「口癖」を聞けば一発でわかる…「ヨボヨボ老人になる人」と「死ぬまでピンピンしている人」の決定的な差【2025年3月BEST5】
2025年4月12日(土)18時15分 プレジデント社
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/shapecharge
2025年3月に、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト5をお送りします。健康部門の第4位は——。
▼第1位 70歳のセックスがこんなに楽しいなんて…「膀胱、子宮、直腸が腟から飛び出る」更年期障害の女性がやったこと
▼第2位 認知症リスクがどんどん下がる…82歳の脳科学者も実践している「高齢者はやらなきゃ損」な日課
▼第3位 1日3食も、早寝早起きも、朝の洗濯もやらなくていい…医師・和田秀樹「60代から本当に必要な習慣」
▼第4位 「口癖」を聞けば一発でわかる…「ヨボヨボ老人になる人」と「死ぬまでピンピンしている人」の決定的な差
▼第5位 この器官が衰えるとヨボヨボ化が一気に進む…視力でも味覚でもない「認知症の発症を遅らせる」ための必須条件
年齢を重ねてもずっと元気な人はどこが違うのか。脳科学者の西剛志さんは「何気なく発している言葉が、脳に大きな影響を与えている。言葉の使い方が悪い人は、老人脳になるリスクが高くなる」という——。
※本稿は、西剛志『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』(アスコム)の一部を再編集したものです。
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■脳の老化スピードが速い人がよく使う言葉
「あー、疲れた」
「もう、嫌になる!」
「そんなことできるわけない」
こんな言葉を、日頃何気なく使っていないでしょうか?
実は、こうした言葉は脳に影響を及ぼしています。「脳のプライミング効果」というものです。
ニューヨーク大学の実験でこのようなものがあります。学生のグループを2つに分けて、言葉の羅列で文章をつくってもらうという実験です。
ひとつ目のグループには「グレー」「孤独」「忘れやすい」「退職」などの年配者のような言葉を使ってもらう。
もうひとつのグループにはニュートラルな言葉で文章をつくってもらう。「のどがかわいた」「キレイな」「プライベート」などです。
そしてグループごとに移動をしてもらったところ、なんと年配者のような言葉を使ったグループメンバーの歩くスピードが遅くなってしまったのです。これには私もビックリしました。
この実験からわかることは、使った言葉がその後の行動に影響を与えるということです。どういう言葉を使うかで、無意識のうちに行動が変わります。どういう言葉を使うかは、大切です。
■「老人脳」になる言葉
次にあげるリストは、脳にマイナスになる「使わないほうがいい言葉」です。これらの言葉は、使った瞬間に脳が悪い影響を受けてしまいます。
たとえば、「疲れた」と言った瞬間に、疲れたイメージが脳に出てきます。その結果、疲れたようなパフォーマンスをしてしまい、本当に疲れた状態になってしまうのです。実際にはそこまで疲れていなくても、脳が勝手に疲れた状態をつくり出してしまうことになります。
「わからない」「難しい」などの言葉も、脳にとっては危険な言葉のひとつです。思考をフリーズさせないためにも、使わないほうがいいと思います。
出典=『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』(アスコム)
ただ、そうはいってもついつい言ってしまうこともありますよね。それに、使わないように無理やり我慢すると、逆に感情が苦しくなってしまう人もいます。
私も実験をしてみたのですが、たとえば、疲れているのに「疲れている」と言えないと、何かモヤモヤした感じになってしまう人が多数いました。
そこで考案したのが、「『でも』の法則」です。マイナスの言葉を言ったあとに、必ず「でも」を付け加えるという方法です。
■負の言葉を打ち消す「でも」の効果
たとえば、「疲れた」と言ったら、こんな感じです。「疲れた。でも〜」。どうでしょうか。「でも」以降はどんな言葉を付け加えてもらっても大丈夫です。実際にいろいろな人にやってもらったところ、こんな言葉をみなさん付け加えていました。
「疲れた。でも、がんばった」
「疲れた。でも、いい疲れだ」
「疲れた。でも、寝れば回復するだろう」
「疲れた。でも、その分成果が出た」
こう答えるとどうでしょうか。これは、実は日本語の特徴と脳科学をミックスした方法です。
脳は、文章の一番最後にきた情報を印象に残しやすいという性質があります。
なので、「疲れた」が最後であれば「疲れた」という情報を残しますし、「でも」のあとに「がんばった」と言うと「がんばった」という情報を残します。
プラスの言葉のあとに「でも」を使えばマイナスの言葉が来ますが、マイナスの言葉に「でも」を使えばプラスの言葉が来るわけです。
