政権崩壊のカウントダウンが始まった…これから自民党内で本格化する「石破おろし」の仕掛け人の名前

2025年3月27日(木)18時15分 プレジデント社

参院予算委員会で挙手する石破茂首相=2025年3月27日午前、国会内 - 写真=時事通信フォト

「10万円の商品券」で揺れる石破政権はこれからどうなるのか。ジャーナリストの須田慎一郎さんは「今年度予算が成立すれば、自民党内で『石破おろし』が本格化するだろう。私は2人の政治家の動向に特に注目している」という——。

※本稿は、須田慎一郎氏のYouTubeチャンネル「撮って出しニュース」を加筆・再編集したものです。


写真=時事通信フォト
参院予算委員会で挙手する石破茂首相=2025年3月27日午前、国会内 - 写真=時事通信フォト

■予算成立後に先送りされた「石破おろし」


国会では石破茂首相の「商品券問題」について野党からの追及が続いている。


3月3日、首相公邸において、初当選の1年生議員15人を集めて懇談会が開かれた。その前日、「明日の懇談のお土産です」という名目で、10万円分の商品券が出席した全議員に配布されたという。そして、この事実が3月13日に発覚し、大きな騒動へと発展したのである。


この3月13日という日付は極めて興味深い。夜になって朝日新聞のデジタル版が第一報を報じ、それと前後して共同通信もこのニュースを配信した。その前日、参院議員総会において旧安倍派の西田昌司氏が、最後の「他に意見はありませんか」という場面で手を挙げ、前へ出て演説を行った。その内容は、「石破首相は昨年10月の総選挙において、勝敗ラインを設定し、候補者を擁立したが、そのラインを大きく下回る結果となった。この責任を取るべきだ」というものであり、予算成立直後に石破首相は退陣すべきだという主張であった。


その翌日、すなわち3月13日に、商品券問題が突如として浮上した。このタイミングが絶妙であったことから、「いよいよ石破おろしが始まったのではないか」との見方が永田町で広がった。いよいよ政局に突入するのか否か、不透明な状況が続いている。


私の見解では、一時的に盛り上がりを見せた「石破おろし」も、予算案の年度内成立の可否をめぐって、現在は膠着(こうちゃく)状態にある。というのも、この段階で自民党内で石破おろしを強行すれば、国民生活の足を引っ張る行為として強い批判を免れないからだ。今は事を起こすべきではないという判断が働いている。石破おろしの動きは、予算案成立以降に先送りされた状況だ。


ただ、私が少し気になっているのは、3月10日の出来事である。3月10日の出来事とは一体何であったのかという点を、覚えておられるだろうか。


麻生太郎最高顧問と岸田文雄前首相、そして茂木前敏充幹事長の3人で集まって会食を開いたという非常に生々しい動きである。政局が混迷している中で、この三人が集まったというのポスト石破に向けた動きであることは間違いない。


■ポスト石破に意欲を見せる茂木氏


この会食をセッティングしたのは、茂木前幹事長である。


茂木氏については複数の議員から「アメリカのトランプ大統領のような交渉力が求められる相手と渡り合うには、自分のようなタフネゴシエーターが必要だ」と周囲に語っていると聞いている。つまり、茂木氏は首相就任への意欲を隠しておらず、非常に強い意気込みを見せている。


さらに言えば、3月13日に突如浮上した石破首相の10万円商品券問題をリークしたのは、茂木氏だという情報がまことしやかにささやかれている。私の元にも、自民党内部の関係者から「茂木氏が流したらしい」という話が入ってきており、さらに野党側、特に調査能力において高い評価を受けているある野党の有力議員からも、「茂木氏が情報源ではないか」との話が届いた。茂木氏本人が認めない限り、裏付けを取ることは極めて難しいが、このような言説が少なくとも永田町界隈で流布されていることは事実である。


その茂木氏が会談の場を手配し、そこに岸田氏、麻生氏が応じたという形だ。


左から茂木敏充幹事長、岸田文雄前首相、麻生太郎最高顧問(自民党HPより)

■「三派連合」関係修復ならず


この三人衆とは一体何者かというと、かつて岸田政権を支えた三派連合である。つまり、岸田政権の権力基盤とは、岸田派、麻生派、茂木派。この三つの派閥が手を組むことによって岸田氏を支え、そして多数派を形成することにより、党内を制圧していた。


しかし、岸田政権の末期に茂木氏が総理総裁のポストに意欲を示し、一旦その関係は解消された。加えて、昨年の総裁選において、特に決選投票において石破氏を全面的に支援した岸田氏と、高市早苗氏を全面支援した麻生氏、この二人が決選投票で争い、その際に生じたしこりが残っているという状況だ。


