中国の原産地偽装で東南アジア各国が対策、アメリカの「貿易赤字の一因」と主張…関税交渉を意識

2025年5月23日(金)7時30分 読売新聞

中国の電子機器メーカーが建設を進める工場(タイ中部アユタヤで)=井戸田崇志撮影

 東南アジア各国が米トランプ政権との関税交渉の一環で、原産地を偽装した輸出の対策に乗り出した。各国は中国企業が中国で生産した製品を東南アジア製と偽って輸出したことが、米国が抱える貿易赤字の一因だとする。だが、米国は中国企業が合法的に東南アジアから迂回うかい輸出する事例も含めて協議の対象にするとみられ、争点がずれて交渉の障害となる可能性もある。(バンコク支局 井戸田崇志)

 タイ政府は14日、米通商代表部(USTR)に提案した米タイ協議の枠組み案を公表した。タイによる米国製品の輸入拡大など5分野からなり、柱の一つが「原産地偽装の防止」だ。

 原産地偽装は、タイ以外の国で生産した製品のラベルを「タイ産」に貼り替えたり、タイの倉庫で保管したりしただけでタイ産と偽って米国に輸出する不正行為を指す。タイで簡単な組み立て作業だけをして輸出するケースも含み、中国企業が行っているとされる。

 タイ政府は防止策として、企業への立ち入り検査の強化や原産地証明書の発行の厳格化に取り組む方針だ。マレーシア政府も5日、同様の対策を公表した。ベトナムのファム・ミン・チン首相は「原産地偽装や密輸、貿易詐欺を防ぐ制度を整備する」と強調する。

 だが、中国企業の輸出が全て違法なわけではない。東南アジアに建設した工場で一定割合以上の部品を現地調達したうえで生産し、米国に輸出するのは各国で合法的な企業活動となる。

 東南アジアの対米輸出は近年、拡大している。ベトナムの2024年の輸出額は1195億ドル(約17兆円)で、5年前と比べて倍増。中国企業の工場進出が背景にあり、違法行為を取り締まっても、米国がベトナムに抱える1000億ドル超の貿易赤字がどの程度解消されるかは未知数だ。

 ただ、各国にとって中国企業の生産全体を制限するのは対中関係の悪化や投資の縮小を招く。不正行為のみに焦点をあてて米国に矛を収めてもらい、米中のバランスを取る思惑がある。

 一方、米国は輸入全体を問題視する構えだ。米商務省は6月、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナムから輸入される太陽電池に相殺関税などを発動する。税率は国や企業によって異なり、最も高いケースでカンボジアの中国系企業に計3521%が課せられる。

 米中両国は今月12日、追加関税を相互に引き下げることで合意した。東南アジアには米国の中国企業に対する強硬姿勢が和らぐことを期待する向きもあるが、交渉の行方は見通せない。

ヨミドクター 中学受験サポート 読売新聞購読ボタン 読売新聞

「中国」をもっと詳しく

「中国」のニュース

「中国」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