ジャニーズ事件と同じ構造…「親」「教員」「先輩」ら"まさかの善人"が未成年者に手を出すこの世の闇

2024年3月21日(木)11時15分 プレジデント社

出所=『大人も子どもも知らない不都合な数字』

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近年、性犯罪や性加害の問題が大きくクローズアップされている。例えば、無理やり性交などを強要される被害の割合は女性が14人に1人、男性が100人に1人。この他、DVや痴漢などもあるが、多くの被害者は届けを出さず泣き寝入りしている。社会に横たわる問題を自分ごととしてとらえるきっかけを提供し続けるクリエイター集団・チャリツモが統計データを用いて、その実態を報告する——。

※本稿は、チャリツモ『大人も子どもも知らない不都合な数字』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。


■DV被害経験のある女性割合25.9%(男性は18.4%)


2020年に内閣府が行った調査によると、配偶者からの暴力を受けたことのある女性の割合は25.9%、男性は18.4%でした。調査対象となった暴力は4種類。


・身体的暴行(なぐったり、けったり、物を投げるなど)
・心理的攻撃(人格を否定する暴言、電話・メールなどの監視、精神的嫌がらせなど)
・経済的圧迫(生活費を渡さない、貯金を勝手に使われる、外で働くことを妨害されるなど)
・性的強要(性的行為の強要、見たくないポルノ映像等を見せられる、避妊の非協力など)
出所=『大人も子どもも知らない不都合な数字

このいずれかについて、婚姻経験のある女性の4人に1人が、「経験がある」と答えています。


また、上記4ついずれかの被害を“交際相手”から受けたことのある女性の割合は16.7%、男性では8.1%でした(恋人間での暴力のことを「デートDV」と呼びます)。交際相手から暴力を受けた女性の23.7%は「命の危険を感じた」と答えています。


2001年にDV被害者の声を受け、超党派の女性議員により「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(通称:DV防止法)」が成立。DV防止法では、「配偶者からの暴力は、犯罪となる行為をも含む重大な人権侵害である」と定義し、配偶者からの暴力を防止することと被害者の自立を支援することは国および地方公共団体の責務と定められました。


DV防止法制定により、各都道府県の配偶者暴力相談支援センターでDVに関する相談を受け付けたり、DV被害者の一時保護などの体制が整いました。もし、結婚相手や交際相手からの暴力で悩むことがあったら、以下の相談窓口に連絡してみてください。


[参考]


・男女間における暴力に関する調査(男女共同参画局、2020年)
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/chousa/h11_top.html


・配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(男女共同参画局)
https://www.gender.go.jp/about_danjo/law/no_violence/dvhou.html




⇒緊急の場合「DV相談プラス」
無料でかけられる電話相談のほか、メールやチャットでも相談できます。チャットは、日本語のみならず10カ国語に対応していますので、日本語話者以外でもご相談ください。
https://soudanplus.jp/ 0120-279-889(つなぐ・はやく)24時間365日対応


*この情報は、2024年2月現在のものになります。質問や相談は、著者や出版社ではなく、上記に直接問い合わせてください。また、連絡先やサービス内容が、予告なく変更・終了する場合があることを、あらかじめご了承ください。


■女性の14人に1人が、無理やり性交される被害にあっている


女性の14人に1人が、無理やり性交などを強要される被害にあっていることがわかりました。男性の被害は、100人に1人の割合で発生しています。


出所=『大人も子どもも知らない不都合な数字

こうした性被害を経験した人のうち、女性の6割、男性の7割が誰にも相談できないでいます。2022年の1年間で発生した強制性交などの認知件数は1655件、強制わいせつは4708件ですが、多くの人が誰にも相談できないでいる状況を踏まえると、警察に届け出られた数(認知件数)は、実際の被害に比べたら氷山の一角にすぎないといえるでしょう。


