カラスの賢さに新たな証拠、図形の規則性を直感で見抜くことが判明
2025年4月20日(日)8時0分 カラパイア
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カラスが賢いことはよく知られているが、それを裏付ける新たな証拠が発見された。なんと彼らは図形の規則性を理解できるのだという。
星型の尖った図形の中にあるなめらかな図形、1つの角度が異様に鋭い四角形など、カラスは図形の中にある違和感を的確に見抜くことができるのだ。
こうした図形や空間の性質のことを「幾何学」という。もちろんカラスは学校の授業で幾何学を学んだことなどない。
彼らは幾何学的な規則性を直感的に理解てきる。これはこれまで私たち人間にしかできない高度な機能とされてきたが、その常識が鳥類であるカラスによって覆されたのだ。
この研究は『Science Advances[https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adt3718]』(2025年4月11日付)に掲載されたものだ。
人間が直感的に理解する幾何学的な性質とは?
人間は幾何学的な性質を理解できる。幾何学といっても、数学の時間に教わるような小難しいことではない。
例えばまっすぐな線の中に曲がった線があれば違和感を感じるし、平行に引いたはずの線がずれていれば気持ち悪い。
そうした感覚は人間に生まれつきあるもので、小さな子供は左右対称な顔を好むし、文字を覚える前に長方形を描く。
ここでの幾何学的な性質とは、こうした直線・直角・平行といった図形や空間などに備わった性質のこと。私たちはこれを直感的に理解する。
これまでこの感覚は人間だけのものとされてきたが、今回の研究ではカラスにもその感覚があることが明らかとなった。
今回の実験ではハシボソガラスを訓練して、6つの図形の中にある仲間はずれを選ばせることに成功した
幾何学的な性質を理解するカラス
ドイツ、テュービンゲン大学の研究チームが行ったのは、ハシボソガラスに図形を見せて、”仲間はずれ”を当てさせるという実験だ。
最初に行われたのは、赤い物体の中にある緑色の物体を選んだり、尖った星型の図形の中にあるなめらかな月の図形など、比較的簡単に区別できるものだった。
これをクリアしたカラスたちには、さらに難易度の高い仲間はずれが用意された。例えば、正方形や台形など、平行性・対称性・直交性・辺の等長性・角の等角性などに規則性がある図形の中から、不規則な仲間はずれを探すのだ。
当然のことながら、角度や対称性といった概念をカラスが学んだことは一度もない。それでも実験のカラスたちは、仲間はずれをきちんと選び出したのである。すなわち幾何学的な規則性を直感的に感じとったのだ。
カラスが挑んだのはこんな仲間はずれクイズだ。もしかしたら人間でも難しいかもしれない
ますます曖昧になる動物と人間の境界
従来、こうした幾何学的な性質の理解は、人間ならではのものとされてきた。それは霊長類であってすらも当然のものではない。
2021年の研究[https://www.pnas.org/doi/abs/10.1073/pnas.2023123118]では、ヒヒを訓練して今回と同様のことを行わせたが、結局うまくいかなかった。
カラスは非常に高い知能を持つことで知られている。道具を巧みに使いこなし[https://karapaia.com/archives/52131331.html]、自分の心を内省[https://karapaia.com/archives/52295076.html]し、ゼロの概念すら理解[https://karapaia.com/archives/52303314.html]する。
にもかかわらず、カラスの脳は人間の脳とは大きく違う。
哺乳類の抽象的思考を担う6層構造の大脳新皮質がないのだ。その代わりに、「外套(がいとう)」と呼ばれる部分がその役割を担う。
このように脳の構造が私たちとは大きく違うカラスは、なぜ幾何学的な感覚を身につけることになったのだろうか?
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確かなことは不明だ。だが、空を飛び、細い枝などにとまるカラスは、形状の対称性や不規則さを認識することが生存に有利に働いたのかもしれない。
いずれにせよ、今わかることは、幾何学的な感覚に哺乳類の脳はいらないということだ。進化は想像以上に柔軟で、異なるハードウェアであっても同じ能力を発達させることができた。
数を数えられるミツバチ[https://karapaia.com/archives/51261264.html]、名前で呼び合うイルカ[https://karapaia.com/archives/52310144.html]、鏡に映った己を認識[https://karapaia.com/archives/453846.html]する魚など、これまで人間ならではとされてきた能力がほかの動物にもあることが次々と確認されている。
今回のカラスの事例もその1つ。きっと、こうした人間がそれほど特別な存在ではなかったことを裏付ける発見は、今後もどんどん発表されることだろう。
References: Crows recognize geometric regularity[https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adt3718] / Crows seem to understand geometry — and we thought only humans could[https://www.zmescience.com/science/neurology-science/crows-understand-geometry/]