万博会場でみこし担ぎ和歌山PR、最後の公務に…岸本知事1期目途中の訃報

2025年4月16日(水)9時12分 読売新聞

記者会見する宮崎副知事(左)と北広知事室長(和歌山市で)

 和歌山県知事の岸本周平(きしもと・しゅうへい)氏が15日、敗血症性ショックで亡くなった。68歳だった。1期目途中の突然の訃報ふほう。関係者から悲しみの声が寄せられた。

 「熱い人で県庁のことを考え、職員にとってもありがたい存在だった。在任中には弱い人の立場に立って一人ひとりに寄り添い、笑顔にすることを最優先に取り組まれた」

 同日午前11時過ぎ、県庁で記者会見に臨んだ宮崎泉副知事はこう語った。宮崎副知事は同日から職務代理者を務める。「県政発展のため、多くの貢献をされた。築き上げた歩みを止めることなく、一丸となりやっていきたい」と述べた。

 県によると、岸本氏と連絡がつかなかったため、秘書らが14日に和歌山市の知事公舎を訪問。倒れている岸本氏を見つけた。岸本氏は救急搬送されたが、15日、同市内の病院で息を引き取った。

 岸本氏は11日に腰の痛みを訴えていたという。12日の大阪・関西万博の開会式への出席を取りやめたが、13日の関西パビリオンのオープニングイベントには参加し、和歌山をPRしていた。

 北広理人・知事室長は「万博の現場で声をかけたが、お元気そうだったので、安心していた。開幕初日で意気込みを持って出席されたと思う」と話した。

[評伝]居丈高でない、真剣な対話

 「県民を笑顔にするには、まず職員が笑顔でなければいけない」。知事就任直後から何度も口にしてきた。

 「おにぎりミーティング」と称し、県庁の若手職員らと積極的に昼食を取り、仕事の悩みや趣味の話にも耳を傾けた。職員が能力を発揮しやすい環境づくりを使命とした。カジュアルな服装の職員も増えた。

 予算編成では、元財務官僚の矜持きょうじを示し、「賢いやりくり」を掲げた。既存事業を見直すなどし、限られた予算で公約に掲げた小中学校の給食費の無償化を実現した。県庁は変わりつつあった。

 「唯一の趣味」と冗談交じりに言っていたのが街頭演説。2009年の衆院選で初当選した後も地元に戻れば、街頭に立ち続けた。いつしか党派を超えた「岸本党」が生まれ、選挙で圧倒的な強さをみせた。

 「小学生だった子が、大きくなってまた手を振ってくれるんですよ」。趣味の醍醐だいご味を笑顔で語った。

 知事就任後は警備の問題もあり、タウンミーティングという形で広い県土を飛び回り、現場の声を聞いた。決して居丈高に振る舞わなかった。「それは知りませんでした」「ぜひやりましょう」と目の前の県民と真剣に対話した。

 13日には、大阪・関西万博の会場でみこしを担ぎ、精いっぱいにほほえんだ。それが最後の公務となった。笑顔は職員に継承され、県民に還元される。そう信じている。

(竹内涼)

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