「小春日和」とはいつのこと? 正しい意味と使い方

2023年11月19日(日)5時46分 ウェザーニュース

2023/11/19 05:00 ウェザーニュース

今年、2023年は真夏が過ぎたあとも気温が高く、残暑が長く続きました。
すでに立冬に入っている今は、暦の上ではしっかり冬。秋があったのかなかったのか、よくわからないうちに冬が到来してしまい「え、もう冬?」と思った人もいるかもしれません。
そんなこの時季の暖かくて穏やかな天気のことを指す言葉があります。何というか、ご存じですか?

「晩秋から初冬の暖かくて穏やかな天気」

答えは「小春日和(こはるびより)」です。なんとなく、かわいらしく、きれいな響きの言葉ですね。
それにしても、春じゃないのに、どうして「小春日和」なの? と思う人もいるでしょう。
もっともな疑問ですが、そもそも「小春」とは「春のように暖かい晩秋から初冬」のことで「陰暦十月の異称」でもあります。陰暦10月はほぼ現在の11月に相当します。小春は春ではないのですね。
そして、ここで使われている「日和」は「空模様、天気。特によい天気」のことです。
したがって、「小春日和」は「晩秋から初冬のころの暖かくて穏やかな天気」のことを意味します。

「十月は小春の天気」と綴った吉田兼好

「小春」という言葉は古くから使われていて、鎌倉時代後期に書かれた、吉田兼好(兼好法師)の『徒然草』にも登場します。
155段に「十月は小春の天気、草も青くなり梅もつぼみぬ」とあって、これは「(陰暦)10月は春のような暖かな気候で、草も青くなり梅もつぼみをつけた」といった意味です。
詩人で作家の島崎藤村の随筆小品集『千曲川のスケッチ』(1911年=明治44年)には「秋から冬に成る頃の小春日和は、この地方での最も忘れ難い、最も心地の好(よ)い時の一つである」とあります。
千曲川は信濃川の上流部で、長野県北東部を流れる川。晩秋から初冬の穏やかな様子がうかがえます。

山口百恵さんが歌った『秋桜(コスモス)』にも登場

1977(昭和52)年に発売された、ある歌によっても「小春日和」は注目されました。
それは『秋桜(コスモス)』で、作詞・作曲はさだまさしさん。山口百恵さんが歌って、ヒットしました。
この歌は当初、「小春日和」というタイトルで発売される予定でしたが、発売前に『秋桜(コスモス)』に変更になったといういきさつがあります。
〜玉の如き小春日和を授かりし〜
これは、高浜虚子に師事した俳人、松本たかし(1906〜1956)が詠んだ一句です。季語は「小春日和」で、冬を表します。
日だまりの光景が目に浮かぶようです。暖かで穏やかで輝いている小春の日の様子が伝わります。
春や初夏もよい気候ですが、小春日和もまた好ましい。
猛暑や豪雨、豪雪を思うと、平穏な小春日和ほどありがたいものはないかもしれません。
参考資料
『暮らしの歳時記』(著者/黒田杏子、発行所/岩波書店)、『365日、暮らしのこよみ』(著者/井上象英、発行所/学研プラス)、『増補版 いちばんわかりやすい俳句歳時記』(著者/辻桃子・安部元気、発行所/主婦の友社)、文化庁広報誌 ぶんかる「言葉のQ&A」(https://www.bunka.go.jp/prmagazine/)

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