性犯罪の被害を受けやすいのは、性別問わず若年層です。強制性交の被害者のうち、20代以下が8割以上を占めていて、4割は20歳未満です(2022年)。


内閣府が実施したアンケートでは、16歳から24歳の若年層の4人に1人が何かしらの性被害にあっていることがわかっています(2022年)。


未成年や子どもへの性加害の場合、親や学校の先生、部活の指導者や先輩など被害者よりも年齢や立場が上の人間が暴力を振るうケースが多いことがわかっています。


2023年には、日本の芸能事務所の社長が半世紀以上にわたって多数の未成年男性に性加害を繰り返してきたことが英・BBCによる報道で表沙汰になりました。あの事件も事務所社長と所属タレントという不均衡な力関係を利用した犯罪です。


お互いがその行為を望む意志があることを確認(性的同意)していない状況で行われる性的な行為は、すべて性暴力です。同意の前提は両者が対等な関係性であること。ジェンダーや年齢にかかわらず、支配・被支配の歪(いびつ)な関係性の中で、性暴力は生まれます。


[参考]


・男女共同参画白書 令和5年版(男女共同参画局、2023年)
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r05/zentai/html/honpen/b1_s05_02.html


・こども・若者の性被害に関する状況等について(内閣府、2023年)
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/2ff7a807-a6a8-4d4b-87f6-3b136407e7c6/fefea869/20230401_councils_child-safety-conference_2ff7a807_07.pdf


■痴漢の検挙数2233件


各都道府県は迷惑防止条例の中で「人を著しく羞恥させ、または人に不安を覚えさせるような行為であり、公共の場所又は公共の乗物において、衣服等の上から、又は直接人の身体に触れる」などの行為をいわゆる「痴漢行為」と規定し禁止しています。


出所=『大人も子どもも知らない不都合な数字

電車やバスなどの中での痴漢行為は、迷惑防止条例のほか、刑法176条の不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ罪)によって検挙されます。


警察庁によると、2022年の迷惑防止条例違反での痴漢行為の検挙件数は2233件(電車内以外を含む)、電車内における不同意わいせつの認知件数は161件でした。ただこの数字がすべてではなく数多くの“暗数”が存在していると考えられます。


2021年に福岡県警が実施した調査では、痴漢の被害にあったときに「駅員や警察へ通報した」と答えた割合はわずか7.1%。被害者の9割以上が届け出ずに泣き寝入りをしている状況が明らかになりました。



チャリツモ『大人も子どもも知らない不都合な数字』(フォレスト出版)

多くの人が、痴漢にあった後にとった行動として「我慢した」「その場から逃げた」と答えていることから、実際の被害件数は警察発表と大きくかけ離れたものだと考えられるでしょう。


痴漢は深刻な性暴力です。にもかかわらず、かつての日本では痴漢被害がとても軽いものとして扱われてきました。マンガやドラマなどの創作物の中では、痴漢は誰もが一度は遭遇する行為として、取るに足らない被害のように描かれることもありました。


公共の場で当たり前のように性暴力が繰り返される日本社会の異常性は、すでに海外にも知れ渡っているようで、CHIKANは今では国際語になっているのだそうです。


[参考]


・令和5年 警察白書(警察庁、2023年)
https://www.npa.go.jp/hakusyo/r05/data.html


・痴漢被害の実態等に関するアンケート結果(福岡県警、2021年)
https://www.police.pref.fukuoka.jp/data/open/cnt/3/12162/1/tikan.pdf?20230825115007


■モデルやアイドルの勧誘を受けた7人に1人が性的な撮影を求められた


「モデルやアイドルにならないか?」という勧誘をきっかけに、AV出演被害にあう事例が問題になっています。2020年に内閣府が15〜39歳の女性(中学生を除く)を対象にした調査の結果、4人に1人(26%)が「モデルやアイドルになりませんか」といった勧誘を受けたことがあることがわかりました。


出所=『大人も子どもも知らない不都合な数字

また、モデルやアイドル等の勧誘を受けたりみずから応募した人のうち、7人に1人(13.4%)が「聞いていない・同意していない性的な行為等の写真や動画の撮影に応じるように求められた」と答えています。


