地中海中央ルート横断中の子ども 過去10年間に約3,500人が死亡 ユニセフの最新推計 【プレスリリース】
2025年4月15日(火)17時46分 PR TIMES
【2025年4月15日 ジュネーブ/ニューヨーク発】
1,000人の犠牲者を出したイタリア沖の難破事故から4月18日で10年。ユニセフ(国連児童基金)の最新推計によると、過去10年間に地中海中央ルートを横断してイタリアに渡ろうとした子どものうち約3,500人が、亡くなるか行方不明になっています。これは、10年間毎日1人の子どもが命を落としていることに相当します。
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およそ10人に7人の子どもは、親や法的保護者の同伴なしにこのルートを渡っています。つまり、このルートで亡くなったり行方不明になったりした子どものほとんどが、一人で旅をしていたことになります。彼らの旅は特に過酷なものです。調査データによると、半数以上の子どもや若者が身体的暴力を経験したと報告しており、3分の1は望んでいない場所に留め置かれたと報告しています。
地中海中央ルートを渡ろうとする子どもの多くは、戦争や紛争、暴力、貧困から逃れようとしており、それらの要因は今もなお、故郷を離れ安全とチャンスを求めて他の場所へ逃れざるを得ない状況に、子どもたちを追い込んでいます。
ユニセフ・欧州・中央アジア地域事務所代表で、欧州の難民・移民対策の特別調整官を務めるレジーナ・デ・ドミニチスは次のように述べています。「10年前、イタリア沖で船が難破して1,000人以上の命を奪い、地域全体に衝撃が走りました。各国政府は、国内法および国際法上の義務に従い、子どもの権利と彼らの最善の利益を守らなければなりません。子どもの権利条約に定められた権利は、国境や海岸で終わるものではありません。子どもたちが移動する際、その権利は子どもたちと共に移動するのです」
過去10年間で、少なくとも2万803人が地中海中央部で死亡または行方不明になっています。北アフリカからの危険な移動ルート上の難破事故の多くには生存者がおらず、記録も残っていないため、正確な人数を把握することは事実上不可能であり、実際にははるかに多いと考えられます。
死亡または行方不明となった人の大半は身元が特定されないため、その個人に関する情報を入手したり確認したりすることはさらに困難です。
欧州連合(EU)の「移民と庇護に関するEU協定」の採択により、移民管理体制がより組織的になることが期待される一方、協定は子どもの最善の利益を守るための法的義務に完全に準拠して実施されなければならないと、ユニセフはあらためて主張しています。
ユニセフは、海上で犠牲者を出さないため、子どもに配慮した捜索・救助活動の強化と実施を呼び掛けています。すべての子どもに到着後直ちに法的代理人を付け、手厚い保護措置を講じなければなりません。審査・越境・庇護・送還のいずれの手続き中にも、移動の制限によって子どもが入国管理施設に収容されることがあってはなりません。
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/5176/2506/5176-2506-fe180638e9c3e21b7581c132eda35d87-1536x864.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]ランペドゥーザ島の一時受け入れセンターで、同伴者がいない移民の青年と話すユニセフのスタッフ(イタリア、2023年9月26日撮影) (C) UNICEF/UNI443163/Antonioli
ユニセフは、子どもが移動する際に彼らの安全が確保されるよう、各国の子どもの保護、社会的保護、移民・庇護に関する制度の強化を後押ししています。ユニセフはまた、子どもやその親の法的地位にかかわらず、すべての子どもに支援と包括的なサービスを提供するために、各国と協力しています。
ユニセフはイタリアで、暴力や搾取、虐待の危険にさらされている子どもや女性たちに、心理社会的支援、保健医療および専門的サービスを、政府やその他のパートナーと協力して提供しています。
■ 注記
このデータ分析は、国連機関によるイタリア到着者に関するオペレーション・データ・ポータルの情報(2025年4月付)および地中海中央ルートに関する行方不明移民プロジェクト(Missing Migration Project)(2025年4月5日付、最終アクセスは2025年4月8日)に基づいています。分析対象期間は2015年4月8日から2025年4月8日まで。
過去10年間にこのルートで死亡または行方不明になった子どもはほぼ3,500人(3,474人)と推定されています。この推定値は、この期間に同ルートで行方不明と報告された人の総数に、到着者に占める子どもの割合(16.7%)を当てはめて算出したものです。
ユニセフは、「移動する子どものための国際データアライアンス(IDAC)」の議長を務めており、移動する子どもにより良い結果をもたらすために、データの入手可能性と質を向上させる世界的な取り組みを主導しています。詳細はこちらをご覧ください。https://www.dataforchildrenonthemove.org/
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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(https://www.unicef.org )
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます
■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、アドボカシーを担っています。(https://www.unicef.or.jp )