「1日60分のウォーキング」は必要ない…1年で12kg減量した医師が説く「運動嫌いがダイエットする唯一の方法」

2025年4月23日(水)9時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/west

ダイエットを頑張ろうと思っても、なかなか運動を継続できないのはなぜなのか。『お米を食べるダイエット』を提唱し、1年で12kgの減量に成功した医師・梅岡比俊さんは「初めから高い目標を掲げてしまうと挫折しやすくなってしまう。1日15分の運動でもいいから、目標をクリアしたときの『達成感』を味わえるように目標設定を低くするといい」という──。

※本稿は、梅岡比俊『医者が教える最高のやせ方 科学的に正しいお腹いっぱい食べられるダイエット法』(すばる舎)の一部を再編集したものです。


写真=iStock.com/west
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■運動すると暴飲暴食しなくなる


食事だけのダイエットよりも、食事と運動、両面でダイエットを同時に行うほうが効果的なのは、言うまでもありません。


アメリカやドイツの調査では、体重が増える原因のトップは「身体活動量が少ないこと=運動不足」で、次に「摂取カロリーの過剰」が続きますから、肥満の原因としては、むしろ食生活より運動不足のほうが影響が大きいのです。運動により消費エネルギーが増え、余分な体脂肪が減ることでダイエットにつながります。ここまではよく知られていますが、それだけではありません。


アメリカの栄養・生理学者ジョン・マイヤー博士のおもしろい研究をご紹介します。


小さなケージに入れて運動不足の状態にさせたラットと、1日に1時間以上の運動をさせたラットを、どちらも自由に餌を食べられる環境に置いて食欲を比較したところ、運動不足のラットのほうが9%多く餌を食べたという結果が出ました。体重も増えていたそうです。


一方、毎日運動していたラットたちは、好きなだけ餌を食べられる環境にあっても食べすぎることはなく、体重はまったく変わらなかったそうです。動物実験のレベルですが、この結果は「適度な運動をすると食欲が安定し、暴飲暴食しなくなるので太らない」可能性が高いことを示しています。


■運動後30〜40分以内に食事を摂るといい


「運動をするとお腹が空くので、食べすぎてしまうのでは?」と思っていた方もいるかもしれませんが、それは間違いです。運動中は自律神経の交感神経系が優位になり、食欲を抑制するホルモンが分泌されることがわかっています。またこのホルモンの分泌は運動中から始まり、運動後30〜40分すぎるくらいまで続きます。


活発に活動しているときにお腹が空いては活動に支障が出るので、ある程度状況が落ち着くまでは、空腹感を感じないようになっているわけです。太古の狩猟採集の時代に獲物を追いかけている状況や、凶暴な肉食獣から逃げているような場面を想像していただければ、納得感がある話ではないでしょうか。


この食欲抑制ホルモンの分泌によって、運動をすると、直後にはそもそもあまり食べたい欲求が生まれなくなります。そのため、食事量のコントロールの面でも、運動の習慣をつけることは有効なのです。


私は「お米を食べるダイエット」を提唱していますが、いくら身体によいお米であっても、当然ながら食べすぎては太ってしまいます。「つい食べすぎてしまう」という人は、食欲抑制ホルモンが分泌されていて、食べすぎの心配が少ない運動後30〜40分以内に食事を摂るようにすることも一案でしょう。


〈ここがポイント〉
運動をすると、その後しばらくは食欲が抑制される。つい食べすぎてしまう人は、この性質を利用するといい。

■適度な運動こそが「百薬の長」


適度な運動がもたらす健康効果は、ダイエットのほかにも多数あります。主なものを挙げただけでも、以下のようにたくさんあります。


・適正体重の維持
・筋肉や関節の維持と強化
・血行促進による冷え性や肩こりの改善
・高血圧、糖尿病など生活習慣病の予防と改善
・ロコモティブシンドローム(生活機能低下)の予防
・心肺機能の向上
・免疫力の向上
・脳機能の維持と向上
・自律神経機能の向上
・集中力の向上
・ストレス解消と精神的なリフレッシュ など


©富永三紗子[出所=『医者が教える最高のやせ方』(すばる舎)]

体重を減らすためだけでなく、より健康的な心身を実現するためにも、適度な運動の習慣をつけるようにしたいものです。これらの効果を得るために激しい運動は必要なく、わざわざジムに行って汗を流す必要もありません。早歩きや軽いジョギングで十分です。


■日常生活のなかでできることはたくさんある


ジョギングするのがハードルが高いと感じる人は、ウォーキングでもいいと思います。通勤時にいつもよりひと駅前で降りて会社まで歩く、車で行っていた買い物を徒歩で行くようにするなど、日常生活のなかで簡単にできることがたくさんあります。


