未来の内航船員を目指して - 沖縄水産の生徒が進路相談会に参加、イマドキの生徒たちの特徴は?

2024年12月24日(火)18時8分 マイナビニュース


沖縄県でも、内航船員の募集が積極的に行われている。沖縄県立武道館では12月19日、沖縄県立沖縄水産高等学校および沖縄県立真和志高等学校の生徒を対象にした進路相談会が開催。海運業のアキ・マリン、RORO船の栗林マリタイムといった企業がブースを構え、生徒たちに事業内容を説明した。
○どんな企業が参加した?
今回の進路相談会には、大学・短大が14校、専門学校が71校、企業が28社参加。内航海運業界からは7社が参加している。
アキ・マリンでは、鉄鋼製品をはじめとした産業資材などの貨物を海上輸送している。ブースにはこの日、沖縄水産の1年生が11人、2年生が18人も来てくれたという。ちなみに同校からは昨年(2023年)1名の女子生徒が入社した。担当者は「先輩が活躍している会社ということで、現役の子たちも安心してもらえるのでは」と話す。
「初任給は手取りで25万円。貨物船なら3か月の乗船で1か月のお休みが取得できます」と担当者。メリットを伝えたあとで、デメリットとしては「たとえば夜に役が回ってきたら寝不足になります。世間では働き方改革と言っておりますが、弊社ではご飯を食べる時間も不規則になるし、ほかの船員と性格が合う合わないこともあるかも知れません」。ただ船種が多いことから、乗る船を変えることもできます、とした。
栗林マリタイムでは船舶管理業のほか、船舶貸渡業、船員派遣業、船主業務などを行っている。同社でもここ最近、沖縄水産の卒業生が入社しているという。生徒たちには、若い世代(20代〜)の船員が多くて働きやすいこと、そして2か月の乗船で1か月の休暇が取得できるメリットもアピール。さらには大型船を扱っており、船内が広々としていること、船員1人ひとりにバス・トイレ付きの綺麗な個室が割り当てられることも魅力として伝えた。
そのうえで担当者は「今回の進路相談会は1〜2年生が対象。あくまで生徒に判断材料をいくつか示すにとどまるでしょう」と冷静に話す。毎年、夏頃に学校を訪問しているそうで「その際に大型船に乗りたい子を集めてもらい、もっと詳しい話をしています」とした。
イイノガストランスポートは、営業から船舶の所有、保守・管理、船員配乗までワンストップで行う総合輸送サービス企業。担当者は、同社の強みとして「福利厚生の充実、給料が良いこと、そして教育環境が整っていることを伝えています」と明かす。
現在、女性も10名ほど活躍しており「新造船には女性専用の区画も用意しています」と担当者。そして「昨年も沖縄水産から本科生が1名入社してくれました。海技免許の取得に向けた補助もしているので、そのあたりもアピールしています」と話す。
このほか、海洋工事(クレーン船)を行う深田サルベージ建設、輸送(配送ドライバー、海上輸送)を行うりゅうせき、調査船・実習船の乗組員の業務の日本海洋事業、日本の海を巡る練習船船員の仕事の独立行政法人海技教育機構がブースを連ねた。
○イマドキの生徒たちの特徴は?
沖縄水産高校の當間長(とうま ひさし)先生に話を聞いた。今回の進路相談会には、同校の1〜2年生が450名ほど参加している。
「沖縄水産高校の生徒たちは、進路を決定する時期が遅め。3年生になっても、具体的な進路が決まらない子も珍しくないんです。そこで学校でも、進路相談会のようなきっかけをいくつか作っています。早い段階から企業の担当者に話を聞いておくことは有意義に思います」と當間先生。いろんな情報に触れて視野を広げてもらえるように、就職志望の生徒には企業2社と学校1校、進学志望の生徒には企業1社と学校2校から話を聞くよう呼びかけた。
ちなみに本科の海洋技術科(航海類型、機関類型)の生徒たちの8割ほどが内航海運をはじめとする船舶に関わる仕事に就いている。「最近は漁業関係に進む生徒は少なくなってきました」と當間先生。
最近の生徒たちには、どんな傾向があるのだろう?「長い航海はどちらかと言うと敬遠気味で、毎日、家に帰ることのできる仕事が選ばれがちです。また、給料より休みの日数を重視する印象がありますね」と分析する。あとは高校の先輩、あるいは沖縄出身の社員がいる会社が強いという。
そして、出世したがらない傾向も。「実際にうちの卒業生にも、就職して5年働き、実務経験の年数は充分に足りているのに上の資格を取得したがらない、といった子たちがいます。企業が促しても『これ以上は良いです』と断られてしまうんだそう。ある企業の担当者が、そんな風に嘆いていました」。
あらためて、進路相談会を「情報収集の場にしてもらえたら」と當間先生。大学に進むにしても、先に企業・職業を知ったうえで進学したら良い、と続ける。
ちなみに、本当なら保護者にも来てほしかったそうだ。「沖縄の人たちは、子どもを県外に出したがらないんです。地元志向が強い。生徒が『県外の会社や大学に行きたい』と就職や進学を希望しても、親の意向で県内の企業・学校に進路が変更されてしまうことも珍しくありません。もちろん、必ずしも県外の企業や学校の方が優れているとは思いません。でも若いうちに外から沖縄を見ることも大事です。親御さんたちにも、こうした機会に子どもと一緒になって情報収集してもらい、いろんな可能性があることを分かってもらえたら良いですね」と語った。
近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら

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