6割以上が悩む<夜間頻尿>の原因を専門医が解説。「糖尿病、高血圧、心不全などが関係していることも…」
2024年11月28日(木)6時30分 婦人公論.jp
(写真提供:Photo AC)
厚生労働省が実施した「令和4年 国民生活基礎調査」で、頻尿の自覚症状がある人の割合(有訴者率)は、人口1000人あたり38.8人だったそうです。そのようななか、医学博士の高橋悟先生(「高」は正しくは「はしごだか」)は「頻尿や尿もれといった尿トラブルの多くは、セルフケアで改善できることがわかっている」と話します。そこで今回は、高橋先生の著書『頻尿・尿もれ 自力でできるリセット法』から、一部を抜粋してご紹介します。
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悩む人が最多!「夜間頻尿」の正体
数ある尿トラブルのなかで、最も悩んでいる人が多いのが「夜間頻尿」です。40歳以上の女性で62.1%(2580万人)、男性で71.4%(2640万人)、全体では66.7%もの人に夜間頻尿があるとされます(「日本排尿機能学会2023年疫学調査」より)。
「夜寝てから朝起きるまでに、トイレのために1回以上起きる」
これが「夜間頻尿」の定義です。
ただし、起きる予定時刻の少し前に「トイレに行きたいと思って目覚め、トイレに行ったら寝床には戻らない」のは「1回」に数えません。
トイレの後でまた眠ったときを「1回」と数えます。
「1回起きるだけ」なら、それほど困らない人が多いかもしれません。実際、あまり心配しなくてもいいと思います。困るのは、2回、3回、それ以上起きる場合です。
なぜなら、夜間頻尿は睡眠の質を落とすので、昼間の活動に影響が出るからです。日常生活に影響することが、夜間頻尿の最も大きな問題です。
睡眠には「深い眠り(ノンレム睡眠)」と「浅い眠り(レム睡眠)」の2種類の状態があります。ノンレム睡眠とレム睡眠は交互に現れるもので、7時間眠るとしたら、ひと晩の眠りのなかでノンレム・レムのサイクルが4〜5回くり返されます。
最低3時間は眠らないと、1サイクルは回りません。トイレのために何度も起きる人は1サイクルを確保できないので、睡眠の質が落ち、寝不足状態になるのです。
夜間頻尿の原因は重なりがち
夜間頻尿に悩む人の数が多いのは、原因が2つも3つも重なりがちだからです。主な原因は、次のようなことです。
原因(1)加齢により「夜は尿を作らせないホルモン」が減る
本来なら夜間の尿量は、日中の尿量に比べると極端に少ないのです。
睡眠中には「抗利尿ホルモン」という「尿を作らせない物質」が分泌されて、腎臓から出る水分量が抑制されるからです。
ざっくり言うと1日の3分の1は寝ているので、抗利尿ホルモンの働きがなければ、夜に1日の3分の1に当たる量の尿が出ることになります。
1日の尿量が1500mlなら夜に500ml出る計算ですが、そんなに出るなら睡眠中に1〜2回は起きるでしょう。
起きなくて済むのは、抗利尿ホルモンが出ているからです。
夜の尿量は、どれくらいでしょうか。夜、トイレに行くのであれば、そのときに出た量を測って、それを1日の尿量で割り算すると、「夜間尿量率」がわかります。
これが33%以上あると、「夜間多尿」です。
実は、若いときには就寝中にたくさん分泌されていた「抗利尿ホルモン」も、加齢とともに減っていきます。そのため、夜に作られる尿量が増えるのです。
この「抗利尿ホルモン分泌の低下」による夜間多尿が、夜間頻尿の原因になるわけです。
なお、就寝前の「水やアルコールの飲みすぎ」も、夜間多尿の原因になります。
さらに「糖尿病、高血圧、心不全などの病気がある」ことも、原因の1つになります。
「睡眠時無呼吸症候群」の可能性にも注意
原因(2)下半身にたまった水分が、うまく排出されない
「足のむくみ」があるなら、それが夜間多尿につながっている可能性があります。
(写真提供:Photo AC)
本来、ふくらはぎには心臓と同じような“ポンプ作用”があります。
ポンプ作用により、下半身の水分が上半身に戻され、水分は体内を循環するのです。
ところが運動不足や加齢で、ふくらはぎのポンプ機能が落ちることがあります。すると、体を起こしている昼間に、本来は尿として排出されるはずの水分が下半身にたまったままになります。
そして夜、体を横たえると、たまった水分が上半身に戻ってくるため、心臓が「水分が余っている」と判断して、それが尿になってしまうのです。
特に出産した女性や妊娠中の女性は、リンパ液や血液の流れが悪くなるので、この現象が起きやすくなります。
原因(3)「睡眠時無呼吸症候群」の可能性
睡眠障害のなかで最も注意すべきは「睡眠時無呼吸症候群」です。
ほうっておくと心不全、狭心症(きょうしんしょう)、心筋梗塞、脳卒中、腎不全、ED(勃起障害)などの病気を誘発することもあります。
実は、夜中に3〜4回目が覚めてトイレに行くのは睡眠時無呼吸症候群の典型的な症状でもあります。
夜間頻尿のほとんどは自力で治せる
夜間頻尿は、ほうっておくとやっかいな症状ですが、ほとんどはよくなります。
具体的な対策は「会陰さすり」と「夕方の早歩き」、生活改善(水分のとりすぎを避け、水分摂取のタイミングを適切にすること、足のむくみを取ることなど)が有効です。
ただし、夜間頻尿の原因が、高血圧などの持病にあることもあります。
ごくまれですが、抗利尿ホルモンの作用システムが壊れて、夜に薄い尿がたくさん出る病気もあります。
また、生まれつき抗利尿ホルモンの分泌が悪い病気もあります。
セルフケアで改善しない場合、このようなケースも考えられるので、泌尿器科を受診してください。
※本稿は、『頻尿・尿もれ 自力でできるリセット法』(アスコム)の一部を再編集したものです。