ほかにも、夏なら冷房を切って掃除機をかけると、運動後のように汗をかきます。冬なら暖房を少し強くして掃除機をかけると、やはり汗をかきます。このように、日常生活のなかでも工夫しだいで簡単に運動ができます。常に「身体活動量を増やす」意識を持つようにしてください。


〈ここがポイント〉
適度な運動はダイエットに効くだけでなく、さまざまな健康上のメリットがある。軽い運動でいいので、こまめに身体を動かすことを習慣化しよう。

■運動を続けるために必要な思考


運動が続かない人の話をよく耳にします。たとえば、以下のようなケースです。


・ジムに入会して3回行ったけど、その後は行っていない。
・軽いジョギングを始めたけれど、疲れすぎて続かない。
・ウォーキングにも挑戦したけど、めんどうくさくて駄目だった。


日々の運動は、やりすぎず、無理なく続けられる範囲で行うことが大切です。運動を続けることが重要なので、最初から目標を高く設定しないことをおすすめします。初めから高い目標を掲げてしまうと、挫折しやすくなってしまいます。


また、自分が好きではない運動は、当然ですが長続きしません。自分に合った運動、自分が好きな運動を見つけることも重要だと思います。


以下、運動を続けるためのポイントをいくつか紹介しますので、参考にしてみてください。


■三日坊主を10回続けるつもりで!


三日坊主でもいいじゃないですか。もし三日坊主を10回続けたら、それは立派な継続になります。三日坊主に終わった自分を責めずに、そんな自分も愛すべき自分として受け入れて、「三日も続けられたんだから、上出来」ぐらいに考えましょう。できれば、あまり間を空けずに運動を再開できたらいいですね。


三日坊主を何回か続けるつもりで、運動にトライしてみてください。それが毎日の歯磨きのようにルーティンとなり、いつしか「運動しないと気持ちが悪い」という感覚になれればしめたものです。


■目標設定を高くせず、できるだけ低くする


「運動が続かない」と言う人を見ていると、目標設定が高すぎると思うことがよくあります。先ほども述べたように、運動を始めようと思い立ったら、目標を高く設定しすぎないことが大切です。


これは、私自身の失敗経験からの教訓でもあります。病気でダイエットする必要に迫られたとき、何年もランニングをしていなかったのに、一念発起していきなり10キロメートル走ることに挑戦しました。


しかし、3キロメートルくらい走ったところで足首を痛めてしまい、走れなくなってトボトボと歩いて帰る羽目になりました。結果を早く求めようとする私の悪い癖が出てしまったのです。この失敗経験から言えるのは、運動は段階を踏んで、少しずつ強度を上げていくべきだということです。


■1日「15分」でもいい


たとえば「毎日1時間ジョギングする」とか「毎日2時間ジムで筋トレする」とか、いきなりハードな高い目標を立てる人がいますが、それは絶対にやめましょう。高い目標をすんなりクリアできる人は、なかなかいないのではないでしょうか?


「毎日30分歩く」
「会話ができる程度のジョギングを短い距離で行う」
「キング・オブ・エクササイズと言われるスクワットだけ、毎日やる」


といった感じで、運動を始めるときにはできるだけ低い目標設定をすることが継続のコツです。厚生労働省は1日60分歩くことを推奨していますが、60分歩くことが難しい方は、1日15分や20分から始めてもかまいません。できるだけ低い目標設定にしておき、それをクリアしたときの「達成感」を何度も味わうほうが、運動の継続には効果的だと思います。


そして、少しでもできたら、自分をほめることも忘れないでください。


■パーソナルトレーナーに指導してもらう


運動初心者の方は、可能なら初めのうちだけでも、パーソナルトレーナーに指導してもらうことをおすすめします。


なぜなら、パーソナルトレーナーをつけると、トレーニングする日時を約束することになるからです。私自身もランニングや水泳に関して、パーソナルトレーナーに指導してもらってきました。


©富永三紗子[出所=『医者が教える最高のやせ方』(すばる舎)]

しかし、正直言って運動したくない日もあります。それでもパーソナルトレーナーとの約束があれば、トレーニングの時間が決まっているので、やりたくなくてもやるしかないのです。パーソナルトレーナーのよい点はほかにもあって、たとえば「3カ月で3キログラムやせる」という具体的な目標があれば、その達成のための効果的な運動プログラムをつくってくれたり、精神的な支えになってくれたりします。


運動が続かない人は、ぜひ自分と相性のいいパーソナルトレーナーを見つけ、その力を借りることも検討してください。


■アプリを有効活用する


昨今では優れた運動アプリがたくさんあります。無料で利用できるものも多数あり、その内容も多岐にわたっています。私も運動アプリを利用していますが、トレーニングの内容や食事内容を記録でき、運動の習慣化に役立っています。運動量や消費カロリーを可視化できるのも利点です。


