福島・大熊町のイチゴで育てた「甘みのある」羊肉、復興の新名物に…畜産未経験の移住者が飼育

2025年4月17日(木)17時0分 読売新聞

松本さんが飼育する羊たち(3月10日、大熊町で)

 福島県大熊町産のイチゴを餌に育てた羊の肉を「ストロベリーシープ」と名付け、新たな名物にしようと、町内の農業再生を進める「おおくま未来合同会社」の松本龍之さん(54)が取り組んでいる。甘みのある肉質が特徴で、松本さんは「羊で大熊をもっと元気にしていきたい」と話す。町のふるさと納税の返礼品への採用も目指している。(岸本健太郎)

 松本さんは震災後、自身が経営する建設会社の仕事で大熊町の除染や家屋の解体に携わった。両親がいわき市出身。浜通りは子どもの頃から何度も遊びに訪れていた思い出の場所だが、「町にいるのは自分のような建設関係者ばかり」と感じた。新たな魅力を作り、色々な人に町を訪れてもらえるよう、「大熊町の復興の力になりたい」と決意。2022年夏に東京都から移住した。

 羊肉の生産を選んだのは、東京でジンギスカン店を営む知人から「国内で食べられる羊肉で国産は1%未満。希少価値が高い」と聞いたことがきっかけ。「牛や豚より、貴重な羊肉の方が注目されやすい。町の復興にもつながる」と思いついた。

 畜産の経験はなく、約3年前から、羊を飼育する県内外の牧場を訪ね歩き、餌の与え方や飼育場の清掃の仕方などを学んだ。そこで生産者たちが地域の特産品を餌にして、差別化を図っていることも知った。「大熊で育てる羊も同様にすれば特産品の発信力強化にもつながる」。そこで目を付けたのが、大熊町が栽培に力を入れるイチゴだった。

 23年8月、町内で4頭の飼育を開始。同町の農業法人「ネクサスファームおおくま」の協力を受け、規格外のイチゴを乾燥させて飼料にまぜて与えてきた。

 昨年10月、はじめて食肉用に加工した。知人の食肉業者などに試食してもらったところ、「肉に甘みがあり、臭みもない」と評判が良かった。松本さんは町のふるさと納税の返礼品に採用されることも目標にしている。

 将来的には、ジンギスカンなどを提供する飲食店の経営や飼育施設の横に子どもたちが羊たちとふれあえるスペースの開設も計画している。松本さんは「今後、大熊町が羊で有名になって、多くの人が観光で訪れるようになってほしい」と願っている。

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