「香典は数億円にのぼった可能性が」暴力団業界の超大物が集結した稲川会の総裁・清田次郎の葬儀 国税の幹部が語る“非課税”の理由「納税したいと申告するなら別だが…」
2025年5月16日(金)18時0分 文春オンライン
1都1道15県に傘下組織を従え、約1600人の構成員を擁する暴力団「稲川会」。その総裁・清田次郎が4月21日に84歳で死去し、5月15日に横浜市内の稲川会館で「会葬」が行われた。
葬儀には国内最大の勢力を誇る6代目山口組組長の司忍、若頭に就任したばかりの竹内照明ら最高幹部が参列したほか、住吉会からも会長の小川修司らが弔問に訪れ、そうそうたる顔ぶれが並んだ。
祭壇にも全国の主要暴力団の代表者からの名札が並び、供花とともに暴力団業界の「オールスター」といっても過言ではない葬儀となった。

稲川会の会葬についての書面が暴力団関係者の間を駆け巡った
「『稲川会々葬』が決まりましたので通知致します」
5月上旬、このような見出しの書面が暴力団関係者の間で回覧された。書面には「五月十五日(木) 稲川会館 集合、午前九時、厳守」とあり、続いて近隣への迷惑とならないよう厳守事項が記載され、最後に「稲川会本部発 令和七年四月三十日(水)発信」と締めくくられている。
稲川会は東京都公安委員会によって指定暴力団に指定されており、主たる事務所は東京・六本木となっているが、実際は多くの拠点が神奈川県内の主に横浜市や川崎市などに集中している。書面にある「稲川会館」とは横浜市内にある施設で、重要行事などで使われている。
この書面は暴力団犯罪を専門に捜査する警察当局のマル暴刑事たちも時を置かずに入手。かつて暴力団幹部の葬儀では、対立組織の組員が紛れ込んで拳銃を発砲し、死傷者が出る事件が発生したことがあった。そのため警察当局は、不測の事態の発生に備えて警戒体制に入った。
暴力団社会では、今回のような葬儀や組織のトップである組長が入れ替わった際の襲名披露などは「義理事」と呼ばれ、欠かすことができない最重要儀式とされている。
警察当局の捜査幹部は、「通知を受けているにもかかわらず無断で欠席した場合は、敵対行為とみなす組織もある。通常はこのような無謀なことをする者はいないが」とその重要性を解説する。
稲川会の組織としての会葬に先立って、4月26日には清田の出身母体である稲川会山川一家と、家族による葬儀が川崎市内の山川一家本部事務所で行われていた。こちらの喪主は清田の妻、施主は稲川会の現会長・内堀和也が務めた。
首都圏に拠点を構える指定暴力団の幹部が、清田の2度の葬儀についてこう解説する。
「4月の家族葬には稲川会の子分たちが集まったのだろう。この時の香典は葬儀で必要になった経費を差し引いて、遺族に渡されたはずだ。自分の親分が亡くなった際も、様々なお付き合いのあった方々からのお気持ちで頂いた香典を同じようにした」
「香典は数億円にのぼった可能性が高い」
5月15日に行われた稲川会葬はまさに稲川会としての葬儀となり、他の組織の幹部などが駆け付け規模はけた違いになる。
「山口組や住吉会を含めた全国の親分衆が弔問に来る。それぞれに秘書役やボディガード、運転役なども含めれば数百人になるのではないか。香典は数億円にのぼった可能性が高い」(同上)
巨額の香典について、国税当局の幹部が言及する。
「冠婚葬祭のご祝儀、香典などについては課税対象ではないことは一般的な慣習として定着している。一般国民がそうであるように、暴力団も同じだ。『納税したい』と申告するなら別だが。暴力団は何かしらの営利事業を行っていたとしてもそもそも納税していないので、そのようなことはまずない」
前出の指定暴力団幹部が続いて家族葬との違いを指摘する。
「家族葬の香典は家族が受け取るが、稲川会葬の主催者は稲川会そのものなので、香典などは組織に入るだろう。会場周辺の警備、交通整理、弔問客の接待などは当然、すべて稲川会が組織として責任を持つことになる」
かつては、東京都内であれば青山斎場など、著名人の葬儀が行われるような斎場で暴力団幹部の葬儀も盛大に行われていた。しかし、近年は暴力団が反社会的勢力として排除されるようになり、葬儀も大きく様変わりしたという。
「銀行口座を作れない、賃貸マンションに住めない、スマホの契約を出来ないなど規制が厳しくなっているが、葬儀も同じだ。どれほど大きいヤクザの親分が亡くなったとしても、警察の手回しで葬儀場は使えないのが実態だ。稲川会ともなれば自前の稲川会館が大きいので、弔問客を迎えることができる。さすがに今回は誰からも文句が来ることはないのではないか」
「4月に死去した清田の会葬を5月15日としたのは…」
とはいえ建物自体は稲川会が用意できても、周辺への影響については最大限の配慮を行うという。稲川会葬の当日、車での参列者に対しては、代表者を会場に送った後に運転手たちは離れた場所で待機することを要請している。
今回はなかったが、地方からの参列者向けにはJR新横浜駅でマイクロバスを稲川会が用意することもあるという。
警察当局は、5月15日という日程にも理由があったのではないかとは見ている。
「4月に死去した清田の会葬を5月15日としたのは、ゴールデンウイークを避けるためだったようだ。行楽シーズンのど真ん中で会葬を行うと、新横浜駅で新幹線利用の旅行客の迷惑になることが容易に予想されるため、それを避けたのだろう」(捜査幹部)
暴力団にとって幹部の葬儀は威信がかかっており、稲川会の総裁ともなればミスは決して許されない。暴力団にとっても警察にとっても、5月15日は張り詰めた一日となった。
〈 巨大な葬儀が行われた稲川会総裁・清田次郎とは何者だったのか「トラブルがあると子分を引き連れて殴り込み」「話すときは相手に抱きつくように…」 〉へ続く
(尾島 正洋)
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