伝に近い距離の2区間で他大学を圧倒したわけなので、そこはうちのストロングポイントになると思います。篠原と山川がいて、圭汰が戻ってきたら、これは強みになりますよ」
前回の箱根は篠原が1区(1位)、佐藤が3区(2位)、山川が4区(6位)を担ったが、次の正月決戦も“トリプルエース”の走りがポイントになりそうだ。「今日の山川の走りを見たら2区をやらせたいですけど、篠原も駒大のエースとして2区をやりたいはず。ただ箱根は山があるので、適材適所に選手を配置していきたいです」と藤田監督。どんなオーダーで勝負に出るのか。
創価大は2区吉田響と8区野沢が快走
出雲駅伝で留学生を欠きながら過去最高4位に入った創価大は今回、「優勝争いをしながらの3位以上」(榎木和貴監督)を目指していた。
1区の小暮栄輝(4年)がトップと2秒差の3位で発進すると、2区の吉田響(4年)が出雲に続いて爆走。トップに立つことはできなかったが、3位以下に41秒以上のリードを奪った。
しかし、3区石丸惇那(3年)が青学大のルーキー折田壮太(1年)についていけず、逆に國學院大に追い上げられる。4区の山口翔輝(1年)は区間8位と踏ん張るも、城西大と國學院大にかわされて4位に転落した。
5区のスティーブン・ムチーニ(2年)は出雲駅伝の2日前に転倒した影響もあり、本来の動きではなかった。それでも区間2位の走りで、城西大を逆転。再び3位以内に押し上げた。
7区の主将・吉田凌(4年)は駒大・篠原倖太朗(4年)に抜かれた後、脱水症状に苦しみ、区間12位。駒大の背中は2分14秒と遠く、反対に5位の城西大が33秒差と迫っていた。最終8区を任された野沢悠真(3年)は“4位キープ”を託されたなかで、19.7kmを57分48秒の区間2位で走破。過去最高となる4位でゴールに飛び込んだ。
優勝争いという観点でいうと、2区吉田響でリードを奪えず、5区ムチーニでトップに立てなかったのが“敗因”になるだろう。
榎木監督は、「1区で青学大を5秒ぐらい引き離せていれば、響が単独で逃げられたと思うんですけど、タイミングが少し悪かったですね」と話しており、序盤は青学大の巧みな戦略に苦しめられるかたちになった。また、「3区の石丸で流れが切れてしまった。山口は攻めた走りをしましたが、ムチーニは練習が途切れたことと、暑さに苦しめられた部分がありました」と中盤区間で伸びなかったことを悔やんでいた。
一方で吉田響が平坦区間でも快走を連発したことと、アンカー野沢の活躍で、「オーダーの幅が広がり、これまでと違う攻め方もできる。往路優勝を確実にできるような区間配置を考えていきたいと思います」と榎木監督。箱根駅伝では前回の区間配置にこだわらずに“主導権”を握るレース戦略を練っていくようだ。
箱根駅伝まで残り2カ月弱。総合優勝を目指す大学はチームを“最高の状態”に仕上げていく。
筆者:酒井 政人