「会場案内」のメールでグーグルマップを送るのは三流…一流の秘書が実践する「ひと手間」の気づかい
2025年5月2日(金)18時15分 プレジデント社
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/serg3d
※本稿は、渡邉華織『好かれる人のさり気ない気配り100式』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■定型文そのままはNG
ある企業で秘書の方々とお話をしているときに、「お礼状や招待状、イベントの案内文などはどうしていますか?」と聞いたことがあります。
するとその会社では、秘書が共有しているクラウドの中に挨拶文やお礼状などの定型文がすべて保管されているので、「それを適宜変更して活用しています」ということでした。
ただし、詳しく話を聞いてみると、変更を加えるのは相手の名前と日付だけ。失礼があってはならないから、ほかは一切手を加えず、プリンターで印刷したものを送っているとのことでした。
「そのほうが時間がかからなくて合理的ですから」と言われたのですが、心を伝えようとするとき、経済的な合理性や能率は追求しすぎないほうがいいです。
サンプルの文章を参考にするのが悪いと言っているのではありません。「自分なりのアレンジを加えない」のが問題なのです。
写真=iStock.com/serg3d
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■コピペのお礼文は逆効果
多くの人は、何度か挨拶状を送ったり、もらったりしています。ということは、いろいろな定型文を読んだことがあるわけです。したがって、コピペした挨拶文を受け取ると、「ああ、この文章ってコピペしたものだな」とすぐわかってしまいます。
そんなお礼状を送ったら、逆にマイナスイメージになりかねません。
それよりはSNSやLINE、あるいはメッセンジャーで自分らしい言葉でお礼を伝えたほうが、よっぽどいいでしょう。少なくとも、LINEのメッセージをコピペする人はいないでしょうから。
手紙として送るのであれば、絶対にアレンジを加えてほしい。本当は3行と言いたいところですが、百歩譲って、いちばん印象に残ったことを1行だけでもいいです。
「○○様のこんな言葉がすごく勉強になりました」
「こんなおもてなしが、とても心に響きました」
「○○と仰っていたことが大変勉強になりました。今後ともご指導をお願いいたします」など。
それから自分の名前を直筆で書く。最低限、これだけ守れば気持ちは伝わるはずです。
■場所の案内はURLだけでは不親切
私もそうですが、皆さんは友達を初めてのお店に誘うときは、LINEやメールにお店のホームページのURLを貼って店名や場所を伝えるのではないでしょうか。
仕事の会食の案内も同様で、メールにお店のホームページ、もしくはグルメサイトのURLを貼るか、もしくはお店の住所をコピペすることがほとんどだと思います。
でもURLだけが送られてきた場合、受け取った方は、「URLをクリックしてお店のホームページを開き」→「住所をコピペして」→「グーグルマップに貼りつけ、検索して地図上の位置を確かめる」というような手間がかかります。なお、もう少し親切なホームページの場合は、グーグルマップなどの地図アプリのリンクが貼ってあります。
いずれにせよ、最終的には現地に着いてから、スマホの地図アプリを頼りにお店を探す人が大半ではないでしょうか。
しかし、実は地図アプリも万能ではないのです。なぜか現地でスマホのGPSがうまく作動しないこともありますし、入り組んだ路地裏にあるお店などは、地図アプリだけではたどり着けないことも。
写真=iStock.com/ra2studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ra2studio
■「オリジナルの地図」という気づかい
そこで私は、お店のホームページにわかりやすい地図が載っていれば、それをプリントアウトして招待状に同封するか、スクリーンショットを撮って送ります。
でもお店のオリジナルの地図はデザインを重視するため、地名がローマ字表記だったり、黒字に白い線で道が書いてあったりして、見にくいことも。
そこで提案なのですが、わかりにくいお店で待ち合わせるときは、自分でオリジナルの地図をつくってはどうでしょうか。
オリジナルといっても、グーグルマップの画像に矢印や丸をつけたり、「地下鉄の何番出口を出て左です」というようなコメントを加えたりするだけ。これを郵送のときはプリントアウトして同封しますし、メールのときは画像を添付します。
普通ならURLを貼って済ませるところ、わかりやすい地図を添付するのは一歩踏み込んだ気づかいだと思います。
■相手がよく使う連絡手段を知っておく
