カナダ総選挙 反米世論が与党を押し上げた

2025年5月6日(火)5時0分 読売新聞

 トランプ米大統領の脅しに屈しない姿勢が、窮地にあったカナダの与党をよみがえらせた。

 カナダの総選挙(定数343)で、マーク・カーニー首相率いる中道左派の自由党が第1党を維持し、カーニー氏の続投が決まった。解散時より議席を伸ばしたが単独過半数には届かず、少数与党となる。

 2015年から政権を担う自由党は、物価高騰や住宅不足などを背景に支持率が低迷し、1月には当時のジャスティン・トルドー首相が退陣表明に追い込まれた。最大野党・保守党への政権交代は不可避とみられていた。

 状況を一変させたのが、トランプ氏である。カナダを「米国の51番目の州」と呼び、併合に意欲を示した。不法移民や合成麻薬の流入阻止を名目に、真っ先にカナダをトランプ関税の標的にした。

 これに対し、3月に首相に就いたカーニー氏は、「カナダを裏切り、世界経済を破壊した」と非難し、報復関税で対抗した。

 トランプ氏への反発が有権者に広がり、与党への追い風となったのは間違いない。カナダでは愛国心が喚起され、米国産品をボイコットする動きも出ている。

 トランプ氏は、自らの言動が緊密な同盟国であるカナダの離反を招き、選挙結果に影響を与えた事実を重く受け止めるべきだ。

 カーニー氏は米国との関税交渉に入る。カナダにとって米国は最大の貿易相手国だ。カナダが関税引き下げに道筋をつけられなければ景気後退に陥る懸念がある。

 同時にカーニー氏は選挙後、「米国との統合をめざす古い関係は終わった」と述べた。トランプ氏という外圧を機に、米国への過度な依存を見直そうとしている。

 トランプ政権の威圧を受けながら、貿易の多角化や欧州などとの関係深化で経済・外交の選択肢を増やし、国益を守る。カナダが進めようとしている新たな戦略は、日本にも参考になる。

 日本とカナダは、ともに先進7か国(G7)、環太平洋経済連携協定(TPP)のメンバーで、エネルギーや自動車など貿易・投資の重要なパートナーでもある。

 安全保障での共通点も多い。カナダは「インド太平洋戦略」を掲げ、日米などの合同軍事演習に参加している。北極圏など新領域での安保にも力を入れる。

 6月にはカナダ西部カナナスキスでG7サミットが開催される。日本は議長国カナダや欧州と連携し、国際協調を重視するよう米国に働きかけるべきだ。

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