コメ価格対策の成果急ぐ政府・与党、値下げの成否が参院選を左右「逆風が収まるかも」
2025年5月25日(日)10時59分 読売新聞
講演する小泉農相(24日、札幌市で)=樋口貴仁撮影
政府・与党が、コメの価格対策に注力している。引き下げの成否は夏の参院選の結果に直結するとみて、小泉農相を先頭にスピード重視で成果を急ぐ。野党は抜本的な農政改革を主張しており、コメ政策を巡る論議が活発化している。(樋口貴仁、薦田大和)
「トップスピード」
「『ようやく政治が動いた』と思っていただけるような結果を出したいと、初日からトップスピードで動いている」
小泉氏は24日、札幌市内での講演で、こう強調した。北海道内の卸売業者や生産者らとも面会し、政府備蓄米の随意契約による売り渡しに理解を求めた。
随意契約への変更は、小泉氏が21日の就任記者会見でさっそく検討を表明したものだ。23日には、備蓄米の店頭価格を5キロ・グラムあたり2000円に抑える目標も打ち出した。相次ぐテレビ番組出演や視察を通じて施策をアピールし、局面転換を図っている。
価格引き下げ効果はまだ見通せないが、小泉氏の露出が増え、野党からは「農相の更迭は自民にとってプラスになった」(立憲民主党中堅)との見方も出ている。改選を迎える自民参院議員は「小泉氏の突破力で価格が下がれば、政府・自民への逆風が収まるかもしれない」と期待する。
公明党の斉藤代表も24日、埼玉県幸手市のコメ農家を視察後、小泉氏の対応について「迅速で高く評価したい。参院選までに、自公政権として手を打ってきたことの効果が出るかどうかを国民が見ている」と記者団に語った。
小泉氏は「間違いなく今は高すぎる」とコメの価格引き下げに強い意欲を示すが、自民農林族には、価格が下がりすぎれば農家経営を圧迫するとの懸念もある。森山幹事長は24日、宮崎市内での講演で「再生産できる価格でコメが売買されることが大事だ。安ければいいというものではない」とくぎを刺した。
直接支払制度
一方、立民や国民民主党は、コメの安定供給や担い手確保に向け、農家に補助金を支給する「直接支払制度」の創設を主張する。
立民の野田代表は24日、千葉県船橋市で記者団に「生産者が現場を離れていかないような対策も示さなければならない」と訴えた。国民民主の玉木代表も札幌市で記者団に「直接支払いがない中で、ただ値段を下げろと言っているだけのように見える。政策として少し偏っている」と述べ、政府方針に疑問を呈した。
日本維新の会の前原誠司共同代表は同日、備蓄米に関し「一般競争入札があるべきやり方だ」と指摘し、随意契約を導入する理由をただす考えを示した。今後の終盤国会でも与野党の論戦が続きそうだ。