ある人と今後、連絡をとり合う可能性があるとわかったら、相手のいつも使っている連絡手段や、連絡を控えたほうがいい曜日、時間帯の有無などをヒアリングしておきましょう。それによって、自分がメッセージを送っていいタイミングがわかるからです。
昔は連絡手段といえば電話、ファクス、郵便くらいしかありませんでしたが、今はいろいろなツールがあります。最近ではビジネスでも、LINEやメッセンジャー、スラックなどのツールもよく使われています。
相手がよく使うツールで連絡すると、先方も返事をしやすくなります。
「メールをいつも使っています」と言われたら、それが会社でしか読めないのか、出先や自宅でも見られるのかも尋ねておくといいでしょう。スマホで使うのか、パソコンで使うのかによっても、すぐ返事ができるかどうかは変わってきます。
ほかには「スケジュールの管理にどんなツールを使っているか」も聞いておきます。もし先方が「グーグルカレンダー」を使っていれば、相手とグーグルカレンダーを共有して、こちらから直接予定を書き込んでおくこともできるからです。
さらには、「資料を送るときはデータで送ったほうがいいのか、紙にプリントアウトしたものを送ったほうがいいのか」なども確認しておくといいでしょう。
会社によっては意外とデジタル化が進んでいないこともあるからです。
写真=iStock.com/kyoshino
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kyoshino
■自分で判断せず、相手に確認を
例えば、私が以前働いていたIT企業は、めちゃくちゃアナログな会社でした。そうかと思えば、「うちはペーパーレスで、コスト削減と地球環境のためにも紙は使わない」という企業もあります。そういうところに紙の資料を送ってしまうと、「えっ、今どき紙なの? 感覚が古いよね」と思われてマイナスの評価を受けるかもしれません。
よかれと思ったことでも、相手にとっては逆のこともあります。自分の思い込みではなく、まずこちらから確認するのが気づかいです。
■あらゆるリスクを考え、柔軟に変更する
とかく世の中は思い通りにならないものです。季節外れの台風がきて、飛行機が飛ばなかった。思わぬアクシデントで電車が止まってしまった——。
でも、「1の事象に対して10の対策を考える」くらいの気持ちでいれば、何かあってもそれほど慌てずに済みます。そして、変更に柔軟に対応することも気配りには重要なことです。
写真=iStock.com/Sakorn Sukkasemsakorn
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■臨機応変に対応する
特に注意すべきなのが長距離移動の場合。
最近は台風が何度も上陸したり、1週間くらい居座ることも珍しくありません。そうなると飛行機が飛ばない可能性も高くなるので、事前にほかの航空会社の路線があるかどうかもチェック。空路が全滅のときに備えて、陸路の行き方も調べておくことは言うまでもありません。そして当日は朝から航空会社の運航状況をネットでチェックして、いざとなったらすぐに代替手段をとれるようにしておきます。
渡邉華織『好かれる人のさり気ない気配り100式』(かんき出版)
ゲリラ豪雨も増えています。外で待ち合わせをしていたけれど、雨が降りそうだったら、待ち合わせの場所を屋内に変更する。寒い季節だから鍋料理を食べようと思っていたけど、今日は暖かくてそんな気分ではないなら別のものにする。このように本当は入念に準備してあったとしても、臨機応変に対応できるようでありたいと思います。
また、先方が変更を提案してきたら、自分もそれにすんなり同意できるようにありたいもの。
例えば友達と遊びに行く予定だったけれど、「最近体調がよくなくて、日にちを変えてもいい?」という連絡がきたら、「えーっ、楽しみにしてたのに……」と思うかもしれません。でもこんなとき、相手は「申し訳ない」と思っています。そこで「私もなんとなく体調がかんばしくなくて、ほかの日のほうがむしろ都合がいいかも」と答えてみる。これも思いやりの一つかもしれません。
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渡邉 華織(わたなべ・かおり)
セクレタリーズ アドバイザー、お福分けコンシェルジュ
秘書歴30年以上。上場企業からスタートアップまで多岐にわたる企業の経営者のサポートを継続しながら、秘書コミュニティ「セクレタリーズ」を運営。テレビ朝日『七人の秘書』、スピンオフドラマ『ザ・接待〜秘書のおもてなし〜』の秘書監修なども行う。
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(セクレタリーズ アドバイザー、お福分けコンシェルジュ 渡邉 華織)