実際に私の実験でも、「『でも』の法則」をやってもらうと「気持ちがラクになった」「疲れを感じにくくなった」という人が多数いました。実際にこの2文字で人生が変わってしまった人もいたので、私自身もその効果に驚いたほどです。
研修で出会った50代の女性がいたのですが、その人は、マイナスの言葉をひとりごとでも、相手に対してでもよく使っていました。ついついそういう言葉を使ってしまうクセがついていて、そんな自分に嫌気がさしていると話していました。
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■「老人脳」だった50代女性
そこで、その人に「きょうから『でも』という言葉を1000回使ってみてください」と伝えました。そして、1カ月後の研修で会ってみると、まるで別人のように状態が変わっていたのです。
話を聞いてみると、「『でも』を使ってみてと言われて、半信半疑で使ってみました。でも、でも、最初は何だかバカらしく感じました。ただ、言っているうちに、『でも、元気に生きてるな』『でも、きょうは天気がいいな』『でも、ランチが美味しかったな』『でも、きょうはきれいな花を見たな』など意外と自分は小さな幸せをたくさん体験しているんだな、環境に恵まれているんだな、いいこともあるんだな、ということを感じたんです。いままでだったら、朝起きたときも、なんで決まった時間に起きれなかったんだろうと自分を責めていました。
ただ、いまでは、『でも』という言葉が自然と出てきて、『でも、よく眠れたな』『でも、面白い夢を見たな』『でも、朝食用に美味しいパンを買ってきたな』という言葉が出てくるようになったんです。そしたら急に、私はいままでできなかったことばかりに目を向けていて、たくさんのできていること、有り難いこと、美しいものに目を向けていなかったことに気付きました。世界の見え方が少しずつ変わってきたんです。そんな毎日を過ごしていたら、周りからもなぜかよく声をかけられたり、明るくなったねと言われるようになりました。こんなに短期間で周りの言葉が変わってきたことに、私自身が一番驚いています」
私もその話を聞いて、言葉の力は本当にすごいと改めて感動しました。うまくいく人は、脳にいい言葉の使い方をしている人が多いのです。
写真=iStock.com/Orthosie
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■老人性うつ、認知症のリスクも高まる
言葉の使い方が悪い人は、老人脳になるリスクが高くなります。
人は楽観的性格と悲観的性格の2つに大きく分けられるのですが、楽観的な人はポジティブな言葉を使い、悲観的な人は自分にも人にもネガティブな言葉を使う傾向があります。ネガティブな言葉を使うと脳はストレスを感じるため、老人性うつの原因にもなり、認知症のリスクも高まってしまいます。
一方で、ポジティブな言葉を使うような楽観性が高い人は、認知障害のリスクが低下することが2017年の研究でわかっています(※)。
※Gawronski, KAB.“Dispositional optimism and incidence of cognitive impairment in older adults”Psychosomatic Medicine, 2017, Vol.78(7),p.819-828
言葉の持つ力を実感した事例を、ここでもう少し紹介します。これはスポーツ選手の話です。
以前、Jリーグに所属するサッカー選手と話をしていたところ、彼から悩みがあると打ち明けられたことがありました。彼のポジションはフォワード、いわゆる得点することが大切なポジションだったのですが、試合の前半はいいのだけれど、後半になるとシュートの決定率が異常に下がるという悩みでした。
話を聞いてみると、後半になると脳が「疲れているというイメージ」を持っているようでした。「もうスタミナがもたないはずだ」「これ以上は走れないはずだ」とか、脳がそうイメージしていて、結果その通りになっていたのです。
そこで、「自分にはもっとスタミナがある」「最高のパフォーマンスを発揮できる」という言葉を心の内でつぶやいてもらい、イメージを変える努力をしてもらいました。そうしたら、驚くほど後半のシュートの決定率が上がったのです。これには私自身もびっくりしました。
■「ありがとう」という言葉の持つすごいパワー
同じように、マラソン選手でも最後にどうしてもタイムが落ちてしまう選手がいました。そこで、彼にある言葉を言ってもらったところ、後半のタイムが伸びたのです。
その言葉は「ありがとう」です。
意外に思うかもしれませんが、この言葉でタイムが大きく伸びました。「ありがとう」は他者に向ける言葉です。自分が走れるのはこれまでたくさんの人のサポートがあったから。そうした支えてくれた人に対して「ありがとう」と心の中でつぶやくだけで、どんどん力が出てきたそうです。
それまでは、後半になると「もつかな」「大丈夫かな」といった不安の声ばかりつぶやいていたそうです。それを「ありがとう」に変えただけでタイムが伸びた。たったひとつの言葉で、ここまでパフォーマンスが変わるのですね。スポーツの世界ではスコアやタイムが出るので、その成果が明確です。
