停戦めぐり協議 戦争の根本原因は露の侵略だ
2025年5月17日(土)5時0分 読売新聞
ロシアとウクライナが3年ぶりに直接協議に臨んだことは注目に値するが、ロシアの態度には疑念を禁じ得ない。
ロシアのウクライナ侵略を巡る両国の協議がトルコで開かれた。米国が提示していた30日間の無条件停戦案について、ウクライナが受け入れを表明する一方、ロシアは拒否し、実質的な進展はなかった模様だ。
両国の直接協議はロシアの侵略直後の2022年3月以来だ。協議には両国を仲介するトルコ代表も立ち会った。
今回の協議はもともとロシアのプーチン大統領が提案した。ウクライナのゼレンスキー大統領はこれに同意し、自身とプーチン氏による直接会談を逆提案したが、プーチン氏は応じず、大統領補佐官らを派遣するにとどめた。
プーチン氏は、トランプ米大統領が仲介する停戦交渉に後ろ向きだと非難されないよう、ウクライナに協議を持ちかけたのだろう。だが実際は協議を時間稼ぎに利用し、その間にも侵略を続けようとしているとしか見えない。
協議に先立ち、プーチン氏は「紛争の根本原因の除去」が必要だと改めて主張した。ウクライナの非武装化や北大西洋条約機構(NATO)への非加盟を要求するもので、ウクライナには到底受け入れられないものだ。
そもそも戦争を招いた「根本原因」は、ロシアが米英とともにウクライナの独立と主権の尊重などを確約した、1994年の「ブダペスト覚書」を破って侵略に踏み切ったことにほかならない。
自らの暴挙を棚に上げ、ウクライナや欧米が侵略を招いたと責任転嫁するロシアの身勝手な言い分は容認できない。
トランプ氏は「プーチン氏と私が会うまで、何も起こらないだろう」と述べ、米露による打開に意欲を示した。だが、トランプ氏が4月にロシアの要求に沿った和平案を示したにもかかわらず、プーチン氏は受け入れなかった。
トランプ氏は最近、SNSへの投稿でプーチン氏に攻撃を「やめろ!」と求めるなど、プーチン氏へのいら立ちもうかがえる。
米議会上院では、プーチン氏が誠実に停戦協議に応じなければロシア産の石油や天然ガスなどを輸入する国に高関税を課す超党派の制裁法案が提出された。
トランプ氏は、このままプーチン氏に利用されているだけでいいのか。プーチン氏の真の狙いを見極め、真剣に停戦に応じるよう圧力を強めてもらいたい。