「月30万円でどうだ?」愛人スキャンダルで総理大臣を“たった69日”でやめた世界でも珍しい「政治家の正体」

2025年4月20日(日)18時0分 文春オンライン

「月30万円でどうだ?」——愛人契約を結ぶための口説き文句が巷では大ウケしたことも…。愛人スキャンダルによって、たった69日で日本のトップの座から降りた政治家とは? 報道カメラマンとして活躍する橋本昇氏の新刊『 追想の現場 』(鉄人社/高木瑞穂編)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/ 後編 を読む)



愛人スキャンダルで総理大臣をやめた政治家 ©getty


◆◆◆


 政治資金規正法違反、裏金問題、議員秘書給与詐欺事件、児童保護法違反、不倫、果てはパパ活、脱税など──古今東西、政治家が起こした犯罪やモラル欠如は、与野党の垣根を越えて行きつくところまで行った。


 まざまざと思い出す。ある議員は泣く泣く離党、はたまた辞職、落選。社会的制裁を受けるのは当然の報いと言えばその通り。だが、いま、まさに問われているのは政治家自身の人格、人間性そのものだ。


 私がかつて政治を取材し、この目で見たスキャンダル国会議員の責任の取り方はさまざまだった。


月30万円でどうだ?


 1989年8月、リクルート汚職問題の責任をとって首相した竹下登氏に替わって首相になったのが、宇野宗佑氏だった。宇野氏はこれまで身辺きれいな政治家と見られていたが、そんな彼にもスキャンダルがあった。


 宇野氏は週刊誌によって過去の女性問題をすっぱ抜かれた。宇野氏の相手は東京・神楽坂の芸者Nさん(当時40歳)。それはNさん自身による実名での告発から始まった。Nさんによれば、宇野氏はNさんのことをたいそう気に入り、愛人にした。二人の関係が終わる1986年3月まで、宇野氏から300万円の金銭授受があったという。


 宇野氏がNさんに3本の指を掲げて関係を迫ったとか、云々の話は当時、巷で大ウケした。色情盛ん。その宇野氏が一国の総理大臣に選ばれたのだ。


 Nさんはよほど宇野氏に恨みを持っていたのか告発に踏み切った。社会には「政治家とはそんなものだ。妾がいても不思議はない」と、女性問題に妙な寛容性があったが、国民の宇野氏を見る目は一転、厳しかった。


 この週刊誌報道は、はじめは新聞・テレビには無視されたが、アメリカのワシントンポストがこの醜聞を記事にするとたちまちマスコミも騒ぎ始めた。Nさんも、テレビ出演した。


 勇気ある告発だった。ちなみにその後彼女は出家し、尼僧となったという。


 このスキャンダルのなかで行われた参議院選挙で自民党は、当然のごとく敗北した。自民党本部で行われた敗北記者会見で、宇野氏は「選挙戦敗北の責任をとって総理総裁を辞任する」と語った。総理在任わずか69日だった。

〈 ホステスとの愛人関係を「500万円の手切れ金」で解消⇒ 彼女の母親にも「肉体関係」を迫ったことも…性欲に溺れた政治家・山崎拓(88)の失敗 〉へ続く


(橋本 昇,高木 瑞穂/Webオリジナル(外部転載))

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