会談はその関係修復のために行われた。何のために修復を図るのかと言えば、やはりポスト石破に向けて一致団結し、この三人が手を貸し、すなわち党内の指導権を握っていこうではないかという意志のもとに、茂木氏が主導したということになっているのである。


ただ、そうは言っても、結果的にこの会食はうまくいっていない。再び結束が確認されたのかと言えば、まったく確認されていない。もしこれが結束確認のための会食であったとするならば、これは失敗に終わったというのが私の受け止め方である。


岸田氏の茂木氏に対するわだかまりは消えていなかったし、麻生氏と岸田氏との間のしこりも解消されることはなかった。そして結果的に、茂木氏はポスト石破に向けて手を挙げ、自分に協力してほしいという要請を行ったにもかかわらず、色よい返事を得ることはできなかった。茂木氏の思惑は外れてしまった、というのがこの会食の結果であったということである。


■「石破おろし」に菅元首相の姿が見えない理由


もう一点注目すべきは、なぜ菅義偉元首相がそこに加わっていないのか、菅氏の姿がそこに見えないのか、という点である。


菅義偉副総裁(自民党HPより)

やはり、もともとの三派連合という構図において菅氏は非主流派ではあるものの、ポスト石破を考えていく上で、菅氏の存在は必要であると私は考える。やはり、その菅氏が首を縦に振らない限り、なかなか動きが取れないというのが自民党の現実である。


仮に三派連合が石破潰しを仕掛けるにしても、一体誰が石破氏に対して直接行動を起こすのか、ということになれば、それはやはり岸田氏、菅氏をおいて他にないだろう。


そういった意味で興味深いのは、小泉進次郎氏の動きである。


小泉進次郎氏(自民党HPより)

いわゆる10万円の商品券問題で一気に求心力を失っていった石破氏に対して、「国民に疑念を抱かせ、1期生を困惑させた。首相はしっかり受け止め、説明を尽くす必要がある」と容赦なく追い込んだ。


小泉進次郎氏といえば、菅氏の側近中の側近として知られる存在である。選挙区も同じ神奈川県ということで関係が深い。


菅氏が首を縦に振らない限り、石破氏に対して決定的な行動をとることはかなわないとするならば、そこをどう巻き込んでいくかが鍵となる。ところが、茂木氏の菅氏に対するアプローチ、あるいは岸田氏、麻生氏の菅氏に対するアプローチというものが、まったく見えてこないのである。


■政局の鍵を握るのは菅元首相


さて、これを少し調べてみると、菅氏もどうやら通常の政治活動が行えるような健康状態にはないようである。そして、次の衆議院選挙の公認候補もすでに決定している。菅政権時に首相秘書官を務めた人物が、後任候補として立つことが決まったということである。この点を踏まえると、自民党としても菅元首相は政治の第一線から退いていて、石破おろしに関しても蚊帳の外に置かれているのではないかと推察される。


ただし、全面的に引退しているわけではないため、菅氏の意向をいかに確認し、その動きをどのように見極めていくかという点が、今後の大きなポイントとなってくるであろう。その影響力の程度については明確ではないが、間違いなく小泉進次郎氏の動きの背後には、菅氏の影響が感じられる。


とするならば、最終局面において菅氏がどのような動きを見せるのかは、十分に見極めていかねばならない。すでに事実上の政界引退に追い込まれた存在であるとしても、完全に無視してよい存在ではない。


最後に菅氏が何らかの仕掛けを行ってくる可能性は否定できず、ここは注視しておかねばならない。それが現実に起きた場合、元首相という立場にある人物だけに、赤子の手をひねるような形で物事を進められてしまう恐れがある。ゆえに、今後のその動向について、継続的に注視していきたいと考えている。


ジャーナリストの須田慎一郎氏(写真=YouTubeチャンネル「撮って出しニュース」より)

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須田 慎一郎(すだ・しんいちろう)
ジャーナリスト
1961年東京生まれ。日本大学経済学部を卒業後、金融専門紙、経済誌記者などを経てフリージャーナリストとなる。民主党、自民党、財務省、金融庁、日本銀行、メガバンク、法務検察、警察など政官財を網羅する豊富な人脈を駆使した取材活動を続けている。週刊誌、経済誌への寄稿の他、TV「サンデー!スクランブル」、「ワイド!スクランブル」、「たかじんのそこまで言って委員会」など、YouTubeチャンネル「別冊!ニューソク通信」「真相深入り! 虎ノ門ニュース」など、多方面に活躍。『ブラックマネー 「20兆円闇経済」が日本を蝕む』(新潮文庫)、『内需衰退 百貨店、総合スーパー、ファミレスが日本から消え去る日』(扶桑社)、『サラ金殲滅』(宝島社)など著書多数。
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(ジャーナリスト 須田 慎一郎)

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