万博会場でユスリカ大量発生「気持ち悪い」…封じ込めへ協会側が殺虫剤メーカーに協力要請
2025年5月24日(土)12時1分 読売新聞
大阪・関西万博の会場で、蚊に似た昆虫のユスリカが大量発生し、日本国際博覧会協会(万博協会)などが対応に追われている。人を刺したり、血を吸ったりすることはないが、来場者から「気持ち悪い」と不評を買っている。万博協会側は、殺虫剤メーカーとも協力して封じ込めを目指す。(丸山滉一、石橋龍馬)
日が落ち、薄暗くなった23日午後7時頃、記者が会場南側の大屋根リングの遊歩道を歩いていると、顔に何かが当たる感覚があった。次の瞬間、数十の小さな虫の群れが視界に入った。
夜の水上ショーを見ようとリングに登った来場者の多くも、手で払いのけたり、マスクを着けたりしていた。
友人4人と訪れた大阪市の主婦(70)は「4月末に来た時はここまでひどくなかった。ニュースなどで聞いていたが、目に入りそうになり気持ち悪かった」と漏らした。
万博協会によると、会場内で飛んでいるのはユスリカで、南側に広がる海水面「ウォータープラザ」を中心に発生している。
ユスリカはハエ目ユスリカ科に属するハエの仲間で、国内では1000〜2000種がいるとされる。害虫駆除会社「東洋産業」(岡山市)などによると、成虫は0・5ミリ〜1センチ程度で、蚊のように刺したり、血を吸ったりすることはない。
河川や用水路、水たまりなどに産卵。幼虫は水中の有機物を食べるため水質を改善する面もある。成虫は夕方〜夜間に活発に活動して光によく集まり、交尾の際に群れて飛んで「蚊柱」を作る。エサをとらず、羽化した後は交尾、産卵して死ぬ。寿命は数日程度。極めてまれに人の口に入ってアレルギー反応を起こすことがあるという。
環境分析会社「MIZUKEN」(堺市)の山本直さんが万博会場で採取した虫を調べたところ、塩分耐性を持ち、淡水と海水が混ざるエリアに生息する「シオユスリカ」であることが判明。シオユスリカは5〜6月に発生のピークを迎えるという。
山本さんによると、万博会場はウォータープラザという広い海水面がある上、ユスリカには塩分耐性があって競合する生物や天敵がいないことが、大量に発生している要因と考えられる。
万博協会は水たまりやリングの植栽帯に成長阻害剤を散布し、専門家や環境省にも対応策を相談。大阪府の吉村洋文知事は21日の記者会見で、殺虫剤大手「アース製薬」(東京)に協力を要請したと明かした。