グーグルの調査で「極めて重要」と実証「心理的安全性」の高いチームのリーダーが、メンバーに必ずしている質問とは

2025年4月3日(木)4時0分 JBpress

 組織やチームを率いるリーダーには「勇気」が必要だ。それを磨くには、まず自分自身の「臆病さや不安(ヴァルネラビリティ)」を受け入れることが必要だという。本稿では『dare to lead リーダーに必要な勇気を磨く』(ブレネー・ブラウン著/片桐恵理子訳/サンマーク出版)から内容の一部を抜粋・再編集。勇気と不安の関係や、不安への向き合い方、リーダーシップのあるべき姿について解説する。

 そもそも「臆病さや不安に向き合う」とはどういうことか。チーム全体が不安に陥った状況を想定し、その中で発揮される「勇気あるリーダーシップ」の在り方を探る。

誤解#6
「ヴァルネラビリティはさらけだすことである」

 私が、「リーダーは個人的な経験をさらけだし、いついかなるときも心を開いて感情を共有するよう」勧めていると誤解している人たちがいるかもしれない。

 その誤解はおそらく、私がヴァルネラビリティについて語ったヒューストンのTEDトークや、拙著『本当の勇気は「弱さ」を認めること』で語った内容が大枠でしか理解されておらず、またここ最近私がおこなっている研究の8割が、ヴァルネラビリティとリーダーシップにまつわるものだという事実にあるのではないかと思う。

 昨今では、2+2=57といった、ハチャメチャな読み解き方をする人がいるが、これもその悪例だ。ご存じのとおり人間とは、自分なりに理解したり、明確だと思ったり、興味を引かれたりした出来事をいくつも足していき、やがて完全に誤った結論を導きだすものである。

1. 私はリーダーシップのツールとして、なんでもかんでもさらけだしてシェアすることを勧めているわけではないし、ヴァルネラビリティのためにヴァルネラビリティを謳ったりもしていない。

2. ヴァルネラビリティなくして、勇敢なリーダーシップは存在しない。

 このふたつの主張は一見矛盾して見えるかもしれないが、いずれも事実である。

 では、「リーダーは、同僚や従業員と、何をどのくらい共有すればいいのか?」と訊かれたらどう答えればいいだろう。

 私の知っている勇敢なリーダーのなかには、ヴァルネラビリティと向きあう高いスキルを備えていながら、それをほとんど表に出さない人もいる。また、必要以上にさまざまなことを周囲と共有する一方で、ヴァルネラビリティと向きあうスキルをほとんど、あるいはまったく示さないリーダーと働いたこともある。

 だが勇気あるリーダーなら、困難で不安定な時期に、自分のチームに向かってこう言うだろう。

『いま、いろいろなことが急速に変化していてみんなが不安を覚えていることは知っている。私も同じだ。そうした不安はなかなかぬぐうのがむずかしいし、この状況を家庭にもち込まないことも、心配しないこともむずかしい。

 一方で、だれかを責めたい気持ちは容易に湧きあがってくるだろう。いまの状況について何かわかれば、できるだけ速やかにみんなと共有するつもりだ。

 これから45分間、この状況にどう対処するべきかをみんなで話しあっていきたいと思う。とくに、自分のサポートが周りにどう映っているか? 自分はどんな質問に答えるべきか? みんなと一緒に検討すべき事柄はあるか? ほかに質問はないか? といったことを考えていきたい。

 どうか取り乱さず、おたがいの力を信じて団結してほしい。そうすれば、現状に真正面から向きあえるだろう。われわれはどんな状況にあっても、自分たちを誇りに思えるような仕事を成し遂げなければならない。

 まずは、自分たちに必要/不要だと思うことを各自がひとつずつ書きだし、問題を共有し、質問しあえる環境をつくっていこう。』

 これはヴァルネラビリティに向きあった好例だ。リーダーは曖昧な感情を明確にし、チームが安心して意見を言いあえるよう促すことで、「安全な容器」を生みだしている

 これはもっとも実践しやすい方法のひとつで、信頼を構築し、フィードバックや会話の質を改善するという点では、非常に効率がいい。とはいえ、チームやプロジェクトやグループのリーダーでこれを実践している人はめったに見かけない。

