ラーメン官僚が“2023年の主役級”と推す注目店『Japanese Ramen五感』(池袋)がスゴい理由

2023年12月22日(金)10時49分 食楽web


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 東京・池袋の春日通り沿いに、今年最大級のラーメン注目店が誕生しました。それが『Japanese Ramen五感』です。

 場所は、都内のラーメン好きであれば知っているであろう、『麺屋六感堂』(※1)の跡地。さて、そんな『五感』を切り盛りするのは奥地守店主。『西麻布五行』(乃木坂 ※閉店)にてアルバイトに励み、2009年に『一風堂』等を経営する力の源カンパニーへと入社。12年間にわたり商品開発や店舗経営の第一線に立ち続けた、プロ中のプロです。

(※1)『麺屋六感堂』は、2022年9月、2019年に池袋駅西口にオープンした2号店『中華そば六感堂』をフルリニューアルする形で統合。現在、『Rock’anDo』として元気に営業中

 折しも、ラーメンマニアの間では、これまでの客観的事実の蓄積により経験知として、「力の源カンパニー出身者の独立開業店舗は、ハイレベルなラーメンを提供する確率が有意に高い」といった認識が、そこはかとなく共有されています。

『Japanese Ramen五感』も例に漏れず、先行して店舗へと足を運ばれた複数のラーメンマニアからの評判も、押し並べて上々だったところ。「遠からぬ内に、記帳制や整理券制が導入されるほどの大人気店になるだろう。それくらいずば抜けた逸材」と、激賞する者もいたほど。

 私も、ラーメンマニアのはしくれ。この注目店の存在を無視できるはずもなく、居ても立ってもいられなくなり、2度にわたって訪問した次第です。

 不幸になる人が現れないよう、「要注意事項」をアナウンスさせていただきます。同店へと足を運ぶに当たっては、営業開始時間を目安にしてはいけません。

 私がこのコラムを書いている2023年11月現在、『五感』は記帳制(※2)を採用しています。開業当初は、店前を先頭に30名以上もの大行列が発生し、入店するまでに2時間以上もの時間を要することもザラでしたが、混雑緩和を図るべく、平日休日を問わず記帳制を導入。

(※2)記帳制とは……店に並んだ順でなく、ウェイティングボード上の紙に名前を記帳した順番に、店へと案内されるシステム。店舗によってルールは異なるが、記帳すれば店側から訪問目処時刻が告げられ、その時刻が訪れるまでは、店の前から離れられる(=自由に行動できる)。大行列店が、行列対策の一環として採用するケースが多い。

 記帳は、午前9時半または10時頃から開始されます(店舗SNSにて告知あり)が、記帳開始の段階で、すでに数十名規模の“記帳のための行列”が発生します。同店が1日当たりで提供可能なラーメンの杯数は64杯と、決して多くはありません。このため、記帳開始直後の段階でラーメンが完売するという異例の事態(=営業開始時間に訪問してもラーメンが食べられない)が恒常的に発生している状況です。


2023年4月12日オープン。すべてにおいて均整が取れた、優美な和テイストの店舗外観

 なので『五感』のラーメンを確実に実食するためには、朝8時台、できれば8時半までに店頭へと辿り着くことが必須。せっかくお店へと足を運んだのに、振られてしまっては元も子もありませんから。

 と、こんな途轍もなく高いハードルを乗り越えてようやく、訪問客は『五感』の扉の前に立つことが許されます。

完成度の高さに驚愕!「醤油らぁめん」と「塩らぁめん」


店内は、カウンターのみ8席。厨房を囲むコの字型になっていてライブ感満載

 現在、『五感』が提供する麺メニューは、「醤油らぁめん」1200円、「塩らぁめん」1300円、「つけめん(醤油)」1350円の3種類。券売機左側から「醤油」「塩」「つけ」の順に並び、「つけめん」は数量限定です。

 最もシンプルな基本メニューでも、価格は4桁の大台に乗りますが、私が知る限り、同店のラーメンについて「値段が高過ぎる」といった声を耳にしたことはありません。むしろ聞こえてくるのは「この価格でご提供いただき有難うございます」という言葉ばかりです。


「醤油らぁめん」1200円。連食は禁止。しかしがんばって2度は足を運んで、「醤油らぁめん」と「塩らぁめん」の両方を味わってもらいたい

 「うちでは純国産のラーメンを提供しています。食は人類の未来を創るエネルギー源。この時代の日本に生を受けたことに感謝し、素材を育んでくださる生産者の方々と共に『美味しいもの』をつくり上げていきたい。そんな想いをカタチにするため、使用する丼は一点一点、形状・色合いが異なるものを用い、ラーメンを構成する素材も、すべて国産品で統一しています」と店主。

 そう奥地店主が語る通り、眼前に供された1杯は、ビジュアルをひと目見ただけで、凡百の淡麗ラーメンとは次元がまるで異なることが見て取れるもの。ある程度の食べ歩き経験を重ねたマニアであれば、そのスープの色合いだけで、その発色の美しさに埋めがたい卓越性を見出すことができるはずです。


