職場の熱中症 予防と迅速な対処が命を守る
2025年4月29日(火)5時0分 読売新聞
暑さが厳しさを増し、熱中症のリスクが高まっている。炎天下だけでなく、屋内での作業でも亡くなる例がある。企業は対策に全力を挙げ、社員の安全を守らねばならない。
厚生労働省は、労働安全衛生法の省令を改正し、6月から全国の企業に対して職場での熱中症対策の強化を義務づける。
熱中症の疑いがある社員らをいち早く見つけ、応急処置や救急搬送につなげられるよう、事前に手順や連絡網などを整えておくことが企業に求められる。そうした体制の整備を怠った場合は、罰金などが科されることになる。
国が企業に対策を促すのは、近年、猛暑で仕事中に倒れる人が後を絶たないからだ。昨年は全国で30人が死亡し、4日以上仕事を休んだ人は1000人を超えた。暑さ対策は今や、労災予防の最重要ポイントの一つである。
建設工事や交通誘導など、直射日光にさらされる屋外作業だけでなく、倉庫内での作業中などに命を落とすケースも多い。作業の性質上、防護衣や防じんマスクを着用しなければならない場合、暑さ対策はより重要になろう。
死者は65歳以上が目立っている。働き手の高齢化により、危険性が増している状況だ。
高温多湿の環境下で、発汗による体温調節がうまくできないと、熱中症になる。体内に熱がこもった状態になり、ふらつきや頭痛、吐き気などの症状が表れる。
まずは予防を徹底することが欠かせない。こまめに休憩を取る、交代制を導入して長時間の勤務を減らす、比較的涼しい朝の時間帯に作業を行う、といった工夫を重ねることが大切だ。
仕事中だと、働き手はどうしても、自分から休憩を取りたい、水分を補給したい、などの事情を訴えるのをためらいがちになる。
企業が現場の状況に目を配り、高温下での作業が続かないように配慮することが求められる。
もし、社員らに熱中症の症状がみられたら、すぐに作業を中断させ、体を冷やすことが重要だ。症状によっては、救急車を呼ぶことも
群馬県など一部の自治体では、公共工事が猛暑による作業の中断で長引いた場合、工期の延長を認める運用を行っている。こうした柔軟な対応も必要だろう。
体が暑さに慣れていないと、熱中症の危険は、より高くなる。新入社員らについては、作業時間などを考慮し、少しずつ暑さに慣れさせるようにしてほしい。