 グーグル社がおこなった、「生産性の高いチーム」に関する5年にわたる調査〈プロジェクト・アリストテレス〉によると、心理的安全性(チームメンバーがリスクを冒しても大丈夫だと感じたり、安心して弱さをさらけだしたりできること)は、「成功するチームにおける5大要素のなかでもずば抜けて重要」であるという。

 ハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・C・エドモンドソン教授は「心理的安全性」という言葉の生みの親である。彼女は自著『チームが機能するとはどういうことか』(英治出版、2014年)のなかでこうつづっている。

要するに、「心理的安全性」があれば、相手の顔色を窺うことなく、厳しいフィードバックをおこない、むずかしい会話をすることができる。心理的に安全だと思える環境なら、人は間違いを犯してもそのせいで罰せられたり評価を下げられたりすることはないと考えるし、助けや情報を求めても、そのせいで相手を怒らせたり、相手から侮辱されたりすることはないと考える。

 こう思えるのは、仲間どうしが信頼や敬意を抱き、このグループなら恥をかかされたり、拒絶されたり、意見を言って罰せられたりすることはない、と自信をもっているからだ。つまり心理的安全性とは、こちらが質問したり、フィードバックを求めたり、間違いを認めたり、奇抜なアイディアを提案したりしたときに、相手の反応を信じられることである。

 大半の人は、人間関係でいいイメージを保つには、対人関係のリスクに「対処」する必要があると感じているが、とくに職場の、自分を評価する人の前でそう思う人が多い。この必要性は、戦略でもあり社会的感情でもある。上司らの印象によって昇進や昇給が決まる場合もあれば、単純に否定されるより認められたいと思う気持ちもあるからだ。

 心理的安全性は、必ずしも和気あいあいとした居心地のいい状況を意味するわけではないし、プレッシャーや問題がない状況を示唆しているわけでもない。

「安全な容器」をつくる作業の過程では、みんなで書きだしたアイディアを見直し、整理してまとめあげ、基本ルールを作成していく。

「批判」「一方的な助言」「人の話を邪魔する」「チーム以外に情報を漏らす」などの行為は、しばしばチームやグループの心理的安全性を妨げる。

 チームやグループに必要なふるまいは、「つねに耳を傾け、興味を保ち、正直でいること、そして自信をもちつづけること」である。

 話しあいが必要になったら、「20分」使って心理的安全性を構築し、勇敢に仲間を導いてほしい。まずは安全性を構築する目的を明確にし、それからチームの力を借りて効率的にそれをつくりあげていくといいだろう。

 私がこのやり方をいいと思うのは、リーダーが素直に悩み、不安な状況を明確にしつつ冷静さを保ち、仲間に質問や、噂の真偽をたしかめる機会を与えられる点だ。なかでも重要なのは、「自分のサポートが周りにどう映っているか?」と問うことである。

 これはチームに透明性や成功の機会を与えるだけでなく、役に立ったふるまいがどんなもので、そうでないふるまいがどんなものかを具体的に確認することによって、自分たちに「必要な行動を問う」という責任をもたせることにもつながっていく。

<連載ラインアップ>
■第1回グーグルの調査で「極めて重要」と実証「心理的安全性」の高いチームのリーダーが、メンバーに必ずしている質問とは(本稿)
■第2回 成功を素直に喜べない上司が陥りがちな過ちとは? 優れたリーダーがメンバーを成長させるために伝えるべきこと
■第3回「答えにくい質問」にどう向き合うべきか?コストコCEOがリーダーたちから拍手喝采を受けたただ一つの理由とは?(4月17日)
■第4回共感力がなく、他人の批判がやめられない…リーダーが身に付けるべき「学び」と「感情のリテラシー」とは?(4月24日)
■第5回 S&P500の年間平均リターンを3倍上回っている会社に共通する、従業員エンゲージメントを高める特徴とは?(5月1日)

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筆者:ブレネー・ブラウン,片桐 恵理子

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