日本の若者は「過剰競争で傷ついている」 死去したローマ教皇が東京ドームで訴えたこと

2025年4月22日(火)17時15分 J-CASTニュース

2025年4月21日に死去したローマ・カトリック教会のトップ、フランシスコ教皇は19年11月に日本を訪問している。教皇の訪日は1981年2月の故ヨハネ・パウロ2世以来、約38年ぶり2回目だった。

フランシスコ教皇にとって最初で最後になった訪日では、被爆地の長崎と広島で主に核廃絶を訴えた。その後、東京で行ったミサで、日本の格差や貧困問題を念頭に、若者が置かれた困難な環境にも言及した。

ザビエルと同じイエズス会出身、青年期は日本での布教を志願

教皇は、日本にキリスト教を伝えた宣教師、フランシスコ・ザビエルと同じイエズス会出身。青年期には日本での布教を志願するほどだったが、健康上の問題で実現しなかった。

石破茂首相が出した談話では、教皇と日本の関係について

「初のイエズス会出身のローマ教皇として、フランシスコ・ザビエルのように日本での布教活動を長らく希望されていました」

と触れた上で、19年の訪日を

「広島及び長崎を訪問し、平和への力強いメッセージを発信してくださりました」

とたたえた。

教皇は広島、長崎に続いて東京を訪問。東京ドーム(東京都文京区)でミサを行い、5万人(主催者発表)が参列した。

説教では、ドームのミサに先立って参加した東京カテドラル聖マリア大聖堂(東京都文京区)での「青年との集い」での出来事に言及。「日本は経済的には高度に発展した社会」だとする一方で、「今朝の若者たちとの集いの中で気づかされたこと」として、次のように現状を指摘した。

「社会的に孤立している人が決して少なくなく、いのちの意味が分からず、自分の存在の意味を見いだせず、社会からはみ出していると感じている。家庭、学校、共同体は、一人ひとりが支えを見いだし、また、他者を支える場であるべきなのに、利益と効率を追求する過剰な競争意識によって、ますます傷ついている。多くの人が、当惑し不安を感じている。過剰な要求や、平和と安定を奪う数々の不安によって打ちのめされている」

主は「日々の選択について振り返るよう招いておられる」

その上で、「明日のことまで思い悩むな」(マタイによる福音書)という聖書の一節を引用しながら、

「これは、周りで起きていることに無関心であれと言っているのでも、自分の日々の責任に対して無責任であれと言っているのでもない」

と話し、その意義を

「逆に、より広い意味のある展望に心を開き、そこに自分にとってもっとも大切なことを見つけ、主と同じ方向に目を向けるための余地を作るようにという励ましなのだ」

などと訴えた。

教皇は、

「主は、食料や衣服といった必需品が重要ではないとおっしゃっているのではない」

とも。その意味を次のように説明した。

「むしろ、わたしたちの日々の選択について振り返るよう招いておられるのだ。何としても、しかも命をかけてまで成功を追求したいという思いに心がとらわれ、孤立してしまわないようにだ」

(J-CASTニュース編集委員 兼 副編集長 工藤博司)

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