カルシウムだけじゃ骨は伸びない…「子どもの身長を伸ばす栄養素」が一気に摂れる"超万能食材"
2025年3月30日(日)18時15分 プレジデント社
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/shironagasukujira
※本稿は、田邊雄『身長先生式 子どもの身長が伸びる食事のルール30』(Gakken)の一部を再編集したものです。
写真=iStock.com/shironagasukujira
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■成長ホルモンと栄養、どちらも欠かせない
子どもの身長を伸ばすためにはカルシウムが大事だと思う方が多いのではないでしょうか? しかし、身長を伸ばすのに必要なのはカルシウムだけではありません。
成長期には脳の脳下垂体という部分からたくさんの成長ホルモンが分泌されます。これは「今、成長しなさい」という脳からの指令。成長ホルモンは、その指令に従い、食事で取り入れた栄養を使って骨を伸ばします。
骨を伸ばすためには、カルシウムだけではなく、たんぱく質、ビタミンD、亜鉛、鉄といった多くの栄養素が必要となります。
つまり、身長を伸ばすためには、次の2つが重要です。
・脳から成長ホルモンが十分に分泌されること
・骨の成長に必要な栄養を十分に摂ること
睡眠をはじめとする生活のリズムが乱れて成長ホルモンが十分に分泌されなかったり、必要な栄養が不足したりするだけで、骨の成長は停滞し、身長が伸びにくくなる可能性があるのです。
成長ホルモンと栄養。この2つが連携して子どもの体は成長していくということを、まずは覚えておいてください。
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出所=『身長先生式 子どもの身長が伸びる食事のルール30』(イラスト:かざまりさ)
■卵は「完全栄養食」と称えられる理由
卵はMサイズ1個(50g)に約6gのたんぱく質が含まれています。ここでは、たんぱく質を構成するアミノ酸について解説しましょう。
人体を構成するアミノ酸は20種類。そのうちの9種類が必須アミノ酸です。必須アミノ酸は人体で合成できないため、食事で摂る必要があり、1つでも不足すると、体内でたんぱく質が十分に合成されなくなります。
そのため、栄養計算上ではたんぱく質が十分でも、必須アミノ酸が不足していると成長に悪影響が及ぶ可能性があるのです。
卵は必須アミノ酸をすべて含む優秀なたんぱく源。さらに、ビタミンC、食物繊維以外の栄養素をすべて含むことから、「完全栄養食」と呼ばれています。
さらに注目すべきは、必須アミノ酸の消化吸収率(DIAAS)。図表2は食品別のDIAAS値で、数値が高いほど消化吸収率がよいということです。卵の消化吸収率は動物性食品の中でもトップクラス。卵は非常に優秀な食材なのです。
出所=『身長先生式 子どもの身長が伸びる食事のルール30』
■卵は「1日1個」より「1日2個」
卵は1日に何個食べると身長の伸びに効果があるのでしょう? ウガンダの小学校で「卵が子どもたちの成長にどれくらい影響を及ぼすか」を調べた研究の結果を見てみましょう。
調査の内容は次のとおりです。
対象は6〜9歳の小学生。週5日提供されている給食で、卵0個のグループ、卵1個のグループ、卵2個のグループに分け、これを6カ月間継続し、それぞれの身長の伸びを比較。
結果は、卵0個のグループは3cm弱、1個のグループは約2.5cm、2個のグループは3.5cm弱身長が伸びていました。明らかに卵2個食べたほうが身長が伸びていたのです。
出所=『身長先生式 子どもの身長が伸びる食事のルール30』
つまり、卵を食べない、または1日1個食べるより、2個を毎日食べることで身長が伸びる可能性が確認されたのです。
たんぱく質が少なくなりやすい朝食で卵2個を食べてもいいですし、朝1個、夜1個でもかまいません。ただし、卵には脂質も含まれているので、体脂肪率が高い子どもは食べすぎないようにしましょう。
■鶏ササミ・むね肉はたんぱく質が豊富
「肉はどの種類のどの部位を食べればいいですか?」という質問をよく受けます。身長を伸ばすという点においては、鶏ササミ・鶏ムネ肉がおすすめです。
その理由は骨の材料となるたんぱく質を多く含むからです。
100gあたりのたんぱく質量が多いのは、鶏ササミ約25g、鶏ムネ肉(皮なし)約24g、豚ヒレ肉(赤身)が約23g。逆にたんぱく質が少ないのは、牛バラ肉が約11g、牛サーロインが約12g、牛肩ロースが約14g(すべて和牛)となります。
出所=『身長先生式 子どもの身長が伸びる食事のルール30』(イラスト:かざまりさ)
鶏ムネ肉・ササミと牛バラ肉のたんぱく質量には、倍以上も差があるので、牛バラ肉を優先的に食べ続けた場合、かなりの量のたんぱく質を取り損ねることになります。
ただし、牛肉には、鶏肉にあまり含まれていない鉄や亜鉛が多く、豚肉はエネルギー代謝を促すビタミンB1が鶏肉より多いというメリットがあります。それぞれの栄養価を知り、鶏ムネ肉やササミをメインにしつつ、たんぱく質量の多い牛や豚のヒレ肉やモモ肉を、ときどき加えるといいでしょう。
