ハエ幼虫に生ゴミ食べさせ、フンを農作物肥料に…「価値付けられればゴミではなくなる」
2025年4月19日(土)18時33分 読売新聞
商品化した肥料を手に笑顔を見せる佐藤准教授(3月28日、山形県鶴岡市若葉町で)
給食センターなどから出る生ゴミをハエの一種「アメリカミズアブ」の幼虫に食べさせることで食品廃棄物を減らす試みに、山形大農学部の佐藤智准教授(52)(応用生態学)が取り組んでいる。育った幼虫を家畜などの餌にし、さらに幼虫のフンは肥料になる。同大では、フンから作った農作物肥料の試験販売も始まっている。(森田純矢)
雑食性に注目
アメリカミズアブの成虫は体長1・5センチほどで、北海道を除く日本各地に生息する。人を刺すことはなく、病気もほとんど媒介しないが、動物の死骸やゴミ置き場の生ゴミ周辺を飛び回る様子から、「不快害虫」として嫌われている。
佐藤准教授が注目したのは、硬いもの以外は何でも食べるという幼虫の雑食性。
2021年6月から農学部敷地内で捕まえたアメリカミズアブを用い、幼虫のフンを肥料として活用する実験を開始。給食センターや病院、同大生協の売店などから出た約7・5トンの生ゴミを幼虫に食べさせ、集まった約3トンのフンを肥料にしてきた。
幼虫は様々な栄養素を取り込むため、フンは窒素、リン、カリウムなどを豊富に含む。枝豆「だだちゃ豆」や米、ソバなど10種類以上をフンから作った肥料で栽培したところ、化学肥料に匹敵する効果があり、収穫した農作物の味も遜色なかった。佐藤准教授は「廃棄物の削減だけでなく、ゴミを焼却する二酸化炭素も少なくできる」と話す。
資源循環、試験販売も
23年からは、学校や病院と連携し、資源の循環を行っている。荘内病院(山形県鶴岡市)の調理場で出た野菜のくずを引き取り、くずを食べた幼虫のフンを肥料にする。県立庄内農業高校(同)の生徒が、肥料を使ってジャガイモを栽培。病院で入院食の食材として使われた。24年には全体の栽培量を増やしたほか、新たに栽培を始めたタマネギは同市の給食センターに提供した。
研究は同年、食品廃棄物の削減を支援する環境省のモデル事業に採択された。補助金を使い、研究室近くに24時間利用可能な生ゴミ専用の回収ポストを設置。約5か月間、学生と教職員計50人が自宅から計500キロ・グラムの生ゴミを持ち込んだ。フンの肥料を使って生産した米を、ゴミを持ち寄った人たちに還元した。
今年3月には、フンから作った肥料「はえっぺ」(税込み330円)の試験販売を、同大農学部の生協売店で始めた。90グラム入りで、一般的なプランター15〜20個分の栽培に利用できるという。佐藤准教授は「邪魔な存在のゴミに価値を付けられれば、欲しがる人も増え、ゴミではなくなる。地域経済の発展にも貢献できる」と期待を膨らませている。