「夫は妻より稼ぐことに幸せを感じる」最新研究で判明! いまだ世界に根付くマッチョ的な“大黒柱願望”

2020年12月14日(月)14時0分 tocana

 今回のコロナ禍においては2人とも在宅勤務となった共働きのカップルもいた(いる)のではないだろうか。コロナをきっかけに何かと働き方を考えさせられる事態を迎えているが、イギリスの最新の研究で、妻よりも稼ぎが多い夫は生活の満足度が高いことが報告されている。夫の多くは、やはり“大黒柱”でありたいという考えでいるようだ。


■男性は“大黒柱”でありたいと望む


 働き方の多様化が進み、男女間の賃金ギャップも改善されつつある。そして収入の実態もさまざまで、フルタイムで働く男性が標準であったこれまでの一般的なイメージでは推し量れなくなってきているようだ。


 ひと昔前よりは女性の方が稼ぎが良いというカップルが確実に増えていると思われるが、それでも多くの男性はパートナーよりも多く稼ぐ“大黒柱”でいられることが人生の心のよりどころになっているようだ。


 英・ロンドン大学の研究チームが2020年10月に「Work, Employment and Society」で発表した研究では、イギリス世帯縦断調査(UKHLS)の各種データを分析して、イギリス人の夫は自分よりも稼ぎのよい妻がいると、生活の満足度(well-being)が低下することを報告している。


 かねてより存在しているパートナーの賃金格差(partner pay gap、PPG)は当然ながら改善されるべきだが、しかし男性側には自分が一家の稼ぎ手であらねばならないという根強い思い込みがあることが浮き彫りになっている。判明した傾向は以下の通りだ。


●世帯収入において男性の稼ぎが占める割合が増えるほどに男性の生活満足度が高まる。


●女性の場合、収入の割合の変化は生活の満足度に影響を与えない。


●妻の収入に及ばない夫は、妻より稼いでいる夫、妻と稼ぎが一緒の夫よりも平均的な生活満足度が低いと報告している。このような違いは女性には見られない。


 今回の研究はパートナーの賃金格差の維持におけるミクロ社会的な対人関係の力学に焦点を当て、パートナーの賃金格差が女性と男性の心理的幸福に与える影響を分析した。


 分析により、性役割のアイデンティティ、家庭内での地位の獲得、それに幸福度の間の関係を明らかにし、共働き家庭における規範的・構造的な役割への新しい洞察を提供することが期待されている。


 UKHLSの複数のデータを使用して、カップル内の所得格差の最近の変化と労働市場の最近の変化の影響を調べ、潜在的な人生の満足度の予測因子を割り出した。


 分析は、パートナーの賃金格差の維持における男女の規範的役割について、説得力のある証拠を提供するものになった。男性は世帯収入割合の増加から「心理的配当」を得て、女性のパートナーの方が多く稼いだときに「心理的ペナルティ」を受けることがわかったのだ。



■“マッチョ的な信念”をなくすことはできるのか


 賃金の男女格差は是正されなければならないのは言うまでもないことだが、世の多くの男性の心理を考慮すると、男性の稼ぎが多いほうがカップル関係はうまくいきやすいということにもなる。


 ロンドン大学社会学部の副学長で論文主筆のヴァネッサ・ガッシュ氏は「これらの調査結果は、パートナーの賃金格差が男性の稼ぎの多さによって強化またはサポートされていることを示唆しています」と語る。


「男女平等に向けた漸進的な変化を求める政策アジェンダは、労働市場における性別の多様な傾向を明確に認識する必要があります。男性は妻よりも収入が少ないときに苦しむことがわかりましたが、夫の稼ぎは女性の主観的な幸福には影響を受けないようです」(ヴァネッサ・ガッシュ氏)


 夫は自分の稼ぎが妻よりも低いことでメンタルにダメージを受けるのだが、妻のほうは稼ぎの割合がどうであれ気にならないということは、カップル関係を良好に保つという観点からは夫を立てる“内助の功”という伝統的な妻の役割が見直されることになるのかもしれない。


 しかし、そうだからといって優秀な女性勤労者が低賃金でいいはずはない。生産活動において人口の半分を占める女性の能力を活用できなければ、国家的な損失にもつながるだろう。男は一家の“大黒柱”であるというある種の“マッチョ的な信念”を、これから先もまた長い時間をかけて少しずつ削り落としていくしかないように思えるがどうだろうか。


参考:「Phys.org」ほか

tocana

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