■魚介にも肉にもそれぞれメリットがある
肉と魚介はどちらも優秀なたんぱく源。成長に欠かせない必須アミノ酸をバランスよく含む点でも同レベル、100gあたりのたんぱく質含有量もほぼ同レベルです。
だからといって、肉ばかり、魚ばかり、さらに同じ種類ばかりを食べるのは、おすすめできません。偏らずにいいとこ取りをしたほうが、成長のためにはいいからです。
たとえば、魚介には肉にはほとんど含まれないビタミンDを含むものがたくさんあります。骨ごと食べられるものならカルシウムもたっぷり摂れます。
マグロやカツオ、サバなどには鉄やビタミンB群も豊富。さらに、青魚や鮭、マグロやカツオなどの脂に多く含まれるオメガ3不飽和脂肪酸(以下・オメガ3)には、神経伝達をスムーズにして脳の認知機能を向上させたり、体内の炎症を抑え、アレルギー症状を軽減させる働きが認められています。成長期の子どもにとって有意義な働きがたくさんあることがわかります。
■週1回は食べてほしい「サバ缶」
肉の場合も同様にメリットがあります。牛肉には鉄や亜鉛が豊富に含まれており、豚肉や鶏ササミやムネ肉はビタミンB群が豊富です。
それぞれのいいところを上手に取り入れるためには、肉と魚介を1:1で摂るよう心がけてみてください。完璧にできなくてもかまいません。たとえば、朝食で魚介を食べなかった場合は、夕食で魚介を食べる。前日、肉ばかりを食べてしまったら、次の日は魚介をメインにするといった感じで意識して実践するだけで、大きく偏るのを防げます。
魚介を取り入れる際におすすめしたいのがサバ水煮缶です。「加工したサバより新鮮なサバのほうが体にいいのでは?」と思った方もいるのではないでしょうか。しかし、答えはノー。サバ水煮缶の栄養価は、生サバや塩サバに劣ることはありません。むしろ優れている部分もあるのです。
■5つの栄養素がすべて入った優秀な食材
生サバ、塩サバ、サバ水煮缶、サバ味噌煮缶の100gあたりの栄養価を比較してみましょう(図表5参照)。
出所=『身長先生式 子どもの身長が伸びる食事のルール30』
いずれも、骨の材料になるたんぱく質、カルシウムのほかにも、身長を伸ばすために欠かせない5つの栄養素がすべて含まれています。なかでもサバ水煮缶は、カルシウムの量が多く、不足しがちな鉄や亜鉛、ビタミンDもしっかり含まれています。味噌煮缶よりたんぱく質、カルシウム、亜鉛、ビタミンDの量も豊富です。
サバ缶は、サバを骨ごとぶつ切りにして缶に入れて加熱しているため、骨に含まれるカルシウムも逃さず摂取できます。刺身や焼き魚ではかなわない、サバ缶ならではのメリットです。
サバ水煮缶100gあたりには、約11gの脂質が含まれています。脂質が多いとなると、肥満、そして身長の伸び率低下のリスクがある早熟が気になり、避けたくなるかもしれません。
しかし、サバなどの青魚に含まれる脂質は積極的に摂ってください。なぜなら、人間の体内では合成できない「必須脂肪酸」のオメガ3が多く含まれているからです。
■子どもの脳の健やかな成長も促す
オメガ3は、血液サラサラ効果があることで知られていますが、子どもの成長にも欠かせない栄養素です。
田邊雄『身長先生式 子どもの身長が伸びる食事のルール30』(Gakken)
特に注目したいのは、脳神経の発達を促す働きです。脳は心身のあらゆる機能を操る司令塔。身長を伸ばすのに欠かせない成長ホルモンも、脳の指令によって分泌されるのですから、脳の健やかな成長はとても大切です。
また、体内の炎症を抑える働きがあることから、運動によって傷ついた筋肉の修復にも有効。疲労回復効果もあることから、アスリートも積極的に取り入れている栄養素です。
オメガ3にはたくさんのメリットがありますが、酸化に弱いという弱点があります。サバ缶の場合、缶を開けた瞬間から酸化が始まるので、開封後は早めに食べきるようにしてください。
また、熱によっても酸化が進むので、加熱せずに食べるのがベスト。缶汁にもオメガ3が含まれていますが、身にも十分含まれていますから缶汁は無理をして摂る必要はありません。
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田邊 雄(たなべ・ゆう)
東京神田整形外科クリニック院長
身長を伸ばす専門医。愛称は「身長先生」。金沢医科大学医学部を卒業後、順天堂大学医学部附属順天堂医院整形外科へ入局。西新宿整形外科院長職を経て、2020年に東京神田整形外科クリニックを開業。活動が高く評価され、2023年にアメリカの経済紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』の「Next Era Leaders(次世代のリーダー)」に医師として最年少で選出された。身長アップの方法を伝授するYouTubeチャンネル「身長先生田邊雄」は、登録者数3万4千人を超える(2025年2月現在)。著書に『1万5000人のデータに基づいたすごい身長の伸ばし方』(KADOKAWA)などがある。
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(東京神田整形外科クリニック院長 田邊 雄)