「紫電改343」で戦争末期のパイロットら描いた漫画家・須本壮一さん、作品に込めた「思い」4日に講演
2025年4月30日(水)16時12分 読売新聞
鶉野飛行場資料館を見学する須本さん(右)(3月、兵庫県加西市で)=鶉野平和祈念の碑苑保存会提供
太平洋戦争末期の新鋭戦闘機・紫電改のパイロットたちを描いた戦記漫画「紫電改343」の作者、須本壮一さん(61)(神奈川県)が5月4日午後1時、兵庫県加西市
作品は、本土防衛の切り札として愛媛県の松山基地にエースパイロットが集められ、紫電改に搭乗した「第三四三海軍航空隊」(三四三空)の隊員たちの史実を基にした群像劇。菅野
須本さんは北朝鮮による拉致問題を扱った「めぐみ」など、どの作品も現場で関係者を訪ねて取材を重ねてきた。「紫電改343」執筆前にも、紫電改搭乗中に広島への原爆投下を目撃した本田稔さんや丹波篠山市出身のパイロット笠井智一さん(共に2021年死去)らと会い、様々なエピソードを作中に盛り込んだ。
実機を国内で唯一展示する愛媛県愛南町や、鶉野平和祈念の碑苑保存会が運営する鶉野飛行場資料館(加西市)も訪問。「加西市のボランティアが地元戦史の継承に取り組んできた誠意と熱意を感じた」という。
三四三空では、米軍機との激しい空戦で菅野大尉らが戦死する一方、特攻出撃はなかった。須本さんは「戦場にあって『生死を分けたもの』が強く心に刻まれた」と語る。「生き残ったことで英雄視される人も、非難を浴びる人もいる。時代にのみ込まれた悲劇だけでなく、生き延びる勇気、生き残ることの意味を、彼らの人生を描くことで示したい」
「紫電改343」は2020年から講談社の青年漫画誌「イブニング」で連載したが、同誌は23年に休刊。9巻で完結することになったが、「隊員たちの人生を最後まで描き上げたい」との一心で23年に寄付を呼びかけた。わずか2か月間で約700人のファンらから2100万円を超す資金を調達。今年4月に「完結編」の全4巻を描き上げ、個人出版の形で世に出した。5月からは「戦後編」の執筆に取りかかるという。
今回の講演は、鶉野平和祈念の碑苑保存会の招きで実現。5月4日は、講演会を挟んだ午前10時〜正午と午後2時〜3時30分の2回、会場で完結編を購入した人向けのサイン会も開く。参加にはいずれもsoraかさいの観覧料(高校生以上200円)が必要で、問い合わせは鶉野飛行場資料館(0790・21・9025)へ。