「塩らぁめん」1300円

 スープから立ち上る香りの麗しさも尋常ではありません。スープに用いる様々な素材の香りが絶妙な塩梅で融合し、骨太な一本の柱と化して鼻腔を心地良く刺激。嗅ぎ取った刹那、恍惚の境地に陥ってしまうほど妖艶な色気を感じる香気です。

 スープは、店主が全意識を集中させて、比内地鶏・みやざき地頭鶏・名古屋コーチンなど、全国各地から厳選した地鶏からうま味の粋のみを切り出した動物系出汁と、天然ものの蜆・浅利・蛤・貝柱などの滋味を凝縮させた魚介出汁(貝出汁)とを、羅臼昆布で風味にさらなる厚みを加えながら重ね合わせたもの。


スープ素材

 もちろん、両者をただ単純に合体させたものではありません。開発に当たり、店主はタレと出汁の相性の善し悪しを徹底的に研究。「醤油」は鶏成分を相対的に増やし、「塩」は鶏と貝とを拮抗させるなど、「醤油」と「塩」とで、使用する出汁のバランスに変化をつけています。


「塩らぁめん」の美しい黄金色のスープ

 そうして完成したスープは、すする度に、山海の恵みに由来する滋味が舌上で活き活きと躍動。「醤油」は、複数の貝類が手を結び土台となって鶏のうま味を際立たせる構成、「塩」は、鶏と貝の成分がひとつの大きなうま味の真円を描く構成となっています。

 上質な風味が鮮烈な記憶を刻み込むタレの後押しも相まって、一度手を付けたら最後、レンゲを持つ手を止めることは不可能。タッパーに入れて持ち帰りたくなるほど驚異的な完成度の高さを誇ります。


「醤油らぁめん」「塩らぁめん」で異なる麺を使用

 このスープに合わせるのが、都内の名門製麺所『大成食品』へと特注した、国産小麦のみを用いて作られた中細ストレート麺(※3)。素材感豊かなスープの風味を、寸分も損なうことなくダイレクトに食べ手へと伝え切る「このスープにしてこの麺あり」の傑作。すすり心地が軽やかで柳枝のようにしなやかな麺は、どれだけすすっても飽きることがありません。

(※3)「つけめん」は、太麺(平打ち)を使用。また、「塩らぁめん」も、好みに応じて太麺(平打ち)へと変更可能


各種チャーシュー。左から特上で使用される近江鴨のロース、鶏胸肉のチャーシュー、黒豚肩ロースのチャーシュー

 チャーシュー、ワンタン等のトッピングも、妥協が介入する余地のない完璧な仕上がりです。炭火焼きの手法によりじっくりと火入れを施した豚チャーシュー、2度の炭火焼きで香ばしく仕上げた鶏ムネ肉、岩手鴨のミンチを贅沢に使用したワンタンなど、店主曰く「素材本来の持ち味を最大限活かすために、シンプルな味付け、香り付けを意識」して作られたトッピングは、いずれも、一品ものとしても十分通用するほど高水準。

「ラーメンは作る上で変数が多い食べ物。スープ、油、トッピングなど、ラーメンを構成するどの要素も、その都度、調整を加えなければ同じ味わいには仕上がりません。レシピも日々刻々と変化します。なので臨機応変に、新たな素材を随時採り入れることなどで対応しています。これからも、日本の食材を駆使しながら、お客さんの五感が悦ぶラーメンを紡いでいきたいと思います」と、抱負を語る奥地店主。

 2023年の都内ラーメンシーンにおける主役級実力店と目される『五感』。今後も、その動向から目が離せそうにありません。

奥地守店主のプロフィール

・2009年、『力の源カンパニー』へと入社。同社の社員として、12年間にわたり、人材採用、商品開発、開発した商品の現場への導入、店舗経営に関する業務等に携わったが、「何の束縛もなく自由に、自身が思い描く理想の醤油ラーメンを作りたい」との思いが高じ、2023年4月12日、池袋の地に『Japanese Ramen五感』を開業。

・職人としてラーメンを手掛ける傍ら、「淡麗醤油ラーメン愛好家」の顔も持ち合わせる。趣味として「淡麗醤油ラーメン」の食べ歩きを行っている過程で、神奈川県湯河原の名店『飯田商店』の1杯と出逢い感動。その時に抱いた「何回口にしても美味しいと感じられる1杯とはこれだ!」という感覚は、今でもまざまざと思い返せるほど鮮烈で、この感覚を、ラーメンを作る際の羅針盤に据えている。

●SHOP INFO

店名:Japanese Ramen五感

住:東京都豊島区東池袋2-57-2 コスモ東池袋 101
TEL:非公開
営:11:30〜15:00(※記帳制 2023年12月14日現在)
休:月曜、火曜(※年末年始は12/29〜1/9までお休みの予定)

●著者プロフィール

田中一明
「フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。

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