言葉は他者とのコミュニケーションだけでなく、自分とのコミュニケーションにも日々使っています。実は、頭の中で自分自身と話している言葉は、他人と話す何倍もの時間になります。
ですから、自分との脳内トークを変えるだけで、さまざまなことを変えることができるのです。
写真=iStock.com/mykeyruna
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■会話に「擬音語」を入れてほしい
脳にいい言葉としてぜひ使ってほしいのが「擬音語」(擬声語とも言います)です。
擬音語とは、動物の声や物の音を言葉で表現したもので、たとえば「にゃ〜にゃ〜」「わんわん」「がらがら」「ざあざあ」などの表現を言います。
この擬音語が、実は脳の活性化と結びついています。
何気なく使っている擬音語ですが、脳にかなりの影響を与えていることがわかっています。たとえば、エクササイズをするときに、擬音語を入れてやると体の動きが変わります。実際に体験してもらいたいので、ぜひやってみてください。
やり方はこうです。
(1)真っすぐ立って、両手を左右に水平になるように広げてください。
(2)そのままの状態で腰をいけるところまで回してください(左右どちらでも大丈夫です)。
(3)自分の限界というところまで回したら、その位置を覚えておいてください。
(4)元に戻してください。
(5)今度はある言葉を言いながら、同じ態勢で同じ方向に腰を回してください。
ある言葉とは、「ス〜ッ」という言葉です。ス〜ッと言いながら腰を限界まで回していきます。
どうでしょうか? 最初に腰を回したときよりも、「ス〜ッ」という擬音語を言いながら回したほうが、より腰が回ったのではないでしょうか。これが擬音語のパワーです。
■「声」がスイッチになる
擬音語を使うと、一般の動詞や副詞などの言葉に比べて、運動機能を司る運動野や前運動野、そして小脳などを含む幅広い脳の領域が活性化します。
スポーツ選手の中にも、擬音語を取り入れている人がたくさんいます。たとえば、砲丸投げの選手は投げるときにすごい叫び声を出します。テニス選手や卓球の選手も声を出す選手がいますよね。
擬音語を発することで、脳が指令を出し、制御しているリミッターを外し、筋肉の限界まで力を出せるようになります。そのスイッチが「声」です。ちなみにこういった効果を「シャウト効果」と呼びます。
これは何もスポーツに限った話ではありません。さまざまなシーンで擬音語を使うことで、脳を活性化できるのです。跳び箱を跳べない子どもに擬音語を使った方法を教えて、すぐに跳べるようになったということがありました。
跳び箱が跳べない子どもに、跳ぶときに「タッタッタッ、トン、パッ、トン」という言葉を心の中でつぶやきながら跳んでみてと伝えたところ、すぐに跳べるようになったのです。
小脳が活性化し、身体能力が上がったのです。
■「ガクガク」「ギシギシ」は逆効果
実はこの擬音語、プラスの擬音語ではなく、マイナスの擬音語を言う人がいます。たとえば高齢者であれば、「ガクガク」「ギシギシ」などです。
足が弱い人が「足がガクガクする」と言ってしまうと、その瞬間にガクガクする感覚が脳の中で大きくなってしまい、結果、症状をより大きく感じてしまいます。マイナスの擬音はこのように、体にもマイナスに作用する可能性があります。
西剛志『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』(アスコム)
こういうときはどうしたらいいのでしょうか。ひとつは「プラスの擬音語に変換する」ということです。ただ、「足がガクガクする」など、プラスの擬音語に変換するのが難しいケースもあります。そのときは濁点をとってみてください。
「ガクガク」だったら「カクカク」とか、「ギシギシ」だったら「キシキシ」。「ギラギラ」だったら「キラキラ」。濁点をとると印象がかなり変わります。それだけで脳の刺激を受ける場所が変わるので、痛みが軽くなったり、気持ちまで変化してきます。
歩くことがしんどい人は擬音語を言いながら歩くと、つらさが軽減できる場合もあります。「サッサッサッ」「トントントン」「ポンポンポン」……スタスタ歩けるイメージになる言葉であればなんでもOKです。心でこれらの擬音語を言いながら歩くだけで変化するので、ぜひ試してみてください。
(初公開日:2025年3月12日)
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西 剛志(にし・たけゆき)
脳科学者
1975年生まれ。東京工業大学大学院生命情報専攻卒。博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。テレビやメディアなどにも多数出演。著書に『脳科学者が考案 見るだけで自然と脳が鍛えられる35のすごい写真』『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』『世界一やさしい自分を変える方法』(以上、アスコム)などがある。著書は海外を含めて累計42万部を突破。
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(脳科学者 西 剛志)