5分という隙間時間でも手軽にトレーニングできたり、なかには運動メニューを組んでくれるアプリもあります。アプリでつながった仲間たちがどんなトレーニングをしているか、共有しながら運動することもできるので、楽しみが増えました。


3カ月後に10キロメートルのマラソンに参加する予定があるなら、一緒に走ってくれる人を募集したり、集まったメンバーと走行距離を見せ合い、お互いに刺激し合うようなことも可能です。


運動を続ける動機づけになると思います。私の患者さんや知り合いのなかにも、「アプリを使用するようになって、運動が習慣化した」という方がたくさんいます。みなさんも、ぜひ活用してみてください。


■自分の性格に合った運動、好きな運動を見つける


運動を習慣化するために、最終的に大事なのは自分に合った運動かどうか、好きな運動かどうかという点だと思います。


どのような運動が自分に合っているのかは、実際に試してみるしかないので、興味がある運動にはとりあえず挑戦してみましょう。どんな運動でも同じですが、運動したあとの「爽快感」や「達成感」はたまらなく気持ちがいいものです。


その気持ちよさを味わいたくて、運動を続けていると言う人もいます。運動したあとの爽快感や達成感は、ストレス解消にも大いに役立ちます。


■ダイエットの方法は無限にあると考える


ひとつやふたつのダイエットに失敗したからといって、落ち込んだり自分を責めたりしないでください。



梅岡比俊『医者が教える最高のやせ方』(すばる舎)

自分にはこのダイエット法は合わなかっただけ、と考えましょう。世のなかには数え切れないほどのダイエット情報が溢れています。無限にあるダイエット方法のなかから、自分にできる最適な方法を探せばいいだけです。


ただ、なかには単に一時的に体重を減らすことだけを目的にしているダイエット法や、本書(『医者が教える最高のやせ方』)で触れたように健康上のリスクがあるダイエット法もあります。体重は減るけれども、健康を損なうか、すぐリバウンドしてしまう……このような場合には一度立ち止まって、そのダイエット法を続けて問題ないか、考え直すようにしてください。ダイエットをして健康な身体を取り戻すはずが、逆に不健康になってしまっては本末転倒です。


■人と比べず、過去の自分と比べる


無数にあるダイエット法のなかで、本当の意味で自分に合った方法を選びとってほしいと思います。私が本書(『医者が教える最高のやせ方』)で提案している「お米を食べるダイエット」は、体重が減り、身体もより健康になるダイエット法です。ぜひ、挑戦してみてほしいと願っています。SNSでうまくいっている人のケースばかりが目に入り、自分と比べて一喜一憂してしまうこともあるでしょう。


しかし、他人との比較にはあまり意味がありません。比べるべきは、あくまで過去の自分といまの自分です。スクワットが先週よりも2回多くできるようになった、腕立てが3回多くできるようになったなど、自分の小さな進歩に目を向けることが重要です。


他人と比較するのをやめて、自分の小さな成長を思い切り喜びましょう。うまくいかなくても自分を責めず、なりたい自分を思い描きましょう。その先に、真のダイエットの成功が待っています。


〈ここがポイント〉
アプリや外部サービスを活用し、目標設定を低くする。途切れ途切れでもとにかく運動を続けることが重要なので、それ以外の部分はゆるく対応しよう。

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梅岡 比俊(うめおか・ひとし)
医師
医療法人社団梅華会 理事長。予防未病健康医師協会 代表理事。耳鼻咽喉科専門医。奈良県立医科大学医学部卒業。阪神地区に耳鼻科4院・小児科2院・心療内科1院、東京都内に消化器内科2院の計9院を展開。年間患者来院数は約17万人にのぼり、地域に密着した医療を提供している。2024年10月に新規開院した心療内科には、マインドフルネスセンターを併設。現代のニーズに合った医療を提供し、医療の幅を広げている。健康寿命の延伸を目指す全国の医師・歯科医師で構成された予防未病健康医師協会の代表理事も務め、この協会を通じ、連携による包括的な予防医学の概念を広める活動を全国で展開し、自院でもそのサービスを提供している。趣味は読書とトライアスロンで、世界の過酷なレースに参加するアスリートでもある。また、野菜ソムリエやファスティングマイスターの資格を所有し、真の意味での健康を追求し続けている。著書に『医者が教える最高のやせ方』(すばる舎)、編著書に『臨床経験豊富な100人の専門医が教える! 健康医学』(フローラル出版)があるほか、クリニック運営関連の著書も多数。
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(医師 梅岡 比俊)

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