女性を言葉巧みに騙したり脅したりしてアダルトビデオに出演させる「AV出演強要問題」が多発したことを受け、2022年にできたのがAV出演被害防止・救済法です。この法律によって、出演者の性別や年齢を問わずAV出演の契約を無力化することができるようになりました。


AV出演被害防止・救済法のポイント
・出演時の性別、年齢にかかわらず契約を無効化するルールが定められた法律である。
・AV撮影における性行為等の強要が禁止になった。
・AV撮影に関する契約を結ぶ際、映像制作者は、1つのAVごとに出演者に対して出演契約書を作成・交付し、契約内容について、詳しく説明する義務があるとした。
・署名交付義務や説明義務を怠った場合は、契約を無効化することができる。
・撮影に同意していても、公表から1年が経つまでは、性別・年齢を問わず、出演者の意思によって無条件で契約を解除することができる。


すでにAVの撮影をしてしまったり、作品が配信・販売されたりしている場合でも、出演契約をなかったことにしたり、公表を差し止めたりすることができます。


AV出演被害で困ったときには、「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」(全国共通番号#8891:はやくワンストップ)に相談してください。


[参考]


・AV出演被害防止・救済法が施行 AV出演を契約しても無条件でその出演契約をなかったことにできます!(政府広報オンライン)
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202207/1.html


・AV出演被害防止・救済法(令和4年法律第78号)(男女共同参画局、2022年)
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/avjk/index.html


■性被害者の8割が、被害を届け出ていない


警察が認知していない犯罪被害の件数(いわゆる暗数)を調べるため、法務省が2017年に全国6000人(男女各3000人)を対象に犯罪実態のアンケート調査を実施し、3500人の回答を集計しました。


出所=『大人も子どもも知らない不都合な数字

その結果、全体の1%に当たる35人(女性30人・男性5人)が過去5年間に性的事件の被害にあっていたことがわかりました。


被害にあったと答えた回答者のうち捜査機関に被害を届け出ていたのはたったの5人(14.3%)。28人が被害届を出していないと回答し、残り2人は回答不明でした。


性的事件の被害者の80%以上が捜査機関に被害を届け出ていないことになります。被害を申告しなかった理由を複数回答で尋ねたところ、


・「それほど重大ではない(35.7%)」
・「どうしたらよいのかわからなかった or 被害を届け出る方法がわからなかった(28.6%)」
・「被害にあったことを知られたくなかった or 恥ずかしくて言えなかった(14.3%)」
・「捜査機関は何もできない or 証拠がない(14.3%)」
・「自分で解決した or 加害者を知っていた(14.3%)」

などの理由が挙げられました。


この調査の結果を見ると、あらゆる犯罪のなかでも、性犯罪は特に暗数が大きい犯罪だということがわかります。強盗(43.5%)や暴行・脅迫(41.2%)などは4割超が被害届を出しているのに対し、性的事件(14.3%)やDV(11.5%)はほとんど届け出ず、泣き寝入りしてしまっているのです。


[参考]


・法務省「性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループ」取りまとめ報告書概要:各種調査研究及びヒアリング指摘事項/法務省
https://www.moj.go.jp/content/001318152.pdf


・第5回犯罪被害実態(暗数)調査—安全・安心な社会づくりのための基礎調査—/法務省
https://www.moj.go.jp/content/001316208.pdf


・令和元年版 犯罪白書/法務省
https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/66/nfm/mokuji.html


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チャリツモ
これまで遠く感じていた社会問題を、自分ごととしてとらえるきっかけを提供し続けるクリエイター集団。「そうぞうしよう。そうしよう」がキャッチコピー。本書のベースとなっているWEBサイト「チャリツモ」をはじめ、10代の若者が抱える性のモヤモヤにこたえる「セイシル」(運営会社はTENGAヘルスケア)や「日本財団 Instagram」など、WEBメディアを中心にさまざまな媒体の運営に携わっている。
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(チャリツモ)

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