「誰か」ではない「ぼくの」「わたしの」視点…グッドデザイン金賞「1人称童話」が面白い

2018年11月12日(月)10時15分 リセマム

「シンデレラが語る シンデレラ」

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もしあの童話の主人公が自分の言葉で語ったら…?よく知っているはずのお話を主人公が「1人称」で語る新しい視点の絵本「1人称童話シリーズ」が2018年10月31日に発表された2018年度グッドデザイン賞の「グッドデザイン金賞」を受賞した。

違う「視点」が魅力

 「むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんが…」と始まる読み慣れた童話は、たいてい「誰か」の話を「誰か」が語る3人称だ。親世代にも馴染み深い定番の物語が「ぼくは」「わたしは」の1人称の視点で語られ、より身近に、より親身に感じながら、感情移入して読むことができるのがこの絵本の魅力のひとつ。

 文章だけではなく、絵本を開けるとすべて主人公から見える世界が描かれているイラストも新鮮で衝撃的だ。「桃太郎」「シンデレラ」「浦島太郎」の3作品すべてに、主人公の「顔」は出てこないのだ。

「そうだったの?」という発見「自分なら違う」という感情

 「ぼくは…」「わたしは…」と語られるストーリーやセリフ、そしてイラストには、3作品それぞれに驚きと発見がある。

桃太郎が語る 桃太郎

 「ぼくは鬼がこわいと思いました。」と表紙に書かれているところから小さな衝撃を受ける。「桃太郎の桃のなかはどんな感じだったの?」「桃太郎は鬼がこわくないの?」と子どもに聞かれたら「桃のなかはどんなかな?怖かったかもしれないね。この本ではね、桃太郎が自分で“気持ち”を教えてくれているよ…」と差し出してみるのもいいかもしれない。おじいさんおばあさん思いの勇気ある桃太郎…といった今まで持っていた印象が少し違ってくるかもしれない。


シンデレラが語る シンデレラ

 「シンデレラが語るシンデレラ」の表紙もまた、「まさか私、このクツをそのままに?」と書かれていて驚きを感じる。今までシンデレラがガラスの靴を階段に置いてくることに疑問を抱いたことはなかったが、実際はどんな気持ちだったのだろうか?と階段に置きざりにされたクツのイラストを見ながら想像を掻き立てられる。継母と義姉に初めて会う時の気持ちを吐露するシーンも新鮮だ。意地悪に耐え忍ぶ優しいシンデレラ…?ではないのかもしれない…と考えさせられる。


浦島太郎が語る 浦島太郎

 シリーズ最新刊の「浦島太郎が語る浦島太郎」の表紙は「おいらはもう竜宮城にあきたのでした。」と書かれている。釣り糸を垂らしながら足を組む浦島太郎のイラストは、決してやる気のあるタイプではないことが直ぐにわかり、文章を読んでもまた、ちょっとだらしなさそうな性格かも…と感じとれる。浦島太郎のようにラッキーな出来事が自分に起こったら、自分はどうするだろうか…子どもと一緒に悩んでみるのも良いかもしれない。


2018年「グッドデザイン金賞」

 子どもから大人まで楽しめる「1人称童話シリーズ」の公式Webサイトには、

 「1人称童話シリーズが、2018年度のグッドデザイン金賞を受賞しました。これは絵本としては史上初めてのことです。文字どおり「視点を変えた」発想や、主人公になりきるその読書体験が、過去に例のない独創的なデザインとして高い評価を受けました。ご購入いただいた皆様、お取り扱いくださった全国書店の皆様、そして何より、読んでくれた大勢の子どもたち。皆様のご支持に改めて御礼申し上げます。心よりありがとうございました。」

と「グッドデザイン金賞」受賞のコメントが掲載されている。

 主人公になりきっても、なりきらなくても、覗いてみたかった童話の世界を主人公と同じ視点で見ることから「自分」と「他者」の両方に新しい発見があるのではないだろうか。1人称で語られることから、これまでと変わって見えてくる「童話の世界」は、大人にも、子どもにも「共感」と「想像」の力を伸ばしてくれる読書体験となるようだ。

リセマム

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