パリの路上に「丸見えの男性用トイレ」が多い衝撃の理由。悪臭がする「花壇付きエコ小便器」も物議

2025年5月6日(火)21時25分 All About

日本に比べて、公衆トイレの数が圧倒的に少ないフランス。そんな中、現地では一風変わった男性用のトイレが登場し、物議を醸しています。今回はフランス在住者がその詳細をご紹介します!(写真は筆者撮影)

海外旅行で困ることといえば、現地でのトイレ問題ではないでしょうか。特にヨーロッパでは、公衆トイレが有料だったり、便座が外れていたり、トイレットペーパーがなかったり……。中には、利用するのに“ちょっとした”勇気が必要なケースもあります。筆者が暮らすフランスも例外ではありません。コンビニがなく、公衆トイレも非常に少ないため、外出時には「どこのトイレに寄ろうか?」と必ず悩んでしまいます。
パリではこうした悩みを少しでも軽減しようと、近年は男性用の「小便器」が次々と登場しています。ところが、これがフランス国内で思わぬ物議を呼ぶことに。フランス在住の筆者が詳しくご紹介します。

パリ五輪でも登場した男性用トイレ

2024年のパリ五輪では、「街中に公衆トイレが少ない!」という声を受けて、競技場近くや人気観光スポット周辺に臨時の仮設トイレが設置されました。
中でも目立っていたのは、「完全オープン型」の男性用トイレ。仕切りや個室のない独立型の小便器で、中央に丸い穴が空けられ、複数人が同時に用を足せるという特徴的なデザインをしています。これらのトイレはパリ五輪が終わった後に全て撤去されました。
利用者からは「問題ない」という声があった一方で、「急いで用を足したいのに、使う勇気が出ない」といった意見もあり、賛否が分かれていたそうです。パリのトイレ事情を象徴する出来事だったと言えますね。
実はフランスでは、こうした前衛的なデザインの男性用トイレがほかにも存在しています。それも臨時ではなく、常設用として新たに設置されたもの。パリでは2018年頃から導入が始まりました。

「花壇」付き!? フランスのエコトイレ

パリに登場したのは、なんと「花壇」付きの男性用トイレ。「ユリトロトワール(uritrottoir)」という名前で、都市部での路上放尿を防ぐために、フランスのデザイン会社が開発しました。
このトイレは24時間利用可能で、尿を「乾燥した藁(わら)に貯めて堆肥に変える」というエコ設計になっています。さらに上部には花壇が付いていて、街の景観を保つための工夫が。また水の量や清掃の手間が減ることで、自治体のコスト削減にもつながるのだそうです。
しかしフランスでは、これが「景観を損ねる」と大きな物議を醸しました。2018年にはパリ市内で5基が設置されたものの、中心部で「住民の反感を買っている」と、現地メディアで大々的に報じられたこともあります。
「ユリトロトワール」は下水管に繋がっていないタンク式で、清掃までに約200回の使用が可能です。当時は予想外に利用者が多かったこともあり、景観問題以上に悪臭の原因になったと報じられました。近隣住民の反発が強かった一方で、実際に使う人が多かったのも事実のようです。
その後、こうした批判が相次いだことを受けて、パリ市内では「ユリトロトワール」を含むほとんどの路上男性用トイレが撤去されました。現在ではフランスの地方都市に一部設置されているとのことですが、路上放尿に関しては今もまったく解決の気配がありません……。ちなみに、パリ市内で路上に放尿すると、68ユーロ(約1万8880円)の罰金が科される可能性があります。

「良くない」「問題ない」意見は2つに分かれる

公衆トイレがとても少ないパリでは、コーヒー代を払って、落ち着いてカフェのトイレを利用する人が多いと感じます。理由はもちろん、「公衆トイレよりカフェの軒数の方が多い」から。
それでも、路上で放尿する人が後を絶たないのがフランスの特徴です。前述したような「丸見え」のトイレでも、公共の道路や建物にされるよりはましなのかもしれません。ただ、人目のある場所で用を足すことに、本当に抵抗はないのでしょうか。
筆者の周囲では、「使いたくない」「問題ない」と、意見が2つに分かれていました。「使いたくない」派は、やはり“見られたくない”という理由が大きく、「問題ない」派は、路上放尿を防げるという点を評価しているようです。
とはいえ、小便器にせよ路上放尿にせよ、通りがかった人は目のやり場に困ってしまいます。女性からも男性からも賛否が分かれるこの「丸見え」の小便器。試行錯誤を繰り返しているフランスでは、これからも個性的なトイレが登場しそうです!
この記事の筆者:大内 聖子 プロフィール
フランス在住のライター。日本で約10年間美容業界に携わり、インポートランジェリーブティックのバイヤーへ転身。パリ・コレクションへの出張を繰り返し、2018年5月にフランスへ移住。2019年からはフランス語、英語を生かした取材記事を多く手掛け、「パケトラ」「ELEMINIST」「キレイノート」など複数メディアで執筆を行う。
(文:大内 聖子)

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