「辛そうで辛くない少し辛いラー油」「洋食屋さんのただただおいしいドレッシング」…商品名の〈ラノベ化〉が広がる納得の理由

2025年3月3日(月)8時0分 ダイヤモンドオンライン

「辛そうで辛くない少し辛いラー油」「洋食屋さんのただただおいしいドレッシング」…商品名の〈ラノベ化〉が広がる納得の理由

大ヒット商品の「辛そうで辛くない少し辛いラー油」(桃屋のホームページよりキャプチャ)

長いネーミング、あるいは説明的な商品名が珍しいものではなくなってから随分たつように思う。ブームはすぐに去るかと思いきや、意外にも人の心に残り続けている。心の中で復唱してしまうことで人の記憶に焼き付くのだろうか。過去にあった抜群なネーミングの商品を振り返ってみたい。(フリーライター 武藤弘樹)

巧みなネーミングゆえにヒットした商品たち

 SNS隆盛のこの時代、ヒット商品が生まれるプロセスもそれに準じたものになっている。一昔前は広告費をしっかり使ってテレビやラジオで宣伝するのが王道だったが、今は口コミが強い。その中でも消費者にインパクトを与えられる商品は口コミにのぼりやすく、インパクトを与える方法のひとつにネーミングがある。

 商品の名前は商品のイメージ=ブランドに直結するので、そちらを意識して名付けが行われることが多い。しかし中にはブランドを気にせず、好奇心の喚起やインパクト、および商品の説明にネーミングを全振りしたものもあって、それがしばしばヒット商品となる。

 2023年8月に理研ビタミンから発売された「インドカレー屋さんの謎ドレッシング」は、カルディのオンラインストアで即完売になるといった人気を博した。目を引くネーミングの商品は手に取られやすく、そのネーミングの商品を使う体験自体がすでに話題性を伴うものなので、「○○を使ってみた」という口コミがSNSに投稿されやすい。かくして「謎ドレ」という略称も定着し、品薄感から市場の渇望をさらに煽った。

 略称の定着による認知の向上と、品薄感の生々しさ(とそれによって引き起こされる飢餓感)は、SNSによってより強く消費者に伝わった。

 インド人が経営するカレー屋のそもそもが謎に包まれているような雰囲気や、厨房で交わされている異国の言語の会話。そしてその後で決まって出てくるあのドレッシングがかかったサラダはしかし妙においしい——これらのことを、少しユーモアを交えて消費者に共感とともに想起させるネーミングであった。

 ちなみに理研ビタミン、このヒットを踏まえて約1年後に「洋食屋さんのただただおいしいドレッシング」を発売し、これも「ただドレ」と呼ばれてよく売れているようである。店頭での商品のインパクト、やや長めの説明的なネーミング、4文字の略称の認知が功を奏したのであろう。理研ビタミンはその企業名からすでに何やら科学的に健康な商品を開発してくれそうな期待感が漂っているから、現代においてはネーミングに一歩秀でている企業といっていいかもしれない。


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