中学受験の国語で質問、主人公は何年生?→先生の答えに「そう来たか!」と納得した

2025年4月23日(水)5時30分 ダイヤモンドオンライン

中学受験の国語で質問、主人公は何年生?→先生の答えに「そう来たか!」と納得した

『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の受験マンガ『ドラゴン桜2』を題材に、現役東大生(文科二類)の土田淳真が教育と受験の今を読み解く連載「ドラゴン桜2で学ぶホンネの教育論」。第46回は、「読解問題のタイトルと本文」について考える。

ラノベは親切?

 読解力向上のためには文章で繰り返されている「キーワード」を見つけることが大事だと、国語科特別講師の太宰府治は語る。その中で、キーワードが含まれている代表的な箇所として「タイトル」をあげる。

 タイトルといえば、中学受験時に、先生からこんな出題をされたことがあった。600文字くらいが抜粋された小説の読解問題に取り組んでいたときのことである。「さて、主人公は何年生だと思う?」。

 抜粋された文章の範囲からは、思春期だろうということ以上の情報はなく、直接的に主人公が何歳かはわからない。そこで先生が言った。「中学2、3年生でしょうね。だって、タイトルに『十四歳の夏休み』って書いてあるから」。正確なタイトルまでは覚えていないが、このやりとりは深く記憶に残っている。

 通常の入試問題では、文章のタイトルは最初か最後に少し触れられる程度で、あまりその詳細を気にすることはない。多くの受験生が見ないからこそ、背景知識として知っておくべき情報や、問題文の筆者が強調したい事柄が含まれていた場合には大きなアドバンテージになる。

 このように、タイトルは本文と別の位置にある情報でありながら、周辺情報を読み取る手がかりとなる。タイトルには内容の要約や象徴が込められていることが多く、ちょっとした手がかりが大きな発見につながることもある。

 特に最近は、ライトノベルなどで「○○が××な件」「△△してみたら□□だった」といったタイトルが多く見られる。こうした形式は、物語の初期設定が明示されており、読む前からおおまかな内容がつかめる点で親切だ。読者の関心を素早く引くという点で非常に合理的である。

秀逸なタイトルの条件とは

『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

 実際、読解という行為においては、初期設定を共有しておくことが重要だ。論説文では特にそうで、筆者がどんな立場に立って話を進めるのか、どこから議論を始めているのかがわからなければ、内容を正確に理解するのは難しい。だからこそ、明快なタイトルは読み手の助けになる。

 しかし一方で、あえて抽象的で示唆に富んだタイトルをつける文章もある。そうしたタイトルは、本文を読んだあとにもう一度振り返ることで、「なぜこのタイトルだったのか」と考える余地を与えてくれる。これはいわば、文章そのものを離れてタイトルという一段高い視点から眺め直す、メタ認知的な楽しみである。

 秀逸なタイトルには、そうした「もう一段深い読解」の可能性が秘められている。たとえば森博嗣の『すべてがFになる』という作品。「F」とは一体なんのことなのか。単語の頭文字なのか、それとも別の何かを暗示しているのか。最後にその正体が明らかになる時は、快感に近い満足感を得ることができる。

 他にも、諫山創の漫画『進撃の巨人』では、物語中盤でタイトルの真意が明かされる。これにより、物語の方向性が大きく変わってくる。

「名は体を表す」というように、タイトルは文章の性格を映す鏡でもある。その言葉を通して読者は、無意識のうちに文章のトーンやジャンルを予測している。

 明るいのか、重いのか、冷静なのか、情熱的なのか——。タイトルは文章の最初の一言として、強い印象を与える存在なのだ。読む前と読んだ後で2度文章を楽しむ、そんな読解を心がけたい。

『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク

『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク


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