トランスエヌ株式会社ーー「Fine-tuningの民主化」で企業独自のLLM活用を加速
2025年4月16日(水)11時17分 PR TIMES
トランスエヌ株式会社(以下、Trans-N)は、オープンソースの大規模言語モデル(LLM)を企業の独自データで学習し、専門特化型AIアシスタントを自由に構築できるようにする「Fine-tuningの民主化」を推進しています。
Trans-Nはこの取り組みの一環として、企業リーダーの人格や価値観を模倣する「AI CEOモデル」、企業部署・プロジェクトのノウハウ継承を支援する「業務引継ぎモデル」の2種類のモデルを構築しました。
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/146925/8/146925-8-897993f79bf43b03cad368671b99eedf-1536x1024.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]企業の独自データで学習し、専門特化型AIアシスタント
詳細を見る :
https://trans-n.ai/
クローズドLLMにおける「カスタマイズの壁」
ChatGPTやCopilotなどのクラウド型生成AIサービスは、幅広いシーンで導入されています。しかし、クローズドモデルの性質上、企業の機密情報や特有の知見を深く組み込みづらいという制約があります。ベンダー対応や仕様に左右されるため、柔軟なカスタマイズが難しいのです。最近、RAG(Retrieval-Augmented Generation)が注目されていますが、一度に検索・参照できる社内情報に限りがある上、コンテキストウィンドウの制限に左右されやすく、自社固有のナレッジやコンテキストを深く理解した回答を生成できないケースが多くあります。Trans-Nはこうした課題を解消し、誰もが自社独自の専門家型AIを構築できるようにする「Fine-tuningの民主化」を目指し、オープンソースLLMを企業独自データで高度にFine-tuningする技術を磨いています。
企業リーダーの人格や価値観を模倣する 「AI CEOモデル」
Trans-Nが開発・検証を進めているのが、企業リーダーなど特定人物の口調やコミュニケーションスタイル、経営哲学などを学習し、あたかも本人が応答するかのような出力を目指す「AI CEOモデル」の構築です。
「AI CEOモデル」は、具体的に以下のようなシーンでご活用いただけます。
経営判断・意思決定のサポート
CEOの経営哲学や意思決定基準を学習したモデルを用いることで、現場のマネージャーや経営層が具体的な判断の参考情報を得られ、実務上の意思決定プロセスが円滑になります。
経営理念と組織文化の浸透支援
トップの価値観やビジョンを忠実に再現することで、従業員が企業の経営方針や文化を理解しやすくなり、組織全体で一貫した方向性が自然に共有される効果が期待されます。
リーダーシップ教育およびシミュレーション研修
実際のCEOの口調や意思表明をモデル化することで、リーダー育成の教材やシミュレーションツールとして利用でき、後進のリーダーが具体的な事例を通じて学ぶ機会を提供します。
この「AI CEOモデル」の構築に向けて、実際に某大手企業とのPoCでは、ある組織の部門長に対して10時間近いインタビュー音源および、その人物の経営哲学・価値観をまとめたドキュメントをモデルに学習させました。Fine-tuning後、モデルにMBTI(Myers-Briggs type indicator)性格診断を実施させ、本人が実施した結果とどのくらい近い結果が得られるのか検証しました。その結果、本人と同じ性格タイプ(指揮官)を導き出すことに成功しました。(図1)。また、MBTI性格診断以外の質問でも検証を実施した結果、インタビュー・ドキュメント中でしか言及されていないような、本人の根底にある経営哲学・価値観を把握できているケースを確認することができました(図3)。
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/146925/8/146925-8-fa4ea816d51071abb0f3619836bc67b6-1882x893.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]図1:MBTI性格診断の結果
詳細を見る :
https://trans-n.ai/
[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/146925/8/146925-8-5bcb56c59460e5fd754ebeba3597b17b-1280x733.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]図2:AI CEOモデルの実際の回答例(MBTI)
[画像4: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/146925/8/146925-8-f809bd54d94a7211cbfcf8cbd09cc867-1203x778.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]図3:AI CEOモデルの実際の回答例(思考・価値観)
今後、より幅広いデータを組み合わせることで、企業内のリーダーや専門家のノウハウ・判断基準を活かすAIの実現を目指しています。こうした取り組みにより、トップの思想や組織のビジョンを深く理解し、業務や意思決定を支援する高度なアシスタントを構築できる可能性が大きく広がっていくと考えています。
企業部署・プロジェクトのノウハウ継承を支援する「業務引継ぎモデル」
近年、多くの企業において、従業員の異動・転職などによる業務ノウハウの引継ぎが重大な課題となっています。特にベテランや専門人材が保持する暗黙知や属人的なノウハウは明文化が難しく、引継ぎが不十分になるケースが多々見受けられます。この課題を放置すると、企業の競争力低下や事業継続性へのリスクが高まる恐れがあります。
Trans-Nはこうした課題意識を背景に、企業部署・プロジェクトに蓄積された膨大な資料・会議記録・事業戦略などを包括的に学習させることで、重要な社内ノウハウを効率的かつ正確に引き継げる「業務引継ぎモデル」を構築しました。
「業務引継ぎモデル」は、具体的に以下のようなシーンでご活用いただけます。
- 組織内知識の体系的継承
ベテラン社員が蓄積した暗黙知や経験を、会議記録や各種資料から学習させたモデルにより、異動や退職の際に後任者へ体系的にナレッジを引き継ぐ仕組みを確立します。
- 新規プロジェクトの迅速な立ち上げ支援
過去のプロジェクトデータや成功・失敗事例を組み込んだモデルを利用することで、新たに始まるプロジェクトの準備段階で、必要なノウハウや注意点を素早く把握でき、計画の精度が向上します。
- 部門間連携と業務プロセスの標準化
異なる部署が保有する情報や経験を統合し、業務プロセスの整理・標準化を促進することで、組織全体の生産性向上や部門間のシナジー効果を引き出す支援を実現します。
Fine-tuning後のモデルの性能を検証したところ、どの分野の質問に対しても、企業部署・プロジェクトに関して一定水準以上の背景知識や文脈理解を示すことが確認されました(図4)。一方で、より細かな数値や具体的事実の正確な把握、また質問者が期待する回答の精度や粒度の調整など、更なる改善の余地も明らかになりました。
[画像5: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/146925/8/146925-8-d3a7d7f66380ca60d36ed4d59651d04a-838x331.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]図4:業務引継ぎモデルの実際の回答例
今後、RAG(Retrieval Augmented Generation)およびプロンプトエンジニアリングとの組み合わせ検討、データクレンジング方法の検討(マルチモーダルLLMの適用等)、CoT(思考の連鎖)を有するモデルでの検証等を行っていくことで、更なる性能向上を目指しています。
Fine-tuningツールを開発中——「民主化」の実現へ
Trans-N CTO 孫 又晗(Youhan Sun)氏からのメッセージ:
「Fine-tuningはオプショナルではなく、AI Native Companyになるための必修科目です。Fine-tuningを通じて、貴社データを活用し、AIにおける競争バリアを築くことができます。事業内容がユニークであるように、貴社のAIもユニークであるべきです。弊社は、Fine-tuning技術を少数の大手が支配している現状に憂いており、Fine-tuningを容易にするツールを鋭意開発中です。年度内にはオープンソースとして世界に提供し、AIの民主化に微力ながら尽くしたいと考えております。」